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~最終章~◆◆◆物語はハッピーエンドが良いよね?◆◆◆
407ページ目…ギルドマスター:ラオンの憂鬱
しおりを挟む<side:ラオン>
魔王でもあり友人でもあり、そしてメルトの町の冒険者でもある『ムゲン』が、長旅を終えやっと帰って来た。
とは言っても、アイツは遥か昔に失われてたとされる『転移魔法』を使いこなす事が出来る事もあり、秘密裏ではあるが、既に何度も戻ってきているので、正直、今更である。
とは言っても、それでも彼等に長旅を強いた者としては、労う必要はあると思う。
だが、それも先程の言葉を聞くまでの事だった。
「はいはい、んじゃ、お土産はポプラさんに渡しておくから、受け取ってくれ。」
お土産…『ムゲン』の言うお土産とは、基本的に食べ物を指す事が多い。
それも、凄く美味しい物…と言う言葉が頭に付くのだ。
故に、アイツからのお土産=美味しい物が喰えると同意語だった。
だが、そこまでは問題がない…だが、問題は、そのお土産を渡す相手である。
受付嬢のポプラ…普段の彼女は、間の抜けた?間延びをした?喋り方をするので有名だが、その実、非常に優秀な女性である。
むしろ、彼女に、この冒険者ギルドのギルドマスターを任せた方が私よりも効率が良いのでは?と思った事が何度あっただろうか…。
但し、そんな彼女にも唯一弱点とも言える問題がある…そう、それは美味しい物に目がないと言う事だ。
もう何ヶ月も前の事になるが、ムゲンがお土産と称してポプラにオークの肉を渡した事がある。
その時、私も少し分けて貰おうとしたのだが、断固、拒否した彼女に殴り倒された経験がある。
これでも私は、引退したとは言え元Aランクの冒険者であり、それなりに強いと思っていたのだが、よもや受付嬢にのされるとは思わなかった。
とは言え、部下の物を分けて貰おうとした私にも非があるので、その時は罰を与える事などはしていない。
否、その様な事をしていては、冒険者ギルドのマスターとして相応しくない行いとして、直ぐにクビになるかもしれないので、与えていないと言うより与える事が出来ないと言った方が正しいだろう。
まぁ、そんな訳で、彼女に美味い物を与える時には、注意が必要なのだ。
それなのに、それなのに…である。
アイツは事もあろうか、俺へのお土産をポプラに預けると言って部屋を出た。
もちろん、その台詞を聞いた瞬間、私は慌てて止める様に言ったのだが…聞こえなかったのか、聞こえないフリをしたのか…。
おそらく、後者だと思われるのだが…。。
まぁ、その事自体は、大した問題ではないので、どちらでも良い。
問題なのは、彼女から、俺のお土産を回収する事が出来るか…だ。
果たして、アイツはどう言って彼女に渡したのか…。
もしも、分ける量が彼女の采配一つで決まるとしたら、私に回ってくる事は『絶対』にないだろう。
その時は、全て、彼女の物となるであろう事は、当ギルドの職員全員が分かっている事である。
ただし、一途の望みもある。
それは…かなり確率が低い事ではあるが、アイツが、ちゃんと誰々の分…と、持ち主を決めて渡す事があるからだ。
その場合、それがどれだけ美味しい物だとしても、彼女は自分の分では無いので『預かり物』として、ちゃんと渡してくれる。
もっとも、その場合は、彼女からお裾分けを催促されるが、その場合は断っても遺恨を残す事はないので安心である。
さて、此処までアレコレ言ったが、覚悟は決まった。
私は自分の執務室を出て、受付の方へと歩いていく。
一歩、また一歩…まるで死刑囚の様な気持ちで歩いていく。
そして、とうとう目的の場所へと到着する。
すると、其処には、アイツからのお土産であろうお菓子を食べているポプラと、他の受付嬢達がいた。
「あ~…その、なんだ…まだ休憩時間じゃない筈なんだが?」
そもそも交代で休憩する事になっているので、一塊になって休憩する事自体、ありえないのだ。
「ス、スイマセン、ギルドマスター!美味しそうなのでつい…。」
「ごめんなさい!ポプラに美味しいからと勧められて…。」
等々、謝ってくるポプラ以外の受付嬢の面々…とは言え、全員、ポプラの所為にするのもどうかと思うのだが?
そして…。
「モゴモゴモガ、モガモゴモガ…。」
「ポプラ君、何言ってるか分からん…食うか、しゃべるかどっちかにしなさい。」
流石に、口の中に入ったまま喋るのは行儀《マナー》が悪いので、注意を促す。
すると、彼女は何を思ったのか…。
「モグモグ…ゴックン、パクッ!」
と、追加で口に入れたではないか…。
「って、何追加で食ってんだッ!?」
美味しい物に目がないと言うのは知っているが、流石にビックリな行動である。
「モグモグ…ゴックン、だって、食べるか喋るかって言われた。
だから、食べてる…もぐもぐ…。」
「そ、そうじゃないだろ!口の中の物を食べ終わるか、きちんと喋るかって意味だろうが!
