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ようこそ!パーフェクトワールドへ!
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「」「」
「…よ」
「お前はどちらを選ぶ?」
(…僕は)
ゲームの選択肢みたいに何かを問われた気がした。
(ゲーム?)
そう思った瞬間、真っ暗な世界が突然明るくなった。
「ご無事ですか!?」
気が付けば、目の前には長い銀髪にウサギ耳をつけた若い女性が居た。
(ウサギ耳)
「座標軸のバグですかね、本来なら神殿でのお出迎えが通例なのですが。」
(何を言ってる?)
「ステータスを拝見しますね。あら、バグの影響かお名前の表示が文字化けされてますね。」
(ステータス…)
「お名前以外のステータスには問題無さそうです。失礼ですが検索を致しますのでお名前宜しいですか?」
(名前…)
「大丈夫ですか?お名前分かります?」
明るい光のせいでぼやけてた視界が、はっきりと世界を映し出す。
(ここはどこだ?)
「バグの影響で混乱されてるんですかね?本体の状況確認をしますね。」
眩しい光。青い空と緑の草原、遠くには中世の城のような建物。そよぐ風。
ウサギ耳。
(え、まさか異世界転生!?)
ウサギ耳は矢継ぎ早に話を続ける。
「センターに問い合わせた結果本体の損傷は見られませんでしたので一時的なバグかと思われます。お名前、言えますか?」
戸惑いの中やっと僕から出た言葉は…
「ここ異世界ですか?」
「・・・」
―――
1ヶ月後、街の酒場にて。
「ギャハハハハw」
「ブフォw」
「笑うなよ」
「だってなァ」
「異世界転生!?って」
「ゲーム脳だなw」
同じテーブルで大笑いしているのはこちらで仲良くなった友人達だ。
金髪に緑の瞳はジョー、黒髪にメガネはカズヤ。
「まぁ、状況的には異世界転生と何ら変わらないけどなw」
カズヤは笑いを堪えながらそう言った。
「しかし、これまでの記憶が無いのに異世界転生っていう言葉は知ってるって…ブプッw」
ジョーは堪えきれずまたふき出した。
「だから笑うなって!仕方ないだろ!」
「そうだな、移行中に記憶が失われて誰か分からなくなるなんて前代未聞だもんな。」
「PWがオープンしてから俺の知る限りそんな事故は起こったことないからな。」
カズヤはこの世界のこちら側の住人でもありエンジニアでもある。
「作り手側としては異世界転生だと思われるくらいリアルだというのは褒め言葉だよ。」
そう、この世界『パーフェクト・ワールド』(略称PW)は人によって作られた仮想世界なのだ。
人類の脳は老化しない。
脳の寿命は300年と言われるようになった近年、身体の寿命が尽きた後も脳を最適な環境で保管することに人類は成功。
その保管された脳とシステムを繋ぐことにより意識を仮想空間に落とし込むことが可能となった。
自分の好きなアバターを作り意識で操作する。
五感も存在する。
希望の世界に住むことが出来る。
これこそ人類が待ち望んだ夢のシステムだ。
一部の人々はこのPWに挙って参加した。
(全員が参加出来るものではなかった。条件は厳しく、高額な参加費用、脳に損傷が無いこと、身体の寿命が終わっていることが絶対条件となっている)
現実世界ともやり取り出来、安全なシステムとして100年以上存在しているらしい。
カズヤは開発の初期メンバーだ。
(見た目は20代だが、本当の年齢は100歳以上?)
