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冒険
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「もう許可は取ってあるわ。」
「無理だって。」
「あなたにしか頼めないのよ。」
仕事終わりにグラシアスに捕まって頼み事をされている。
最近は攻略本の件を不問に付されて以来、例の新人レンが何故か僕に付き纏うようになって、精神的に疲れていた。
そんな折のグラシアスからのお願いである。
「剣士はジョーにお願いしてあるわ。結界や補助魔法は私が。治癒魔法の使い手は酒場で募集してみましょう。」
「だから何で僕なの!」
「あなたが居る方が遭遇率が高いからよ。」
「囮かよっ!」
「四の五の言わずに、冒険に行きましょう!」
(無理矢理じゃないか)
冒険は決められたフィールドで行われているアトラクションだ。
冒険中はちゃんとレベルが上がり、強いモンスターと戦えることと商品としてPPが貰えることで人気のアトラクションなのだ。
グラシアスの情報ではこのアトラクション内で例のトラブルが頻繁に起こっているという。その調査のために僕も同行して欲しいというのだ。
「ジョーにはあの話はしたのか?」
「…あの話は極秘事項よ。」
冷静に考えれば、剣士としての能力が高いジョーが居てくれるのは頼もしい限りだが…
(危険な場所に何も知らせずに連れて行くつもりか…)
「大丈夫よ。私が全力で守るわ。」
グラシアスがいつになく真面目なトーンで言った。
次の日、僕とジョーとグラシアスは酒場『ル・イーダ』で治癒魔法の使い手を探すことになった。
とはいえ、店内に設置してある掲示板に治癒魔法の使い手の募集を入力するだけなのだが。
「治癒魔法の使い手募集…必要スキルレベルは…」
グラシアスが手馴れた様子で入力していく。
「店まで来てわざわざ掲示板に書き込むなんて意外とアナログだな。」
「デジタル世界だからこそ敢えてアナログ作業で時間をかけることが大事なのよ。」
「時間だけはいっぱいあるからな。」
アナログな作業が贅沢品みたいになってるようだ。
軽く飲みながら掲示板の反応を待つ。
しばらくすると募集記事にレスが入った!
「おっ!なになに…」
「なんて?」
「今、酒場に着きました、だって!」
「早い!」
掲示板のレスに注目していると後ろから声がした。
「あの…」
僕らは慌てて振り返った。
「えっ!?」
「まさか!」
なんと!!
そこに居たのは新人レンだった。
「お前かよーっ!」
「なんでー!?」
グラシアスはレンのステータスを読む。
「合格よ。」
「えーっ!?」
「いやいやいや、なんで治癒魔法!?」
「お前は騎士だろう?」
「あ、有給取りました。」
「もう有給取れるのかよ!新人なのに!!」
(ツッコミどころ、そこじゃないだろ!)
「治癒魔法も攻略済です。」
「また攻略本!!治癒魔法のも出回ってたのかー!」
「ジョーさんがグラシアスさんに冒険に誘われているのをたまたま見てたんで、治癒魔法の使い手を募集するんじゃ無いかと網を張ってました。」
(レン、恐ろしい子…)
「僕、攻略本じゃなく、ちゃんとこの世界を体験したいんです!冒険に連れてって下さい!!」
「えー、どうするルクス?」
「いやまあ、魔法の実力の高さは認めてるけど…」
「スキルレベルに問題は無いわよ?」
レンがキラキラした瞳で僕を見詰めている。
(うーん。後方支援だから、まぁ…)
「OK、一緒に行こう!」
「ルクスさん!ありがとうございます!!」
(非常にめんどくさいメンバーになってしまった…)
僕らは酒場を出て冒険者用の武器と防具とアイテムを購入した。
「おお、これがはがねのつるぎ!!」
レンがいちいち嬉しそうだ。
(レンなんてひのきのぼうで充分だろ)
「初めての冒険にしては豪華装備じゃないの?」
グラシアスが見繕ってどんどん購入していく。
「なあに?予算の心配してくれてるの?必要経費内よ。」
「神殿は太っ腹だなぁ。」
ジョーには神殿の仕事だと言ってあるようだ。
「ジョーの装備品は変わらずか。」
「この街の武器屋と防具屋で売ってるのよりも良いのを着けてるからな。」
「さすが百戦錬磨!最強の武神!!」
レンがここぞとばかりジョーを持ち上げる。
「いやいや、それほどでも。」
「でも僕が勝ったんだよね。」
持ち上げといてすぐ落とした!
(レン、恐ろしい子…)
ジョーはそのまま剣士スタイル。
レンは治癒魔法の使い手だけど、剣も使えるので軽めの防具と鋼鉄の剣(はがねのつるぎ)。
僕はローブと杖といった魔法使いの装備だ。
グラシアスは…何故か露出度高めの衣装だ。
「なんでそんな踊り子みたいな格好なの?」
「防具屋で1番防御力が高かったからよ?」
「え、どう見ても防御されてる場所少なくない?」
「もう。そんなに見ないで。」
「ルクス!お前ーー!!」
ジョーが駆け寄ってきた!
「グラシアスさんの妖艶な姿をこれ以上見るんじゃねえ!!」
グラシアスはクスクス笑っている。
(濡れ衣過ぎる!)