ってか、何で更に追加で食ってんだ!!」
すると、彼女の周りにいた受付嬢の一人が、苦笑しながら彼女を擁護する。
「まぁまぁ、ギルドマスター…彼女だって悪気があった訳じゃ…。」
何とも仲間思いの受付嬢である。
しかし、それとこれとは話が別である。
「むしろ、悪気がないから質が悪いんだが?」
「「「あははは…。」」」
私のツッコミは、流石にポプラを擁護した受付嬢だけでなく、他の受付嬢に苦笑させるしかなかった様だ。
「それで…私の分はあるのかな?」
どうせ、答えは分かりきっているが、万が一の事があるので、聞いてみる…。
「もちろん無いよ?」
「だろうなッ!!」
食い物…特に、美味しい物が絡んでいるからぁ、しゃべり方が間延びしない。
そもそも、他の受付嬢も一緒になって食べていたのだ。
当然、私の分が残ってるはずがない。
「あ、でも、ギルドマスターにって預かってる物が…。」
そう言って、ポプラは少し大きめな箱を取り出して私に渡してくる。
「えッ!?」
まさか残っているのかッ!?私は少し重い箱を受け取る。
そして、私は恐る恐る、その封を取り除くと蓋を開ける。
すると、其処には彼女達が食べていたお菓子と同じ物が入っていた。
「ま、本気か…アイツ、ちゃんと用意してくれていたんだな…。」
だが、そこまで言って、ふと気がついた…。
私の目の前には、ポプラが居る…ばかりか、周囲には笑顔の他の受付嬢も…。
そして、アイツのお土産の中でもお菓子に関しては、受付嬢にすこぶる評判である。
故に、私は…。
「さ、さらばだッ!!」
と、踵を返し、自分の執務室へと猛ダッシュで逃げ帰る。
「あ、逃げた!追え~!」
ポプラの号令に、ポプラだけではなく他の受付嬢までもが動く。
いや、まて…ポプラはまだしも、他の受付嬢までもが追ってくるって、アイツ、今回のお土産は、いったいどれだけ美味しい物を用意したんだ?
「やめろ、コレは、私のだ~!!」
残念ながら、もう少しで執務室と言う所で、取り押さえられ彼女達にお土産を奪われた私の声が、冒険者ギルドに響き渡たる。
そのやり取りを見ていた、ギルド内にいた冒険者達はと言うと…『あ~ぁ、またやってるよ』と、他人事の様に見ていたのだった…。
追伸:私へのお土産と言う事で、ほんの僅かに残されたお菓子は大変美味しく、彼女達の異常な行動も分からないでもないな…と思う私がいたのだった…。
魔王でもあり友人でもあり、そしてメルトの町の冒険者でもある『ムゲン』が、長旅を終えやっと帰って来た。
とは言っても、アイツは遥か昔に失われてたとされる『転移魔法』を使いこなす事が出来る事もあり、秘密裏ではあるが、既に何度も戻ってきているので、正直、今更である。
とは言っても、それでも彼等に長旅を強いた者としては、労う必要はあると思う。
だが、それも先程の言葉を聞くまでの事だった。
「はいはい、んじゃ、お土産はポプラさんに渡しておくから、受け取ってくれ。」
お土産…『ムゲン』の言うお土産とは、基本的に食べ物を指す事が多い。
それも、凄く美味しい物…と言う言葉が頭に付くのだ。
故に、アイツからのお土産=美味しい物が喰えると同意語だった。
だが、そこまでは問題がない…だが、問題は、そのお土産を渡す相手である。
受付嬢のポプラ…普段の彼女は、間の抜けた?間延びをした?喋り方をするので有名だが、その実、非常に優秀な女性である。
むしろ、彼女に、この冒険者ギルドのギルドマスターを任せた方が私よりも効率が良いのでは?と思った事が何度あっただろうか…。
但し、そんな彼女にも唯一弱点とも言える問題がある…そう、それは美味しい物に目がないと言う事だ。
もう何ヶ月も前の事になるが、ムゲンがお土産と称してポプラにオークの肉を渡した事がある。
その時、私も少し分けて貰おうとしたのだが、断固、拒否した彼女に殴り倒された経験がある。
これでも私は、引退したとは言え元Aランクの冒険者であり、それなりに強いと思っていたのだが、よもや受付嬢にのされるとは思わなかった。
とは言え、部下の物を分けて貰おうとした私にも非があるので、その時は罰を与える事などはしていない。
否、その様な事をしていては、冒険者ギルドのマスターとして相応しくない行いとして、直ぐにクビになるかもしれないので、与えていないと言うより与える事が出来ないと言った方が正しいだろう。
まぁ、そんな訳で、彼女に美味い物を与える時には、注意が必要なのだ。
それなのに、それなのに…である。
アイツは事もあろうか、俺へのお土産をポプラに預けると言って部屋を出た。
もちろん、その台詞を聞いた瞬間、私は慌てて止める様に言ったのだが…聞こえなかったのか、聞こえないフリをしたのか…。
おそらく、後者だと思われるのだが…。。
まぁ、その事自体は、大した問題ではないので、どちらでも良い。
