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~第七章:魔神復活編~
380ページ目…微かな希望
しおりを挟む「先輩…これは?」
僕から本を受け取った後輩は、まるで胡散臭い物でも見たかの様な眼差しで聞いてくる。
もしかしたら、この時点で、いつもと違う違和感を覚えたのかもしれない。
「まぁ、まずは読んでみてくれ…。」
「はぁ、よく分かりませんが分かりました…。」
その後、後輩は次第に食い入る様に読んでいく。
そして、最後まで読み終わった時…。
「先輩…一応、読み終わりましたけど…。
これって、何かの冗談…と言うか、ネタですか?」
「い、いや…そう言う訳じゃ…。」
誰が好きこのんで、自分を題材にしたフィクションを書かなきゃいけないんだ…と、ツッコミを入れたいのをグッと堪える。
「そう…ですよね?だとしたら、これは事実なんですか?」
正直な話、僕が向こうの世界に旅だってから過ごし成長した時間は、こちらに戻ってくるまでの時間で言うと、僅かに数秒経ったか経たないか…もしかしたら一秒すら経っていないのだ。
そして、向こうに行ったと言う証拠は、残念ながら何一つ無い…そもそも、向こうの世界へ行く前の姿そのままだったからだ。
ただ、唯一違うとすれば、じぃちゃんから送られてきた、空白だった本に、まるで自分が主人公になったかの様に書かれた物語があっただけ…。
まぁ、それだけでも不可思議な現象なのだが、だからと言って、それが現実だったか…と言われると、答えは否である…。
いや、それを言うなら何も書かれていなかったのは勘違いで、最初から書かれていたと言った方が、断然、信じられるだろう。
何故なら、先程も言ったが、向こうの世界で一年以上は過ごした筈の僕自身が変化していないのだから…。
向こうで過ごした時間が全て一時の夢の様に、その全てがなかったかの様に、元に戻ってしまったのだ。
「あ~、うん…僕は、本当の出来事だと思ってる…。
だけど、事実かどうかは…自信がない。」
「そうですか…まぁ、僕の意見としては、やはり先輩は異世界に行っていた…って言う方が、ロマンがありますけどね。
それで…先輩は、これを僕に見せて、いったいどうしろと?
分かってると思いますが、僕には何も出来ませんよ?」
「無茶を言っているのは分かってるんだ…でも、僕は向こうの世界に戻りたい。」
「それは、この本に書かれてるプリンさんの事ですよね?」
「あ、あぁ…もちろん、プリンだけじゃなく、他のみんなも心配だし…。」
魔王との対決中に、僕だけいなくなったのだ…それに、消滅える前にプリンの悲鳴を聞いた。
そして、あの悲しそうな顔も…。
向こうの世界での出来事を本当の事だと思っている僕にとって、それを心配するなと言う方が無理な話だ。
それに…僕達を先に進ませる為に殿を務めたアリス、クズハ、ローラも心配だ。
ついでに言うと、プリンの分裂体のスラポンも…まぁ、スラポンはプリンの眷属みたいだからか、その存在は理不尽な存在だとは思うが、それでも心配は心配だ。
そして…魔王城に残っていた仲間以外の人達も…。
「そうですね…これがライトノベルとかの小説等であれば、先輩は向こうの世界へ戻れる方法があるんじゃないか…とは思います。」
「ほ、本当にッ!?」
「えぇ…何せ、この手の物語と言うのはご都合主義ですから…。
まぁ、その可能性は低いとは思いますが…ですが、この本はまだ未完成ですし…。」
「そ、それは…どう言う事だッ!?」
僕が、本を確認した時には『~fin~』の文字があったのは確認している。
つまり、物語は完結したと言う事を意味する…まぁ、原因は分からない違和感があったが…。
その為、僕は、どうして良いか分からなかったのだが…。
「流石に、僕なんかじゃ、どうやって先輩の望む世界に行けば良いのかなんて分かりませんよ?