装備を揃えた僕らは、冒険のフィールドに向かった。
(神殿からこんなに離れるのは初めてだな…)
少しルナの顔が頭に浮かんだ。
「無理だって。」
「あなたにしか頼めないのよ。」
仕事終わりにグラシアスに捕まって頼み事をされている。
最近は攻略本の件を不問に付されて以来、例の新人レンが何故か僕に付き纏うようになって、精神的に疲れていた。
そんな折のグラシアスからのお願いである。
「剣士はジョーにお願いしてあるわ。結界や補助魔法は私が。治癒魔法の使い手は酒場で募集してみましょう。」
「だから何で僕なの!」
「あなたが居る方が遭遇率が高いからよ。」
「囮かよっ!」
「四の五の言わずに、冒険に行きましょう!」
(無理矢理じゃないか)
冒険は決められたフィールドで行われているアトラクションだ。
冒険中はちゃんとレベルが上がり、強いモンスターと戦えることと商品としてPPが貰えることで人気のアトラクションなのだ。
グラシアスの情報ではこのアトラクション内で例のトラブルが頻繁に起こっているという。その調査のために僕も同行して欲しいというのだ。
「ジョーにはあの話はしたのか?」
「…あの話は極秘事項よ。」
冷静に考えれば、剣士としての能力が高いジョーが居てくれるのは頼もしい限りだが…
(危険な場所に何も知らせずに連れて行くつもりか…)
「大丈夫よ。私が全力で守るわ。」
グラシアスがいつになく真面目なトーンで言った。
次の日、僕とジョーとグラシアスは酒場『ル・イーダ』で治癒魔法の使い手を探すことになった。
とはいえ、店内に設置してある掲示板に治癒魔法の使い手の募集を入力するだけなのだが。
「治癒魔法の使い手募集…必要スキルレベルは…」
グラシアスが手馴れた様子で入力していく。
「店まで来てわざわざ掲示板に書き込むなんて意外とアナログだな。」
「デジタル世界だからこそ敢えてアナログ作業で時間をかけることが大事なのよ。」
「時間だけはいっぱいあるからな。」
アナログな作業が贅沢品みたいになってるようだ。
軽く飲みながら掲示板の反応を待つ。
しばらくすると募集記事にレスが入った!
「おっ!なになに…」
「なんて?」
「今、酒場に着きました、だって!」
「早い!」
掲示板のレスに注目していると後ろから声がした。
「あの…」
僕らは慌てて振り返った。
「えっ!?」
「まさか!」
なんと!!
そこに居たのは新人レンだった。
「お前かよーっ!」
「なんでー!?」
グラシアスはレンのステータスを読む。
「合格よ。」
「えーっ!?」
「いやいやいや、なんで治癒魔法!?」
「お前は騎士だろう?」
「あ、有給取りました。」
「もう有給取れるのかよ!新人なのに!!」
(ツッコミどころ、そこじゃないだろ!)
「治癒魔法も攻略済です。」
「また攻略本!!治癒魔法のも出回ってたのかー!」
「ジョーさんがグラシアスさんに冒険に誘われているのをたまたま見てたんで、治癒魔法の使い手を募集するんじゃ無いかと網を張ってました。」
(レン、恐ろしい子…)
「僕、攻略本じゃなく、ちゃんとこの世界を体験したいんです!冒険に連れてって下さい!!」
「えー、どうするルクス?」
「いやまあ、魔法の実力の高さは認めてるけど…」
「スキルレベルに問題は無いわよ?」
レンがキラキラした瞳で僕を見詰めている。
(うーん。後方支援だから、まぁ…)
「OK、一緒に行こう!」
「ルクスさん!ありがとうございます!!」
(非常にめんどくさいメンバーになってしまった…)
僕らは酒場を出て冒険者用の武器と防具とアイテムを購入した。
「おお、これがはがねのつるぎ!!」
レンがいちいち嬉しそうだ。
(レンなんてひのきのぼうで充分だろ)
「初めての冒険にしては豪華装備じゃないの?」
グラシアスが見繕ってどんどん購入していく。
「なあに?予算の心配してくれてるの?必要経費内よ。」
「神殿は太っ腹だなぁ。」
ジョーには神殿の仕事だと言ってあるようだ。
「ジョーの装備品は変わらずか。」
「この街の武器屋と防具屋で売ってるのよりも良いのを着けてるからな。」
「さすが百戦錬磨!最強の武神!!」
レンがここぞとばかりジョーを持ち上げる。
「いやいや、それほどでも。」
「でも僕が勝ったんだよね。」
持ち上げといてすぐ落とした!
(レン、恐ろしい子…)
ジョーはそのまま剣士スタイル。
レンは治癒魔法の使い手だけど、剣も使えるので軽めの防具と鋼鉄の剣(はがねのつるぎ)。
僕はローブと杖といった魔法使いの装備だ。
グラシアスは…何故か露出度高めの衣装だ。
「なんでそんな踊り子みたいな格好なの?」
「防具屋で1番防御力が高かったからよ?」
「え、どう見ても防御されてる場所少なくない?」
「もう。そんなに見ないで。」
「ルクス!お前ーー!!」
ジョーが駆け寄ってきた!
「グラシアスさんの妖艶な姿をこれ以上見るんじゃねえ!!」
グラシアスはクスクス笑っている。
(濡れ衣過ぎる!)
装備を揃えた僕らは、冒険のフィールドに向かった。
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