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仮想世界でのお仕事
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「はー!しかし、羨ましいな!!」
場所はいつもの酒場『ル・イーダ』。
(相変わらず懐かしさすら感じる店名だ)
治療を終え、復活したジョーは結局薄紫の君ことグラシエスと話せなかった事を悔しがった。
ジョーにはグラシエスの事をどこまで話していいか(監視員であることとか)悩んでいたのだが、自分は神殿の新しいスタッフだと騎士達に説明したらしく、その辺の詮索はなかったのでひと安心だ。
「それにしても、私室に連れ込むとは…」
「状況説明をしただけだよ。部屋にはルナも居たし!」
「くー!お前ばかりが何故モテる…!」
(モテてる訳じゃないけど)
(でも、ジョーが無事で良かった…)
ジョーが美味そうにジョッキを空けていく姿を見て、ホッとしている自分が居る。
そこへ、カズヤが遅れて入って来た。
「カズヤ、お疲れ!」
「事後処理は終わったのか?」
「まあな…原因は不明のままだけどな。」
(原因か…僕も関わっているのだろうか)
「こちらに不備が無かったのは明らかになったので始末書は書かずに済んだけど。」
カズヤはかなりお疲れのようだ。
「ジョーは完全復活のようだなw」
「おうよ!」
しばらくするとカズヤの分のジョッキも届き、3人で乾杯をした。
「それよりも、だ!!」
「なんだよ、カズヤ。」
「何故、戦闘魔法が使えた?」
「あ!俺も気になってた!どうやったんだ!?」
「ああ、それは…」
僕は見学の時にジョーが唱えている呪文を聞いていたことと、カズヤが以前コツを教えてくれていた事の応用だと話した。
「そんな簡単に?」
「信じられないな…」
(だろうな。嘘だからな。)
実は知っていた。
カズヤから教えて貰っていたバグの修整の魔法は初めてのワードばかりだったので、何となく原理がわかる程度だった。
しかし、戦闘魔法は(自分の記憶すらないというのに)知っているということを知っていた。
発動する条件を知っていたと言うべきか。
「まあ、いいだろう。」
カズヤは腑に落ちない様子だったがよっぽど疲れているのか、それ以上詮索はしなかった。
「けど…」
「ん?」
「自信はあったのかも知れないけど、もうあんな無茶はやめてくれ。肝を冷やした。」
カズヤの真剣な顔にこちらも真面目に応える。
「うん、ごめん。」
その様子を見て、ジョーはまた言い放つ。
「なんだよ、大丈夫だよ。なー!!なんせ万が一何かあったとしても復活出来るんだから!」
ジョーは相変わらずの能天気だが、カズヤは何か知ってるのかもしれない。
(聞きたいところだがどの道ワードガードとやらでその話は出来ないんだったな…)
なので、僕は違う質問をした。
「職業について知りたいんだが。」
「職業?」
「この世界の仕組みとしての職業についてだ。」
「ああ…それこそこの世界の仕組みからの話になるけど、いいか?」
カズヤの説明はこうだ。
パーフェクト・ワールドでは、基本的に年金のような一定の支給があり、働かなくても生活には困らない。(そもそも食べなくても死にはしないのだ)
(お腹が空いたりはするがリセットも可能だし、お腹が空かない設定にすることも可能だ)
なので何をして過ごしていても良いのだが、生き甲斐を得るために皆何かしら仕事をしたり、趣味を楽しんだりしている。
PPというパーフェクト・ワールド内で使える仮想通貨があり、これは何かしら行動をすると増える。仕事の報酬でも増えるが趣味に没頭したりでも増える。遊んでいても増えるのだ。
ただ、善行であればあるほど増え、悪行であれば逆に減っていくのだ。