ですが、この本のココを見て下さい。」
そう言うと、後輩は僕が渡した本…『異世界冒険記』を僕に見せてくる。
そして、後輩が指差した場所には、ハッキリと『~fin~』の文字が…。
やはり、その文字を見ると、終わってしまったのだと涙が溢れてくる。
「…先輩、大丈夫ですか?」
「ごめん…ちょっと落ち込んでた…。
そ、それで、そのページがどうしたんだ?」
後輩の前で涙を流すのは恥ずかしいが、服の袖で涙を拭き取る。
「先輩、しっかりしてください!
無責任な事言いますが、プリンさん達は、今も先輩が戻ってくるのを待っているんでしょ!」
その台詞に、雷に打たれた様な衝撃を受ける。
そうだ、僕が戻りたいだけじゃないんだ…プリン達だって、僕が戻ってくるのを待っている筈なんだ…。
そう自覚した時、不思議と身体に活力が戻ってくるのを感じた。
こんな所で、一人落ち込んでいる場合じゃない…プリン達が待っているんだ!
まぁ、後輩に言われて自覚するなんて、恥ずかしい話ではあるが…。
『パンッ!』
気合いを入れ直す為、自分の頬を両手で叩く。
こんな事、今まで漫画でしか見たこと無いし、一度だってした事がない為、力加減を思い切り間違えて、かなり痛いが、何故か心地良い。
突然、そんな事をした僕に、砕神が驚いた顔で見ていた。
「スマン!気合いを入れ直した!!」
「え、えぇ…。」
「それで?」
気合いを入れ直した事で、少しだけ前に進めた気がした。
「はい…僕が気になったのは、此処です。」
砕神はそう言うと、改めて開いたページの一箇所を指さす。
そこは先程同様『~fin~』と書かれたページがあり…。
「この次のページです。」
と、指をスーっと移動させ隣のページ…真っ白なページを指差した。
「えっと…空白のページ…だよな?」
「えぇ、そうですね…。」
はて?砕神は、何が言いたいのだろう…まぁ、確かに違和感があるが…。
だが、その答えに、今更ながら気が付く事となる…。
「………あッ!」
「先輩、気が付きましたか?」
「あ、あぁ…『~fin~』って書いてるにも関わらず、空白のページが、まだ何枚も残ってるよなッ!!」
こちらの世界に戻ってきた事が、余程、ショックだったのだろう…。
確かに、何かしらの違和感はずっと感じていた…だが、それが何か分からなかった。
だが、今、それがようやく分かった様な気がする…。
「えぇ、そうです!これが本当に『本』であるのなら、一番最後のページに『~fin~』と書かれているはずです。
だけど、この『本』には、まだまだ十分な余白がありますよね?
つまり…この『本』は『~fin~』と書かれているにも関わらず、完結してない筈なんです。
ならば、先輩には、この『異世界冒険記』を完結させる義務があるはずです!」
「あ、あぁ…だけど、どうやって?」
確かに、僕が主人公であるならば、バッドエンドよりもハッピーエンドで物語を終了させたい。
「さぁ?そこまでは知りませんよ?
