~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

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~最終章~◆◆◆物語はハッピーエンドが良いよね?◆◆◆

419ページ目…物語はハッピーエンドが良いよね?【4】

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 ここは、通称:バベルの塔の50階層…所謂いわゆる、階層ボスの部屋である。
 そして、今、その階層ボスとの戦闘中であり…。

「ちょッ!?こいつ、もの凄く硬いんだけどッ!?」

 そう叫んだ私に、妹のセイラがツッコミを入れた。

「…当たり前、それ、オリハルコンゴーレム。」

 ちなみに、セイラはハーフ・ドワーフだからなのか〖鑑定〗のスキルを持っている。
 おそらく、鍛冶に使う鉱石やらを調べている内に手に入れたのスキルなのだろう。
 問題は、そんな事ではなく…。

「そう言う大事な事は、もっと早く言いなさいよ~!」

 しかし、そう叫んでも既に遅く、後の祭りである。
 先手必勝とばかりに攻撃した事で、こちらを敵と認識したオリハルコンゴーレムが攻撃をしてくる。
 とは言え、ゴーレムだけあって動きは鈍く、攻撃を避ける事自体は、さほど問題がある訳ではない。
 ただ、その威力は凄まじく、大地を穿つ一撃一撃に、凄まじいほどの衝撃が伝わってくる。

「あ~、もうッ!!」

『キンキン、キキンッ!!』

 しかし、何度斬り付けても、その表面には傷らしい傷も与えられないでいるのが現状で、むしろ、私が使ってる剣の方が、刃こぼれし始める。
 そんな私を余所目に、一人、可怪しいな行動を取っているのは、兄のクラマである。
 腰に差している刀と呼ばれる物である。
 そんな片刃の剣に力を溜め、えずオリハルコンゴーレムの死角に移動する様な動きを取っているのだ。

「クラマ、何かする気なら、さっさとやりなさいよ!
 体力に限りがあるんだから、何時までも囮なんて出来ないんだからね!」

 次の瞬間、オリハルコンゴーレムは、死角に入る筈のクラマの方を向く。

「ち、ちょっとエクレア、エクレアの所為で、バレちゃったじゃん!!」

 攻撃されたら堪らないと、急いでその場を離脱するクラマ…しかし、それを追う様にオリハルコンゴーレムが動き出す。
 しかし、そんな行動に待ったを掛ける者が居た。

『ドッゴーン!』

 頭上への強力な一撃に、オリハルコンゴーレムが体制を崩し転んだ。
 もっとも、全身がオリハルコンで出来ている為、ダメージとまではいかない様だ。

 そして、それを行った人物はと言うと…。

「…クラマ、今。」

 その体型からは想像出来ない程の怪力の持ち主で、大きなハンマーを振り回していたセイラだった。

「り、了解!セイラ、助かったよ。」

 クラマはそう言うと、先程まで溜めていた力を一気に開放する。
 その瞬間、クラマの尻尾が一本から三本へと増えた。
 その姿は、どことなく彼の母親に似ていた。

「父さん直伝…『魔神剣・次元斬まじんけん・じげんざん』ッ!」

『チンッ!』

 クラマの手元が一瞬だけ光ったと思うと、微かな金属音が聞こえた。
 クラマが使う『居合』と呼ばれる抜刀術を何度も見てきたので、今の音が刀で斬った後、納刀する時の音だと言う事が分かった。
 しかし、クラマが攻撃を仕掛けた後、音がなったのはその音だけ、つまり…。

「は、外したのッ!?」

 アレだけ格好を付けておきながら、まさかの空振りなのか?

「いやいやいや、僕、ちゃんと斬ったからッ!」

 尻尾の数が増えたクラマは、何時いつもの、どもる喋り方ではなく、普通に話している。
 どうやら、尻尾の数が増える事で、性格が変わるのも母親譲りの様だ。
 そして、クラマが言った事を証明するかの様に、クラマへと向かおうとしたオリハルコンゴーレムが、真ん中からズレて崩れ落ちた。

「…みんな、装備を出す。
 …今の内に、メンテするから。」

 妹のセイラは、ダンジョンの中だと言うのに、私達の装備のメンテを幾度となく行ってきた。
 そのお陰もあって、今まで問題なく戦ってこれていたのだが…。

「…姉さん、武器はもっと大事に使って?
 …姉さんの武器が、一番、損傷してる。」
「な、何よ!私が一番攻撃してるんだから、損傷するのは仕方がないじゃない!」
「…それは分かってる、でも、私の言ってる意味、違うから。」
「じゃ~どう言う意味なのよ!」
「…姉さん、オリハルコンゴーレムを斬れないのに、何で剣で攻撃したの?」
「もちろん、私なら斬れると思ったからよ!」
「…でも、斬れなかったよね?それなのに何で何度も攻撃したの?」
「そ、それは…斬れると思ったから…。」

 嘘だ、斬れなかったのが悔しくて、無駄に攻撃をしていただけだ。

「…そう、なら、それは私が未熟だったからだね、ごめんなさい。」
「えッ!?ちょっと、何でセイラが謝るの?」

 私の自己中が原因なのに、セイラが謝った事で、私は少なからず動揺した。

「…だって、姉さんの使ってる剣は、私が鍛えたから…。
 姉さんの出来ると思った事が出来ない剣を鍛えた私が悪い。」
「そ、そんな事無いわよ!わ、私の腕が未熟だったの!
 だって、同じセイラが鍛えた刀で、クラマがオリハルコンゴーレムを斬ったんだから!」

 別にセイラを擁護ようごする気はない。
 だが、自分の所為せいだったのに、妹の所為にするのは、私のプライドが許さなかった。
 それならば、素直に、自分の非を認めた方が、何倍もマシと言うものである。

「…そう、でも大丈夫、今度は、もっと強い武器にするから。」

 セイラはそう言うと、おもむろにオリハルコンゴーレムの残骸に近付いていき…。

『バキンッ!』

 装甲の一部を力任せに剥ぎ取ると、私の使っていた剣と一緒に、炉の中へと放り込む。
 そして、出てきた金属を、セイラは一心不乱に大きなハンマーで鍛え始めた。
 ちなみに、何処からともなく現れたこの炉は、持ち運びが出来る特殊な炉で、セイラが父親から貰った魔法の鞄に何時も入れて持ち歩いている魔導炉と呼ばれる魔道具であり、セイラのお気に入りだったりする。

『カンッ!カンッ!カンッ!』

 周囲に飛び散る火の粉、セイラは火傷するのも気にせずに、何度もハンマーを振り下ろす。
 そして、しばらくした後…。

『ジューーーーー!』

 激しい水蒸気と共に、一本の剣を打ち終えた。

「…出来た、姉さん、受け取って?」

 一仕事を終えたセイラが、笑顔で渡しに剣を差し出してくる。

「あ、ありがと…。」

 お礼を言い、受け取った剣は、今まで使っていた剣と違い、それなりに重量が増えてはいる物の、今までで一番、私の手に吸い付く様な感じの一振りだった。

「な、何か…エクレアの剣、凄い剣になってない?」
「…そう、力作…今までの剣の二倍以上の性能。
 …それなら、姉さんでもオリハルコンゴーレムとでも十分、戦える…はず。」
「へ~、流石、セイラ…凄いじゃん!」

 私が笑顔でそう言うと、セイラは…。

「…そ、そんな事無い…。」

 と、顔を紅くし俯いてしまったのだった…。
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