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薄紫の君
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僕の身柄は神殿預かりにはなっているが、街に出ることも自由に出来る。
(まあ、勝手に出たらウサギ耳がうるさいけど)
大概は神殿所属のカズヤとジョーと一緒なので問題ないという事なのだろう。
中世ヨーロッパの街並みを再現したこの街の風景は好きだ。
(どれもこれも僕の好みなんだよな)
今日もすっかり行きつけになった
酒場『ル・イーダ』で3人で飲む約束をしている。
(酒場の名前がなんかまたしっくり来るのは何故だろう)
仕事終わりで一緒に来たカズヤと先に軽く乾杯する。
「おつかれー!!」
ここは酒も美味いが食べ物もなかなかいける。
見たことの無い料理も多いがハズレはない。
仮想世界だというのに逆に味が微妙な店もちゃんとあるのだ。
(そういうこだわりも嫌いじゃないなw)
「それにしても、今日はジョーが遅いな。」
「いつもなら先に飲んでるのになw」
カズヤの言う通り、酒好きのジョーはうっかりすると昼間から飲んでるくらいなのだが。
(それで騎士が務まるとは…)
「おー、悪い、待たせたな!」
騒がしい酒場でも1番大きい声のジョーが店に入ってきた。
ジョーは座る前に酒をオーダーして、テーブルについていきなり大きなため息をついた。
「はあぁぁぁ」
「なんだよ、いきなりため息かよ。」
「どうした?仕事で何かあったのか?」
「それがさぁ…」
「うんうん」
「なんだなんだ」
「実はさ…」
「早く言えよ」
「まあまあ。ジョー、何があった?」
僕はだんだんイラつき始めたカズヤを止めながら、ジョーに続きを促した。
すると、ジョーはボソッと呟いた。
「恋…」
「え?」
今度はジョーはハッキリ言い放った!
店中に響くデカい声で!
「恋しちゃったんだよーーー!」
「ちょ、ジョー、静かに!」
慌てる僕の隣で今度はカズヤがため息をつく。
「はー、またかよ。」
「またじゃないよ!今までのとは全然違う!」
「お前、前の時もそう言ってたぞ?」
「今度は違うんだ!!」
なるほど、ジョーは惚れっぽいわけだ。
(この世界でも恋愛や結婚は可能だ)
(そういう話はこちらの世界に来て初めてだな)
「聞いてくれ!今日神殿の警備にあたってたら、凄い綺麗な女の子に声をかけられて…」
ジョーは一方的に話を続ける。
「薄紫の髪と同じ薄紫の瞳が…」
(綺麗ったって、アバターだけどね…)
(それを言っちゃうと、ウサギ耳のルナに魅力を感じる自分も否定することになっちゃうから言わないけど)
「ルクス聞いてるのか!?」
「あ、ああ、聞いてる聞いてる!」
「それで明日の狩りを見学したいって言うんで…」
「狩り?」
「神殿の騎士は鍛錬のためとモンスターの調整のために定期的に森に入って狩りをするんだよ。」
すっかり、そっぽを向いていたカズヤが答えてくれた。
「モンスターの調整?」
「剣と魔法の世界だからな。当然、モンスターも作成するんだけど、強さの基準を決めるために騎士達による狩りでデータを取るんだ。」
「なるほど。」
「冒険も大事なアトラクションのひとつだからな。」
「冒険か…面白そうだな。」
「興味があるならルクスも見学しに来るか?」
という話をしていたら、
ジョーが急に割り込んできた。
「俺は戦闘魔法の使い手なのだ!!見せてやろう、この俺様の必殺技を!!」
「戦闘魔法か…興味はある。」
「使い方はバグの修復の時と同じだがワードが違うのと、パワーの込め方が違う。」
「俺様の必殺技を薄紫の君に見てもらうのだー!!」
「ジョー、うるさい!」
「特別なワードには既にコードが充てられていて、それを組み合わせて発動する、そこまでは同じ。」
「なるほど。」
「修復の時はパワーを抑えつつ集中する、どちらかと言うと内向きのパワーといった感じだが、戦闘魔法の時は外向きの…」
「俺様の必殺技が炸裂だ!!」
「うん、何となくわかる。」
(ジョーを見てると)
「そんな大きいパワーのコントロールは難しいんだけど、確かにジョーは上手いんだよね。普段こんなだけど。」
「こんなって何だよ!褒めるなよ!照れるじゃねーか!」
「ふーん」
「じゃあ、明日はジョーの晴れ姿でも見に行くかw」
「薄紫の君もね。」
「緊張するなぁー!ワッハッハ!!」
(戦闘魔法か…)
(異世界っぽい!)