ですが、先輩…この『本』は、いったいどうやって手に入れたんですか?」
「え?それは…死んだじぃちゃんが、誕生日プレゼントとして送って…。」
そこまで言った時、ふと思い出した事がある…。
「…違う、この『本』は、昔、じぃちゃんの家の倉庫の中で僕が見付けたんだ…。」
「そうですか…でしたら、先輩が戻るヒントは、そこにあるかも知れませんね。」
「おう!砕神、サンキューな!」
「えぇ、気を付けて…。」
一人で悩むのではなく、親友とも呼べる砕神に相談して良かった。
問題が解決した訳ではないが、少なくとも微かな希望が出て来たのは確かだ。
僕は砕神にお礼を言うと、『異世界冒険記』を手に、じぃちゃんの…いや、ばぁちゃんの家に向かったのだった…。
◇◆◇◆◇
<side:砕神《後輩》>
今日、遊ぶ約束をしていた語部先輩が、家を訪ねてきた。
しかし、様子のおかしい先輩に、何時もよもおかしい事に気が付く…。
そう思った矢先、いきなり『本』を渡され、読めと言われる事となる。
まぁ、読書は好きなので読んでみると、そこには先輩が主人公の物語が描かれていた。
最初は何のネタだ?と思ったが、読み続けると、幾つか違和感がある事に気付く。
読み始めた時は先輩が書いたのだと思ったが、それにしては変なのだ。
まるで、誰かがずっと先輩を見ていて、それを元に物語として書いた様な文章なのだ。
そして、もっとも奇妙だったのが『~fin~』と書いているにも関わらず、となりのページは白紙と言う事。
ただでさえ、あまりにも中途半端な終わり形だと言うのに、まだまだ余白のページが何枚も残っていた事が印象深い。
その事を、指摘する前に、僕は先輩に、この『本』に書かれている事を先輩に尋ねた。
すると、先輩は…。
「あ~、うん…僕は、本当の出来事だと思ってる…。
だけど、事実かどうかは…自信がない。」
と返事をした。
まぁ、こんな与太話を、即答で本当だと言う様なヤツは、頭のネジが1~2本緩んでいるに違いないと思う。
だが、そんな先輩の顔は真剣そのもの…故に、僕は真実なのだ確信する事が出来た。
その為、余白の事と、『本』の入手先を確認した。
「…違う、この『本』は、昔、じぃちゃんの家の倉庫の中で僕が見付けたんだ…。」
「そうですか…でしたら、先輩が戻るヒントは、そこにあるかも知れませんね。」
「おう!砕神、サンキューな!」
「えぇ、気を付けて…。」
先輩が慌てて出こうとするから、反射的に気を付けてと言ってしまう。
だけど…。
「先輩、今日、遊びに来たんじゃ…。」
あちらの世界に行く為のヒントが見付かったからか、先輩は慌てて僕の家を飛び出していく。
そんな先輩の後ろ姿を見送りながら、僕はそう呟いた。
まぁ、僕が先輩と同じ立場なら、同じ様に飛び出したと思うから、今回は許してやろうと思う。
先輩は先程言っていた『本』の入手先である祖父母の家へと向かって行ったのだと思う。
それから、数日が過ぎ、僕はある事に気が付いた…。
それは、僕以外に、誰も先輩の事を覚えていないと言う事を…そう、先輩のご両親さえも…。
何とも悲しい事ではあるが、その代わり、僕は一つだけ確信した事がある。
それは…。
「先輩、戻れたんですね…大変でしょうけど、頑張って下さい。
僕は力に慣れませんが、プリンさん達を助け、幸せになれる事だけは祈っていますね…。」
何気なく呟いた言葉だが、何故か、先輩に届いた気がしたのだった…。
僕から本を受け取った後輩は、まるで胡散臭い物でも見たかの様な眼差しで聞いてくる。
もしかしたら、この時点で、いつもと違う違和感を覚えたのかもしれない。
「まぁ、まずは読んでみてくれ…。」
「はぁ、よく分かりませんが分かりました…。」
その後、後輩は次第に食い入る様に読んでいく。
そして、最後まで読み終わった時…。
「先輩…一応、読み終わりましたけど…。
これって、何かの冗談…と言うか、ネタですか?」
「い、いや…そう言う訳じゃ…。」
誰が好きこのんで、自分を題材にしたフィクションを書かなきゃいけないんだ…と、ツッコミを入れたいのをグッと堪える。
「そう…ですよね?だとしたら、これは事実なんですか?」
正直な話、僕が向こうの世界に旅だってから過ごし成長した時間は、こちらに戻ってくるまでの時間で言うと、僅かに数秒経ったか経たないか…もしかしたら一秒すら経っていないのだ。
そして、向こうに行ったと言う証拠は、残念ながら何一つ無い…そもそも、向こうの世界へ行く前の姿そのままだったからだ。
ただ、唯一違うとすれば、じぃちゃんから送られてきた、空白だった本に、まるで自分が主人公になったかの様に書かれた物語があっただけ…。
まぁ、それだけでも不可思議な現象なのだが、だからと言って、それが現実だったか…と言われると、答えは否である…。
いや、それを言うなら何も書かれていなかったのは勘違いで、最初から書かれていたと言った方が、断然、信じられるだろう。
何故なら、先程も言ったが、向こうの世界で一年以上は過ごした筈の僕自身が変化していないのだから…。
向こうで過ごした時間が全て一時の夢の様に、その全てがなかったかの様に、元に戻ってしまったのだ。
「あ~、うん…僕は、本当の出来事だと思ってる…。
だけど、事実かどうかは…自信がない。」
「そうですか…まぁ、僕の意見としては、やはり先輩は異世界に行っていた…って言う方が、ロマンがありますけどね。
それで…先輩は、これを僕に見せて、いったいどうしろと?
