~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

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~最終章~◆◆◆物語はハッピーエンドが良いよね?◆◆◆

416ページ目…物語はハッピーエンドが良いよね?【1】

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「「「「キャーーーーッ!!」」」」

 ダンジョンの一階層だと言うのに、そこでは何人もの男女の悲鳴が響き渡る。
 しかし、その悲鳴を聞いても、近くにいる人達は慌てるどころか、むしろ笑顔で、その行方を見守っている。
 否、見守っていると言うよりは、自分達の元へ戻ってくるのを、今か今かと待ち望んでいると言った方が正しいのかもしれない。

 そう、ここは数あるダンジョンの中でも、異様とも思えるほど珍しいダンジョンでありながら、娯楽施設…遊園地なる物が作られており、なんと冒険者だけでなく一般の人にも開放されている特殊なダンジョンだったのだ。
 事の発端は、数ヶ月前…突如、メルトの町の側に現れたダンジョンが開放された特殊な空間となっていた。

 しかし、そのダンジョンは異様なのは娯楽施設だけではない。。
 そもそも、一階層の入り口で出会う魔物からして、通常のダンジョンではありえないのだ。
 その魔物と言うのがリッチと呼ばれる、不死者…アンデットだったりする。
 それも、とびきり強力な魔物…と付けば、その異常さが分かるだろう。
 そんなリッチが丁寧な言葉で、出迎えてくれるのだから、単純に異様と呼ぶだけでは言い表せないだろう。

 その結果、娯楽施設に力を入れているダンジョンとか、娯楽ダンジョンなどと呼ばれていた。
 そんな不名誉な呼ばれ方をするダンジョンではあるが、娯楽施設に力を入れているダンジョン…の名が示す様に、一攫千金を夢見る者達が集まる『カジノ』であったり、戦闘能力を持たない一般の人達が集まり楽しんでいる『遊園地』、そして冒険者達が命懸けで挑む、文字通りの『迷宮《ダンジョン》』と三つに別れていたりする。

 まぁ、そうは言っても、先程述べた全部は、このダンジョンの中にある為、本来の『迷宮』を改めてダンジョンと呼ぶのは、このダンジョンを利用する人達にとっては微妙な感じがするのだった…。

 何はともあれ、そんな特殊なダンジョンを放置しておく訳にはいかないと、本日、私達は一流の冒険者が『聖王都:シロガネ』から『カジノ』と『遊園地』の視察をしに来ていたのだ。
 そして、その視察に来た冒険者達私達が目にしたのは…。

 何人もの人が連なる箱に乗り、高速でレールの上を移動し絶叫を上げているのだが、彼等は何故か喜んで乗っている。
 何でも『ジェットコースター』なる名前で呼ばれており、絶叫する事で日頃のストレスを発散し、日々の活力を取り戻す魔導具遊具らしい。
 冒険者である私としては、このんで危険な真似を冒さなくても…とは思うのだが、一般人にとっては、コレくらいの刺激を求めてしまう物なのだろうか?

 冒険者をしていると、簡単な依頼でも、ちょっとした事で命を懸けで行う事がある為、危険スリルを楽しむ感覚と言うのが理解出来ない。
 ただまぁ、同じく視察に来た仲間に言わせると、私は頭が固いらしいので、あまり参考になならないかもしれないが…。

「ママ~!」
「はいはい、ちゃんと見てますよ~。」

 私が物思いに耽っていると、遠くで母親を呼ぶ女の子の声が聞こえた。
 慌てて視線をそちらに向けると、作り物の馬が上下に回転しながら移動している。
 何やら楽しげな音楽が聞こえているが、あんな作り物の馬に乗って何が楽しいのだろうか?
 それでも、女の子は笑顔だし、それを見ている母親も笑顔である。

「何だか、平和だな…。」

 思わず、ここがダンジョンの中だと言う事を忘れ、警戒を怠ってしまいそうになる。
 そして、私は、その事を後悔する事となる。

「「「キャーーー!」」」

 『ジェットコースター』とは違う場所から悲鳴が聞こえた。
 そちらを見ると、スケルトンが子供を襲っていたの、だ。
 しかも、そのスケルトンは只のスケルトンではなくスケルトンソルジャー…いや、スケルトンアーチャーやスケルトンメイジ等も混じっている様だ。

「クソッ!ここは安全なダンジョンじゃなかったのかッ!?」

 私はそう吐き捨てると、腰に刺していたロングソードを素早く抜き放つと、慌てて子供の救出に向かう。
 しかし、この時、私は気が付いていなかった…そう、周りの人達が誰一人として恐怖していなかった事を…。

『ガキンッ!』

 子供を救出しようとスケルトンへと振り下ろした剣が、何故か、近くにいた騎士に片手で・・・受け止められたのだ。

「貴様、何をする!早く子供を助けないと!!」
「まぁ、落ち着け…危険な事は何もないッ!」

 そう叫ぶ私に、騎士は『やれやれ…』と呟きながら、私を落ち着かせようとする。
 だが、目の前で子供が襲われているのだ、落ち着いてなど居られるはずがない。
 しかし、この騎士、やけに声が下の方から聞こえてきた様な…具体的には、私の腰の辺り位から…。
 そして、私は見てしまった…その騎士に頭が無い事を…。
 否、頭はあった…そう、彼の腰の辺りに、抱えられる様に持たれていたのだ。