(神殿に行けばステータスが見れるんだけどな)
確かにリアルだ。
酒を飲めばちゃんと酔っ払う。
(これが全て電気信号なのか…)
あの後、自分の名前を思い出せないまま、僕は神殿に保護されカズヤの助手の様な仕事をしている。
ジョーは神殿を守る騎士だそうだ。
(ジョーも高額な参加費を支払ってここにいるってことは凄い人なのかも知れないな)
「異世界転生ー!ギャハハハハー!」
(そうは見えないけど)
(となると、自分もそうなのだろうけれど)
生活に困らない程度には記憶があるのに自分の過去はさっぱり思い出せない。
PWでは様々な世界が存在するらしい。
中世のヨーロッパのような城と街並み、剣と魔法の存在する世界がここ、『アエテルヌム』。
その他には江戸時代をモチーフにした世界や宇宙をモチーフにした世界、もちろん元の世界を忠実に再現している世界等もあるらしい。
行き来は自由に出来ないらしいけど。
言語は世界共通。
どの世界に行くかは予約時に決めるらしい。
(ということは、僕はここを選択したということか)
(やはり異世界とか好きだったんだろうか)
(予約か…)
肉体が生きている内は来れない。ということは元の世界では既に自分の肉体の寿命は尽きている…のか。
ここでは皆楽しそうに過ごしているけど、死んだ時の記憶を残している人も居るのかな。
こちらの世界で、相手の身体の寿命を失った理由、つまり死因を聞くのはタブーとされている。
「どうした?」
「いや、なんでも。」
「名前は慣れたか?」
名前をなくした僕は神殿で仮の名前をつけられていた。
仮の名前と仮のハンドルネーム。
基本的に本名を名乗らないこの世界ではハンドルネームが主に使用される。
僕の仮のハンドルネームは『ルクス』と付けられた。
「ルクス…か。」
「光の意味だな…異世界人ぽいなw」
「いや、どっちかと言えば蛍光灯っぽいだろw」
2人はまたふき出した。
「お前らなー!いい加減にしろよー!」
「アレだろ?初めてこっちに来た時に光が眩しいって頻りに言ってたからなんだろ?」
「そんなの来たばかりで混乱してたから覚えてないよ!」
「まぁまぁ。いいじゃん、とりあえずこれで仮とはいえ無事登録完了なんだからw」
「それじゃあ、一応やっとくか」
2人はこちらに向き直り酒の入ったジョッキを傾けこう言った。
「ようこそ!パーフェクトワールドへ!」
「…よ」
「お前はどちらを選ぶ?」
(…僕は)
ゲームの選択肢みたいに何かを問われた気がした。
(ゲーム?)
そう思った瞬間、真っ暗な世界が突然明るくなった。
「ご無事ですか!?」
気が付けば、目の前には長い銀髪にウサギ耳をつけた若い女性が居た。
(ウサギ耳)
「座標軸のバグですかね、本来なら神殿でのお出迎えが通例なのですが。」
(何を言ってる?)
「ステータスを拝見しますね。あら、バグの影響かお名前の表示が文字化けされてますね。」
(ステータス…)
「お名前以外のステータスには問題無さそうです。失礼ですが検索を致しますのでお名前宜しいですか?」
(名前…)
「大丈夫ですか?お名前分かります?」
明るい光のせいでぼやけてた視界が、はっきりと世界を映し出す。
(ここはどこだ?)
「バグの影響で混乱されてるんですかね?本体の状況確認をしますね。」
眩しい光。青い空と緑の草原、遠くには中世の城のような建物。そよぐ風。
ウサギ耳。
(え、まさか異世界転生!?)