(善悪の判断はパーフェクト・ワールドのシステムなのだが)
元の世界からの仕事を続ける者も居れば、新しい仕事や趣味を始める者も居る。
「僕は前に言ったようにこの世界を作ることが目的で来たからもちろん職業はエンジニアだ。」
「ジョーは何故騎士に?」
「何故ってそりゃ、神殿の騎士ってモテそうだからだ。」
らし過ぎる理由に戸惑いを隠せない。
「PPを貯めて俺はオーダーメイドのアバターを買うのが夢なんだ!」
「あ、そう言えば、みんなコロコロアバターを変えたりしないんだな。」
「そりゃ高額だからな。よっぽどのPP持ちじゃなきゃ、前のを売却して新しいのを買うから基本的に1体しかみんな持ってない。」
(ソルは創始者だからあんなことが出来たのか)
「PPを多く持つとアクセス権限が貰えたりするし」
「アクセス権限?」
「例えば、相手のステータスが見れたり。」
「あ!カズヤがよくパネルを出して見てるやつか!」
「人を覗きみたいに言うなよ。」
「カズヤのムッツリー!」
「誰がだ!!」
「カズヤがムッツリなのかどうかは置いといて」
「ルクスまで!」
「じゃあ僕もPPは貯まっているのか。」
「ルナさんに見てもらったらいいよ。ステータスに表示されてるから。」
「神殿の最寄りのこの街での買い物や食事は神殿関係者は神殿持ちだから必要無かったもんな。」
「え!そうだったの!?」
「無料だと思ってた?」
「カズヤかジョーの奢りだと思ってた。」
「俺は美女にしか奢らない!!」
「ルナさんはルクスに一般常識を教えなさ過ぎだな。」
「あんなにベッタリなのにな!」
ジョーはそう言うと、思い出したようにこう言った。
「グラシエスさんの歓迎会をしなきゃだな!ルナも呼んでさ!ルナの誤解を解きたいんだろ?」
ジョーにしては気が利いている!
「お前がグラシエスさんに会いたいだけだろ。」
「バレたか!!」
「ハハ…」
(グラシエスの歓迎会か…)
(え、それ火に油を注ぐことになるんじゃ…?)
場所はいつもの酒場『ル・イーダ』。
(相変わらず懐かしさすら感じる店名だ)
治療を終え、復活したジョーは結局薄紫の君ことグラシエスと話せなかった事を悔しがった。
ジョーにはグラシエスの事をどこまで話していいか(監視員であることとか)悩んでいたのだが、自分は神殿の新しいスタッフだと騎士達に説明したらしく、その辺の詮索はなかったのでひと安心だ。
「それにしても、私室に連れ込むとは…」
「状況説明をしただけだよ。部屋にはルナも居たし!」
「くー!お前ばかりが何故モテる…!」
(モテてる訳じゃないけど)
(でも、ジョーが無事で良かった…)
ジョーが美味そうにジョッキを空けていく姿を見て、ホッとしている自分が居る。
そこへ、カズヤが遅れて入って来た。
「カズヤ、お疲れ!」
「事後処理は終わったのか?」
「まあな…原因は不明のままだけどな。」
(原因か…僕も関わっているのだろうか)
「こちらに不備が無かったのは明らかになったので始末書は書かずに済んだけど。」
カズヤはかなりお疲れのようだ。
「ジョーは完全復活のようだなw」
「おうよ!」
しばらくするとカズヤの分のジョッキも届き、3人で乾杯をした。
「それよりも、だ!!」
「なんだよ、カズヤ。」
「何故、戦闘魔法が使えた?」
「あ!俺も気になってた!どうやったんだ!?」
「ああ、それは…」
僕は見学の時にジョーが唱えている呪文を聞いていたことと、カズヤが以前コツを教えてくれていた事の応用だと話した。
「そんな簡単に?」
「信じられないな…」
(だろうな。嘘だからな。)
実は知っていた。
カズヤから教えて貰っていたバグの修整の魔法は初めてのワードばかりだったので、何となく原理がわかる程度だった。
しかし、戦闘魔法は(自分の記憶すらないというのに)知っているということを知っていた。