分かってると思いますが、僕には何も出来ませんよ?」
「無茶を言っているのは分かってるんだ…でも、僕は向こうの世界に戻りたい。」
「それは、この本に書かれてるプリンさんの事ですよね?」
「あ、あぁ…もちろん、プリンだけじゃなく、他のみんなも心配だし…。」
魔王との対決中に、僕だけいなくなったのだ…それに、消滅える前にプリンの悲鳴を聞いた。
そして、あの悲しそうな顔も…。
向こうの世界での出来事を本当の事だと思っている僕にとって、それを心配するなと言う方が無理な話だ。
それに…僕達を先に進ませる為に殿を務めたアリス、クズハ、ローラも心配だ。
ついでに言うと、プリンの分裂体のスラポンも…まぁ、スラポンはプリンの眷属みたいだからか、その存在は理不尽な存在だとは思うが、それでも心配は心配だ。
そして…魔王城に残っていた仲間以外の人達も…。
「そうですね…これがライトノベルとかの小説等であれば、先輩は向こうの世界へ戻れる方法があるんじゃないか…とは思います。」
「ほ、本当にッ!?」
「えぇ…何せ、この手の物語と言うのはご都合主義ですから…。
まぁ、その可能性は低いとは思いますが…ですが、この本はまだ未完成ですし…。」
「そ、それは…どう言う事だッ!?」
僕が、本を確認した時には『~fin~』の文字があったのは確認している。
つまり、物語は完結したと言う事を意味する…まぁ、原因は分からない違和感があったが…。
その為、僕は、どうして良いか分からなかったのだが…。
「流石に、僕なんかじゃ、どうやって先輩の望む世界に行けば良いのかなんて分かりませんよ?
ですが、この本のココを見て下さい。」
そう言うと、後輩は僕が渡した本…『異世界冒険記』を僕に見せてくる。
そして、後輩が指差した場所には、ハッキリと『~fin~』の文字が…。
やはり、その文字を見ると、終わってしまったのだと涙が溢れてくる。
「…先輩、大丈夫ですか?」
「ごめん…ちょっと落ち込んでた…。
そ、それで、そのページがどうしたんだ?」
後輩の前で涙を流すのは恥ずかしいが、服の袖で涙を拭き取る。
「先輩、しっかりしてください!
無責任な事言いますが、プリンさん達は、今も先輩が戻ってくるのを待っているんでしょ!」
その台詞に、雷に打たれた様な衝撃を受ける。
そうだ、僕が戻りたいだけじゃないんだ…プリン達だって、僕が戻ってくるのを待っている筈なんだ…。
そう自覚した時、不思議と身体に活力が戻ってくるのを感じた。
こんな所で、一人落ち込んでいる場合じゃない…プリン達が待っているんだ!