「バカなッ!?こんな階層にデュラハンだとッ!?」

 通常、デュラハンと言う魔物は、ダンジョンの下層で。極稀にお目にかかる強力なアンデッドである。
 そう言う意味では、私の斬撃を片手で意図も容易く受け止めたのには納得がいく。
 だが、こんな下層…一階層に居て良い魔物ではない。
 一階層にリッチがいるのも異常だが、デュラハンまでもが存在しているとなると、その危険度が途方もなく跳ね上がるだろう。
 これが魔力の強い土地や呪われた土地であるならば分からなくもないのだが、少なくとも、こんな階層にデュラハンなどの強力な魔物が居たのでは、ダンジョン攻略など、もはや夢のまた夢、不可能だと言わざるを得ない。
 何故なら、今までのダンジョンは、例外なく進めば進むほど、強力な魔物が出てくるのだから…。

 いや、今は、そんな事より子供を助けるのが優先…しかし、このデュラハンをどうしかしないと…。

「何だ?我を知っておるのか?いや、今はその事はどうでも良い。
 それより、小娘…その獲物を収め、今しばらく様子を見ておくが良い。」
「ハッ!何を悠長な事を!私の目の前で子供が襲われているのだぞ!!」

 あまりの馬鹿げた発言に、思わず鼻で笑ってしまった。
 だが、そんな些細な事より、今は子供の命が大事だ。

「ハッハッハッ!残念ながら、その様な事実は一切無い!
 それよりも、今は黙って見ておくが良い!
 貴殿が心配せずとも、貴殿の言う子供には一切の危害は与えられぬよ。」

 そう言ったデュラハンは、腰に持っていた頭を、高く掲げると何処かへ合図を送る。
 すると、舞台の上に居た女性が、すぐに行動を開始した。

「みんなー!お友達がピンチだよー!」

 いや、それは見たら分かる…だからこそ、私が助けようとしたのだ。
 しかし、何故か舞台の上の女性は嬉しそうな声で、みんなに呼び掛けているのは何故だろうか?

「みんなー!こう言う時はー、どうするのかなー?」

 なおも私達に呼び掛ける女性…それに反応したかの様に、舞台・・の側に居た子供達が返事を始めた。
 おや?舞台…?


「助けを呼ぶー!」「やっつけるー!」「僕が守るー!」「逃げるー!」

 等々、様々な声が上がる。
 女性は耳に手を当てると、その言葉を聞いて『うんうん』と大きなりアクションで頷く。

「それじゃー、良い子のみんなー!お姉さんと一緒に、助けを呼びましょうー!
 お姉さんが助けを呼ぶから、みんなも続けて助けを呼んでね?
 せーの、ウルフマーンッ!!」
「「「「ウルフマーンッ!!」」」」

 すると、舞台の端から、一匹の魔物が現れた。
 それはワーウルフと呼ばれている高ランクの魔物であった。

「メルトの平和は俺が守る!愛と勇気の使者、ウルフマン参上ッ!!」
「「「「わーーーー!!」」」」

 その光景に、私は呆然とする。
 ワーウルフが現れたと言うのに、誰一人恐れないのだ。
 むしろ、喜んでいると言っても過言ではない。

「貴殿は、この催し・・は初めての様であるな。」

 先程、私の攻撃を難なく受け止めたデュラハンが小さな声で私に聞いてきた。

「催し…ですか?」
「うむ、我が主が始めた催しでな…確か『ヒーローショー』と呼んでいたはずだ。」
「…ヒーローショーですか?初めて聞く言葉ですが…。」
「うむ、悪者が暴れ困っていると、何処からともなく正義の味方が現れ、悪を退治する。
 そう言った芝居を、子供向けに行っているのだ。
 ただ、ここはダンジョンの中ゆえ、貴殿の様に、本気で心配する者も当然出てくる。
 そうした場合、下手をすると魔物だけではなく、楽しんでいる観客まで怪我をする事になる…最悪、死者が出る事になるだろう。
 そうならない為にも、我の様な、護衛が付いており、安全を確認した後催しの進行を合図する手筈となっておるのだ。」
「そ、そうだったんですね…私はてっきり、本当に子供が襲われているのかと…。」


 なるほど、先程のデュラハンの合図で、舞台の上の女性が頷いたのは、そう言う事だったのか…。

「そう落ち込むことはない、むしろ、子供を助けようと本気で剣を振るった勇気、実に素晴らしかった。
 貴殿の様な者がいれば、この街の住人は、安心であろうな。」

 危うく催しをダメにしてしまいそうになった私に、デュラハンは優しく声を掛けてくれる。
 しかも、私のした行為を咎めるのではなく、逆に褒め称えてくれた。
 何とも、テレくさくなる…それにしても、私は一流の冒険者になったつもりだったが、まだまだ未熟者だと認識する事となる出来事だった。

 その後も、色々な物を見て回り、その都度、安全を確認。
 確かに、この『遊園地』なる物は『娯楽施設』と呼ぶに相応しい物だと思い知らされたのだった。

 そして、私は…視察に来た他の冒険者と共に聖王都に戻ると、冒険者ギルドへ詳細に報告をしたのだった…。
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