問題なのは、彼女から、俺のお土産を回収する事が出来るか…だ。
果たして、アイツはどう言って彼女に渡したのか…。
もしも、分ける量が彼女の采配一つで決まるとしたら、私に回ってくる事は『絶対』にないだろう。
その時は、全て、彼女の物となるであろう事は、当ギルドの職員全員が分かっている事である。
ただし、一途の望みもある。
それは…かなり確率が低い事ではあるが、アイツが、ちゃんと誰々の分…と、持ち主を決めて渡す事があるからだ。
その場合、それがどれだけ美味しい物だとしても、彼女は自分の分では無いので『預かり物』として、ちゃんと渡してくれる。
もっとも、その場合は、彼女からお裾分けを催促されるが、その場合は断っても遺恨を残す事はないので安心である。
さて、此処までアレコレ言ったが、覚悟は決まった。
私は自分の執務室を出て、受付の方へと歩いていく。
一歩、また一歩…まるで死刑囚の様な気持ちで歩いていく。
そして、とうとう目的の場所へと到着する。
すると、其処には、アイツからのお土産であろうお菓子を食べているポプラと、他の受付嬢達がいた。
「あ~…その、なんだ…まだ休憩時間じゃない筈なんだが?」
そもそも交代で休憩する事になっているので、一塊になって休憩する事自体、ありえないのだ。
「ス、スイマセン、ギルドマスター!美味しそうなのでつい…。」
「ごめんなさい!ポプラに美味しいからと勧められて…。」
等々、謝ってくるポプラ以外の受付嬢の面々…とは言え、全員、ポプラの所為にするのもどうかと思うのだが?
そして…。
「モゴモゴモガ、モガモゴモガ…。」
「ポプラ君、何言ってるか分からん…食うか、しゃべるかどっちかにしなさい。」
流石に、口の中に入ったまま喋るのは行儀《マナー》が悪いので、注意を促す。
すると、彼女は何を思ったのか…。
「モグモグ…ゴックン、パクッ!」
と、追加で口に入れたではないか…。
「って、何追加で食ってんだッ!?」
美味しい物に目がないと言うのは知っているが、流石にビックリな行動である。
「モグモグ…ゴックン、だって、食べるか喋るかって言われた。
だから、食べてる…もぐもぐ…。」
「そ、そうじゃないだろ!口の中の物を食べ終わるか、きちんと喋るかって意味だろうが!
ってか、何で更に追加で食ってんだ!!」
すると、彼女の周りにいた受付嬢の一人が、苦笑しながら彼女を擁護する。
「まぁまぁ、ギルドマスター…彼女だって悪気があった訳じゃ…。」
何とも仲間思いの受付嬢である。
しかし、それとこれとは話が別である。
「むしろ、悪気がないから質が悪いんだが?」
「「「あははは…。」」」
私のツッコミは、流石にポプラを擁護した受付嬢だけでなく、他の受付嬢に苦笑させるしかなかった様だ。
「それで…私の分はあるのかな?」
どうせ、答えは分かりきっているが、万が一の事があるので、聞いてみる…。
「もちろん無いよ?」
「だろうなッ!!」
食い物…特に、美味しい物が絡んでいるからぁ、しゃべり方が間延びしない。
そもそも、他の受付嬢も一緒になって食べていたのだ。
当然、私の分が残ってるはずがない。
「あ、でも、ギルドマスターにって預かってる物が…。」
そう言って、ポプラは少し大きめな箱を取り出して私に渡してくる。
「えッ!?」
まさか残っているのかッ!?私は少し重い箱を受け取る。
そして、私は恐る恐る、その封を取り除くと蓋を開ける。
すると、其処には彼女達が食べていたお菓子と同じ物が入っていた。
「ま、本気か…アイツ、ちゃんと用意してくれていたんだな…。」
だが、そこまで言って、ふと気がついた…。
私の目の前には、ポプラが居る…ばかりか、周囲には笑顔の他の受付嬢も…。
そして、アイツのお土産の中でもお菓子に関しては、受付嬢にすこぶる評判である。
故に、私は…。
「さ、さらばだッ!!」
と、踵を返し、自分の執務室へと猛ダッシュで逃げ帰る。
「あ、逃げた!追え~!」
ポプラの号令に、ポプラだけではなく他の受付嬢までもが動く。
いや、まて…ポプラはまだしも、他の受付嬢までもが追ってくるって、アイツ、今回のお土産は、いったいどれだけ美味しい物を用意したんだ?
「やめろ、コレは、私のだ~!!」
残念ながら、もう少しで執務室と言う所で、取り押さえられ彼女達にお土産を奪われた私の声が、冒険者ギルドに響き渡たる。
そのやり取りを見ていた、ギルド内にいた冒険者達はと言うと…『あ~ぁ、またやってるよ』と、他人事の様に見ていたのだった…。
追伸:私へのお土産と言う事で、ほんの僅かに残されたお菓子は大変美味しく、彼女達の異常な行動も分からないでもないな…と思う私がいたのだった…。
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