発動する条件を知っていたと言うべきか。
「まあ、いいだろう。」
カズヤは腑に落ちない様子だったがよっぽど疲れているのか、それ以上詮索はしなかった。
「けど…」
「ん?」
「自信はあったのかも知れないけど、もうあんな無茶はやめてくれ。肝を冷やした。」
カズヤの真剣な顔にこちらも真面目に応える。
「うん、ごめん。」
その様子を見て、ジョーはまた言い放つ。
「なんだよ、大丈夫だよ。なー!!なんせ万が一何かあったとしても復活出来るんだから!」
ジョーは相変わらずの能天気だが、カズヤは何か知ってるのかもしれない。
(聞きたいところだがどの道ワードガードとやらでその話は出来ないんだったな…)
なので、僕は違う質問をした。
「職業について知りたいんだが。」
「職業?」
「この世界の仕組みとしての職業についてだ。」
「ああ…それこそこの世界の仕組みからの話になるけど、いいか?」
カズヤの説明はこうだ。
パーフェクト・ワールドでは、基本的に年金のような一定の支給があり、働かなくても生活には困らない。(そもそも食べなくても死にはしないのだ)
(お腹が空いたりはするがリセットも可能だし、お腹が空かない設定にすることも可能だ)
なので何をして過ごしていても良いのだが、生き甲斐を得るために皆何かしら仕事をしたり、趣味を楽しんだりしている。
PPというパーフェクト・ワールド内で使える仮想通貨があり、これは何かしら行動をすると増える。仕事の報酬でも増えるが趣味に没頭したりでも増える。遊んでいても増えるのだ。
ただ、善行であればあるほど増え、悪行であれば逆に減っていくのだ。
(善悪の判断はパーフェクト・ワールドのシステムなのだが)
元の世界からの仕事を続ける者も居れば、新しい仕事や趣味を始める者も居る。
「僕は前に言ったようにこの世界を作ることが目的で来たからもちろん職業はエンジニアだ。」
「ジョーは何故騎士に?」
「何故ってそりゃ、神殿の騎士ってモテそうだからだ。」
らし過ぎる理由に戸惑いを隠せない。
「PPを貯めて俺はオーダーメイドのアバターを買うのが夢なんだ!」
「あ、そう言えば、みんなコロコロアバターを変えたりしないんだな。」
「そりゃ高額だからな。よっぽどのPP持ちじゃなきゃ、前のを売却して新しいのを買うから基本的に1体しかみんな持ってない。」
(ソルは創始者だからあんなことが出来たのか)
「PPを多く持つとアクセス権限が貰えたりするし」
「アクセス権限?」
「例えば、相手のステータスが見れたり。」
「あ!カズヤがよくパネルを出して見てるやつか!」
「人を覗きみたいに言うなよ。」
「カズヤのムッツリー!」
「誰がだ!!」
「カズヤがムッツリなのかどうかは置いといて」
「ルクスまで!」
「じゃあ僕もPPは貯まっているのか。」
「ルナさんに見てもらったらいいよ。ステータスに表示されてるから。」
「神殿の最寄りのこの街での買い物や食事は神殿関係者は神殿持ちだから必要無かったもんな。」
「え!そうだったの!?」
「無料だと思ってた?」
「カズヤかジョーの奢りだと思ってた。」
「俺は美女にしか奢らない!!」
「ルナさんはルクスに一般常識を教えなさ過ぎだな。」
「あんなにベッタリなのにな!」
ジョーはそう言うと、思い出したようにこう言った。
「グラシエスさんの歓迎会をしなきゃだな!ルナも呼んでさ!ルナの誤解を解きたいんだろ?」
ジョーにしては気が利いている!
「お前がグラシエスさんに会いたいだけだろ。」
「バレたか!!」
「ハハ…」
(グラシエスの歓迎会か…)
(え、それ火に油を注ぐことになるんじゃ…?)
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