(まあ、勝手に出たらウサギ耳がうるさいけど)
大概は神殿所属のカズヤとジョーと一緒なので問題ないという事なのだろう。
中世ヨーロッパの街並みを再現したこの街の風景は好きだ。
(どれもこれも僕の好みなんだよな)
今日もすっかり行きつけになった
酒場『ル・イーダ』で3人で飲む約束をしている。
(酒場の名前がなんかまたしっくり来るのは何故だろう)
仕事終わりで一緒に来たカズヤと先に軽く乾杯する。
「おつかれー!!」
ここは酒も美味いが食べ物もなかなかいける。
見たことの無い料理も多いがハズレはない。
仮想世界だというのに逆に味が微妙な店もちゃんとあるのだ。
(そういうこだわりも嫌いじゃないなw)
「それにしても、今日はジョーが遅いな。」
「いつもなら先に飲んでるのになw」
カズヤの言う通り、酒好きのジョーはうっかりすると昼間から飲んでるくらいなのだが。
(それで騎士が務まるとは…)
「おー、悪い、待たせたな!」
騒がしい酒場でも1番大きい声のジョーが店に入ってきた。
ジョーは座る前に酒をオーダーして、テーブルについていきなり大きなため息をついた。
「はあぁぁぁ」
「なんだよ、いきなりため息かよ。」
「どうした?仕事で何かあったのか?」
「それがさぁ…」
「うんうん」
「なんだなんだ」
「実はさ…」
「早く言えよ」
「まあまあ。ジョー、何があった?」
僕はだんだんイラつき始めたカズヤを止めながら、ジョーに続きを促した。
すると、ジョーはボソッと呟いた。
「恋…」
「え?」
今度はジョーはハッキリ言い放った!
店中に響くデカい声で!
「恋しちゃったんだよーーー!」
「ちょ、ジョー、静かに!」
慌てる僕の隣で今度はカズヤがため息をつく。
「はー、またかよ。」
「またじゃないよ!今までのとは全然違う!」
「お前、前の時もそう言ってたぞ?」
「今度は違うんだ!!」
なるほど、ジョーは惚れっぽいわけだ。
(この世界でも恋愛や結婚は可能だ)
(そういう話はこちらの世界に来て初めてだな)
「聞いてくれ!今日神殿の警備にあたってたら、凄い綺麗な女の子に声をかけられて…」
ジョーは一方的に話を続ける。
「薄紫の髪と同じ薄紫の瞳が…」
(綺麗ったって、アバターだけどね…)
(それを言っちゃうと、ウサギ耳のルナに魅力を感じる自分も否定することになっちゃうから言わないけど)
「ルクス聞いてるのか!?」
「あ、ああ、聞いてる聞いてる!」
「それで明日の狩りを見学したいって言うんで…」
「狩り?」
「神殿の騎士は鍛錬のためとモンスターの調整のために定期的に森に入って狩りをするんだよ。」
すっかり、そっぽを向いていたカズヤが答えてくれた。
「モンスターの調整?」
「剣と魔法の世界だからな。当然、モンスターも作成するんだけど、強さの基準を決めるために騎士達による狩りでデータを取るんだ。」
「なるほど。」
「冒険も大事なアトラクションのひとつだからな。」
「冒険か…面白そうだな。」
「興味があるならルクスも見学しに来るか?」
という話をしていたら、
ジョーが急に割り込んできた。
「俺は戦闘魔法の使い手なのだ!!見せてやろう、この俺様の必殺技を!!」
「戦闘魔法か…興味はある。」
「使い方はバグの修復の時と同じだがワードが違うのと、パワーの込め方が違う。」
「俺様の必殺技を薄紫の君に見てもらうのだー!!」
「ジョー、うるさい!」
「特別なワードには既にコードが充てられていて、それを組み合わせて発動する、そこまでは同じ。」
「なるほど。」
「修復の時はパワーを抑えつつ集中する、どちらかと言うと内向きのパワーといった感じだが、戦闘魔法の時は外向きの…」
「俺様の必殺技が炸裂だ!!」
「うん、何となくわかる。」
(ジョーを見てると)
「そんな大きいパワーのコントロールは難しいんだけど、確かにジョーは上手いんだよね。普段こんなだけど。」
「こんなって何だよ!褒めるなよ!照れるじゃねーか!」
「ふーん」
「じゃあ、明日はジョーの晴れ姿でも見に行くかw」
「薄紫の君もね。」
「緊張するなぁー!ワッハッハ!!」
(戦闘魔法か…)
(異世界っぽい!)
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