~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

文字の大きさ
上 下
408 / 421
~最終章~◆◆◆物語はハッピーエンドが良いよね?◆◆◆

408ページ目…出来ちゃいました【1】

しおりを挟む
 メルトの町に帰ってきてから数日後の事、俺は家のリビングでのんびりくつろいでいた。
 何時いつもであれば、俺の隣には誰か居る事が多いのだが、今日は偶然なのか誰も居ない。
 そもそも、元の世界と違い、テレビなどが無いのだから、リビングに居てもつまらないだろう。
 しかし、そんな日常も、プリンの登場でももろくも崩れ去る事になる。

「あら、ご主人様あなた、お部屋に居ないと思ったら、リビングこちらに居たんですね。」

 そう言って、リビング現れたプリンは、大事そうに両手で布に包まれた『何か・・』を持っていた。

「あぁ、何となく…ね。」

 自分の部屋に居ても良かったのだが一人でいるのは、何となく寂しい気持ちになり、ここなら誰かいるかも知れないと期待していた部分もある。
 とは言え、誰かいたとしても特に何かをする訳ではない。
 そう言う意味では、この世界には娯楽と言う物があまりない様に思える。
 それに、本当に暇であれば、冒険者ギルドや買い物に出掛ければ良いだけの話なのだが、どう言う訳か、今日は、何かをする気力がまったく沸かなかったのだ。

 故に、プリンが大事そうに持っているが気になる…いや、凄く気になってしまったのだ。

「それより、プリンは何を大事そうに持ってるんだ?」

 プリンは、その言葉を待っていたかの様に、可愛い笑顔で答える。

ご主人様あなた、その…出来ちゃいました♪」

 その言葉に、一抹の不安を覚えながら、俺は再度、プリンに問い掛ける。

「出来たって…何が?」

 すると、プリンは頬を赤く染め、テレながら答える。

「私とご主人様あなたの、愛の結晶です。」
「えッ!?」

『ピシッ!』

 プリンの言葉に、時が止まったかの様な、錯覚を覚える。
 しかし、それも一瞬の事。
 そもそも、やる事をやってるのだから、仮に出来たとしても何も可怪しい事ではない。

 いやまて、やはり可怪しいと思う。

 何故なら、昨日まで、プリンにはその様な兆候が見受けられなかったのだ。
 だが、果たして本当にそうなのだろうか?

 人族であれば、十月十日で子供が出来ると言われている。

 しかしながら、俺は人族だが、プリンは人の姿をしていても、本当の種族はスライムである。
 だとしたら、昨日の今日で、産まれる事があっても、不思議ではないのかもしれない…知らんけど。
 いや、今はそんな事より、確かめないといけない事がある。
 本当に俺の子か?………と言う疑問は、最初から選択肢はない。
 それよりも、男の子か女の子なのか…だ。

「プリン…それで、どっちなんだ?」

 俺はそう言うと、プリンに近付いて行く。

「見てみますか?」
「あぁ、もちろんだ…。」

 そもそも、自分の子なのだから見ないと言う選択肢はない。
 一部例外はあるだろうが、俺の中では、子供を見ない親はいないのだから…。
 ドキドキしながらプリンへと近付いていく。

 しかし、そこで俺が見た物は…俺の予想の斜め上を行っていた。

「こ、これはッ!?ス、スライム…なのか?」

 パッと見で分かったのは、それ・・がスライムだと言う事。
 だが、こんなスライムは、今まで一度も見た事がない。
 それもそのはず、この布に包まれていたスライムには、本来であれば一つしか無い核となる物が二つあるのだ。
 その、まるまるとした容姿から、何故か、双子の卵を思い出す。

「はい、その名もツインスライム・・・・・・・と言います。」

 ツイン…確か、双子を意味する言葉だったはずだ。
 つまり、俺の感じた双子の卵と言うイメージは、あながち間違ってなかったのかもしれない。

「ふ、双子なのか?」
「そうですね…『双子』と呼んでも間違いではないと思います。」

 どうやら、俺の考えた事は、あながち間違いではなかった様だ。
 だが、プリンは、その後も説明を続けた。

「ですが、この子は…実は、私の中の欠片と、ご主人様あなたの中の欠片を集めて作り出した子なんです。」
「ん?どう言う事だ?」

 プリンの中の欠片?俺の中の欠片?その意味が分からず、プリンに質問する。

「それはですね…私とこの姿の元となる者が同一化した魂の残りの欠片と、ご主人様と同一化した『魔王・零《ゼロ》』の魂の残りの欠片の集合体と言う事です。」

 よく分からない部分もあるが、何とも、すごい話である。
 だが、その言葉を聞いて納得する事も出来る。

「あぁ、だからプリンと俺の、二人の愛の結晶と言う事か…。」

 プリンと俺の二人の愛の結晶…。
 確かに、そのまま言えば、勘違いを誘発する。
 だが、正しくは、プリンの中の『***』さんと、俺の中の『零』の二人の愛の結晶と言える存在なのだ。
 ただし、愛の結晶と言っても、子供と言う意味ではなく、文字通り、魂の結晶だったりするのだが…。

「それで…プリンは、何とも無いのか?」
「えぇ、何ともありませんよ?」

 俺の問い掛けに、まるで何でも無いかの様にプリンは答える。
 だが、俺はそれでも油断しない。
 何故なら…。

『チャキッ』

 〖無限庫インベントリ〗から『骸の魔銃ムクロのマガン』を取り出すと、照準をプリンに合わせる。
 この『骸の魔銃』も今まで共に成長してきただけあって、その威力は洒落にならない物となっている。
 そんな『骸の魔銃』を、何時でも引き金を引ける様に、指を添える。
 よもや、最愛の人?に銃口を向けるとは思わなかったが…。

「プリンは…本当に、のプリンなんだよな?」

 頼む、俺に引き金を引かせないでくれ…。
 そう祈りながら、プリンの返答を待つ。

「はい、世界中の誰よりもご主人様あなたを愛し、世界中の誰よりもご主人様に愛されるプリンです♪」

 プリンはそう言うと、触手を出し、胸元を開く。
 そして…一部分だけ〖人化〗を解くと、透明な核を触手と共に伸ばし、骸の魔銃の銃口へと触れさせる。
 このまま、骸の魔銃の引き金を引けば、プリンの核は意図も容易く破壊され、今度こそプリンは死に至るだろう。

「そうか…。」

 これはプリンの姿をした何か・・の演技かもしれない。
 だが、ここまでされたら信用しないと言う選択肢は俺に無かった。
 次の瞬間、俺は骸の魔銃を、〖無限庫〗に収納する。

「あら?撃たなくて良いのですか?」
「あぁ…それとも、プリンは俺に撃てると思ってるのか?」
「いいえ、私の大好きなご主人旦那様には、絶対に撃てませんよ♪」
「そうか…それなら、プリンはどうする?」

 もちろん、プリンを疑い、『骸の魔銃』を突きつけた仕返しの事だ。

「そうですね…こんなのはどうですか?」

 そう言うと、プリンは俺の唇を奪いつつ、ソファーに俺を押し倒した。
 次の瞬間、プリンが何をするのか理解した。

「えっと…お手柔らかに頼むぞ?」
「え~っと…善処します?」

 あ、これはダメなヤツだ…。
 プリンの疑問形での返事に、これは絶対に手加減しないな…と認識した俺は、他の嫁~ズまでも来る可能性に恐怖しながら、素直にプリンの餌食になるしか無いのだった…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...