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初めての魔法

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「そんなバカな!!」


カズヤは叫んだ。


―――


神殿騎士による狩りの見学に来た僕達は、神殿敷地内の森に張られた結界の中に居た。

狩りの見学は事前予約をすれば誰でも参加することが出来た。

結界の中には例の薄紫の君も居た。

確かに柔らかい色合いと白い透き通るような肌の綺麗な女性だ。

だが…

(これもアバターだからな)

それでもジョーがあまりにも張り切っているので水を差すのはやめておいた。

カズヤも結界の中には居るものの、目の前にパネルを幾枚も出して、チームメンバーと共にモンスターの調整と分析に必死だ。

声をかける雰囲気は無い。

狩りは、森の中にモンスターを放ち、それを騎士達が撃破する、というものらしい。

(ひと狩りいこうぜ的な…)
(ん?なんのセリフだったかな?)

用意されているモンスターは、大きい虫的なものや二足歩行のゴブリン的なもの、様々だ。

騎士のレベルに合わせて調整しているらしい。

合図のラッパと共に戦いが始まった。

先陣を切ってジョーが飛び出した。

あの大柄の体でなんという瞬発力!

(口だけじゃないんだな)

僕が今回1番興味があるのは戦闘魔法だ。

僕の視線に気付いてか、剣で戦っていたジョーが立ち止まり何か短い呪文を唱えた!其の瞬間、蜂のようなモンスターが燃え上がる!

見学者達の歓声が沸く。

ジョーらしい派手な戦い方だ。

ジョーの方もチラチラと薄紫の君の反応を気にしているようだ。

薄紫の君の反応は…僕の方が後ろにいるのでよく分からないな。

モンスターもあらかた倒し終わり、そろそろ終わりといったところでカズヤがこちらに来た。

「どうだった?ご感想は?」

「面白かったよ。もう終わりかな?」

「そうだね。モンスターの発生は完了したから後はデータを取れるだけ取って分析に回すだけだよ。」

僕らがそんな話をしていると、他の見学者達が騒ぎ出した。

「あんな大きなモンスターも居るのか!?」

「大丈夫なの!?」

慌てて森に目をやると、そこには巨大な蜘蛛の形をしたモンスターが居た。

「なんだアレは?」

カズヤがパネルを空間に出す。



「そんなバカな!」

カズヤは叫んだ。



「あんなの登録されてない!問題発生だ、狩りイベント強制終了する!」

巨大蜘蛛は騎士達を襲う。

騎士達も応戦する。

巨大蜘蛛からは毒性の高い液体が放たれ、みな思うように戦えずにいる。

その中でジョーは炎の魔法で対抗している。

カズヤはパネルを睨みつけたまま、こう言った。

「狩りイベントが終了出来ない…!」

「え!?」

「アクセスパスワードが変更されてる…」

「何とかなるのか!?」

「今やっているところだ!」

カズヤとエンジニアチームは必死にパスワード解除を試みている。

こうしているうちにもジョー達は劣勢を強いられてる。倒れているものも居るようだ。



「あの巨大蜘蛛に攻撃は効いているのか?」

「ステータス上では少しずつではあるが、HPの減少が見られる。」

「カズヤはなんとか狩りイベントを終わらせてくれ!僕は加勢しに行ってくる。」

「待て、ルクス!お前は戦闘魔法は使えないだろう!?僕が行く!」

「多分、魔法はなんとかなりそうだ!カズヤはパスワード解除を頼む!」

「ルクス…お前!」

「結界が弱っている…!カズヤ、そちらも頼めるか!?」

「結界は私が維持しておくわ。」

薄紫の君がそう言って結界の壁に手を伸ばし呪文を唱えだした。

「キミは…」

「早く行った方が良いわよ。」

僕は結界を飛び出し、巨大蜘蛛の前に走り出た!

傷だらけになったジョーが、僕の姿を見て

「逃げろ!」

と言ったのとほぼ同時に僕の手のひらに大きい火球が出現していた。

(予想通りだ)

「火球(ファイアボール)!!」

火球は物凄いスピードで巨大蜘蛛に激突し爆発した!!

その直後、巨大蜘蛛は消滅した…!

(やはり…)

「ルクス!!」

ジョーとカズヤが駆け寄ってきた。

「ジョー、大丈夫なのか!?」

傷だらけになったジョーに僕はそう言った。

「ワハハ!!新人のお前に助けられるなんてなぁ!お前凄いな!!」

ジョーは元気そうだ。

「ルクス、イベントは終了することが出来たよ。」

「そうか、良かった。」

「ルクスに聞きたいことは山ほどあるんだけど、後処理が山積みだから後にするよ。とにかく助かった。ありがとう。」

そう言って、カズヤはすぐ作業に戻った。

「騎士達も大丈夫だったかな?」

「何人かは酷くやられたな。神殿に帰って治療を受けさせよう。」

1番見た感じ酷くやられてるジョーがそう言った。

(本当に怪我するんだな…)


「まぁ、万が一死んでも復活が出来るからな!ガハハ!」


僕が不安そうにしていると思ったのか、ジョーが続けてこう言ったのだが、それを聞いて後ろからそれに応える声がした。

「それがそうとも言えなくなったのよ。」

薄紫の君だった。

「あ、さっきは結界を維持してくれてありがとう」

「え!あなたが結界を!?」

薄紫の君に声かけられてジョーは嬉しいやら恥ずかしいやら混在した顔をしている。


「そうとも言えなくなったってどういうことですか?」

「どこか、人目の無い落ち着いてて話せる場所は無いかしら?」


薄紫の瞳が有無を言わさず僕を睨みつけた。
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