ウサギ耳は矢継ぎ早に話を続ける。
「センターに問い合わせた結果本体の損傷は見られませんでしたので一時的なバグかと思われます。お名前、言えますか?」
戸惑いの中やっと僕から出た言葉は…
「ここ異世界ですか?」
「・・・」
―――
1ヶ月後、街の酒場にて。
「ギャハハハハw」
「ブフォw」
「笑うなよ」
「だってなァ」
「異世界転生!?って」
「ゲーム脳だなw」
同じテーブルで大笑いしているのはこちらで仲良くなった友人達だ。
金髪に緑の瞳はジョー、黒髪にメガネはカズヤ。
「まぁ、状況的には異世界転生と何ら変わらないけどなw」
カズヤは笑いを堪えながらそう言った。
「しかし、これまでの記憶が無いのに異世界転生っていう言葉は知ってるって…ブプッw」
ジョーは堪えきれずまたふき出した。
「だから笑うなって!仕方ないだろ!」
「そうだな、移行中に記憶が失われて誰か分からなくなるなんて前代未聞だもんな。」
「PWがオープンしてから俺の知る限りそんな事故は起こったことないからな。」
カズヤはこの世界のこちら側の住人でもありエンジニアでもある。
「作り手側としては異世界転生だと思われるくらいリアルだというのは褒め言葉だよ。」
そう、この世界『パーフェクト・ワールド』(略称PW)は人によって作られた仮想世界なのだ。
人類の脳は老化しない。
脳の寿命は300年と言われるようになった近年、身体の寿命が尽きた後も脳を最適な環境で保管することに人類は成功。
その保管された脳とシステムを繋ぐことにより意識を仮想空間に落とし込むことが可能となった。
自分の好きなアバターを作り意識で操作する。
五感も存在する。
希望の世界に住むことが出来る。
これこそ人類が待ち望んだ夢のシステムだ。
一部の人々はこのPWに挙って参加した。
(全員が参加出来るものではなかった。条件は厳しく、高額な参加費用、脳に損傷が無いこと、身体の寿命が終わっていることが絶対条件となっている)
現実世界ともやり取り出来、安全なシステムとして100年以上存在しているらしい。
カズヤは開発の初期メンバーだ。
(見た目は20代だが、本当の年齢は100歳以上?)
(神殿に行けばステータスが見れるんだけどな)
確かにリアルだ。
酒を飲めばちゃんと酔っ払う。
(これが全て電気信号なのか…)
あの後、自分の名前を思い出せないまま、僕は神殿に保護されカズヤの助手の様な仕事をしている。
ジョーは神殿を守る騎士だそうだ。
(ジョーも高額な参加費を支払ってここにいるってことは凄い人なのかも知れないな)
「異世界転生ー!ギャハハハハー!」
(そうは見えないけど)
(となると、自分もそうなのだろうけれど)
生活に困らない程度には記憶があるのに自分の過去はさっぱり思い出せない。
PWでは様々な世界が存在するらしい。
中世のヨーロッパのような城と街並み、剣と魔法の存在する世界がここ、『アエテルヌム』。
その他には江戸時代をモチーフにした世界や宇宙をモチーフにした世界、もちろん元の世界を忠実に再現している世界等もあるらしい。
行き来は自由に出来ないらしいけど。
言語は世界共通。
どの世界に行くかは予約時に決めるらしい。
(ということは、僕はここを選択したということか)
(やはり異世界とか好きだったんだろうか)
(予約か…)
肉体が生きている内は来れない。ということは元の世界では既に自分の肉体の寿命は尽きている…のか。
ここでは皆楽しそうに過ごしているけど、死んだ時の記憶を残している人も居るのかな。
こちらの世界で、相手の身体の寿命を失った理由、つまり死因を聞くのはタブーとされている。
「どうした?」
「いや、なんでも。」
「名前は慣れたか?」
名前をなくした僕は神殿で仮の名前をつけられていた。
仮の名前と仮のハンドルネーム。
基本的に本名を名乗らないこの世界ではハンドルネームが主に使用される。
僕の仮のハンドルネームは『ルクス』と付けられた。
「ルクス…か。」
「光の意味だな…異世界人ぽいなw」
「いや、どっちかと言えば蛍光灯っぽいだろw」
2人はまたふき出した。
「お前らなー!いい加減にしろよー!」
「アレだろ?初めてこっちに来た時に光が眩しいって頻りに言ってたからなんだろ?」
「そんなの来たばかりで混乱してたから覚えてないよ!」
「まぁまぁ。いいじゃん、とりあえずこれで仮とはいえ無事登録完了なんだからw」
「それじゃあ、一応やっとくか」
2人はこちらに向き直り酒の入ったジョッキを傾けこう言った。
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