まぁ、後輩に言われて自覚するなんて、恥ずかしい話ではあるが…。
『パンッ!』
気合いを入れ直す為、自分の頬を両手で叩く。
こんな事、今まで漫画でしか見たこと無いし、一度だってした事がない為、力加減を思い切り間違えて、かなり痛いが、何故か心地良い。
突然、そんな事をした僕に、砕神が驚いた顔で見ていた。
「スマン!気合いを入れ直した!!」
「え、えぇ…。」
「それで?」
気合いを入れ直した事で、少しだけ前に進めた気がした。
「はい…僕が気になったのは、此処です。」
砕神はそう言うと、改めて開いたページの一箇所を指さす。
そこは先程同様『~fin~』と書かれたページがあり…。
「この次のページです。」
と、指をスーっと移動させ隣のページ…真っ白なページを指差した。
「えっと…空白のページ…だよな?」
「えぇ、そうですね…。」
はて?砕神は、何が言いたいのだろう…まぁ、確かに違和感があるが…。
だが、その答えに、今更ながら気が付く事となる…。
「………あッ!」
「先輩、気が付きましたか?」
「あ、あぁ…『~fin~』って書いてるにも関わらず、空白のページが、まだ何枚も残ってるよなッ!!」
こちらの世界に戻ってきた事が、余程、ショックだったのだろう…。
確かに、何かしらの違和感はずっと感じていた…だが、それが何か分からなかった。
だが、今、それがようやく分かった様な気がする…。
「えぇ、そうです!これが本当に『本』であるのなら、一番最後のページに『~fin~』と書かれているはずです。
だけど、この『本』には、まだまだ十分な余白がありますよね?
つまり…この『本』は『~fin~』と書かれているにも関わらず、完結してない筈なんです。
ならば、先輩には、この『異世界冒険記』を完結させる義務があるはずです!」
「あ、あぁ…だけど、どうやって?」
確かに、僕が主人公であるならば、バッドエンドよりもハッピーエンドで物語を終了させたい。
「さぁ?そこまでは知りませんよ?
ですが、先輩…この『本』は、いったいどうやって手に入れたんですか?」
「え?それは…死んだじぃちゃんが、誕生日プレゼントとして送って…。」
そこまで言った時、ふと思い出した事がある…。
「…違う、この『本』は、昔、じぃちゃんの家の倉庫の中で僕が見付けたんだ…。」
「そうですか…でしたら、先輩が戻るヒントは、そこにあるかも知れませんね。」
「おう!砕神、サンキューな!」
「えぇ、気を付けて…。」
一人で悩むのではなく、親友とも呼べる砕神に相談して良かった。
問題が解決した訳ではないが、少なくとも微かな希望が出て来たのは確かだ。
僕は砕神にお礼を言うと、『異世界冒険記』を手に、じぃちゃんの…いや、ばぁちゃんの家に向かったのだった…。
◇◆◇◆◇
<side:砕神《後輩》>
今日、遊ぶ約束をしていた語部先輩が、家を訪ねてきた。
しかし、様子のおかしい先輩に、何時もよもおかしい事に気が付く…。
そう思った矢先、いきなり『本』を渡され、読めと言われる事となる。
まぁ、読書は好きなので読んでみると、そこには先輩が主人公の物語が描かれていた。
最初は何のネタだ?と思ったが、読み続けると、幾つか違和感がある事に気付く。
読み始めた時は先輩が書いたのだと思ったが、それにしては変なのだ。
まるで、誰かがずっと先輩を見ていて、それを元に物語として書いた様な文章なのだ。
そして、もっとも奇妙だったのが『~fin~』と書いているにも関わらず、となりのページは白紙と言う事。
ただでさえ、あまりにも中途半端な終わり形だと言うのに、まだまだ余白のページが何枚も残っていた事が印象深い。
その事を、指摘する前に、僕は先輩に、この『本』に書かれている事を先輩に尋ねた。
すると、先輩は…。
「あ~、うん…僕は、本当の出来事だと思ってる…。
だけど、事実かどうかは…自信がない。」
と返事をした。
まぁ、こんな与太話を、即答で本当だと言う様なヤツは、頭のネジが1~2本緩んでいるに違いないと思う。
だが、そんな先輩の顔は真剣そのもの…故に、僕は真実なのだ確信する事が出来た。
その為、余白の事と、『本』の入手先を確認した。
「…違う、この『本』は、昔、じぃちゃんの家の倉庫の中で僕が見付けたんだ…。」
「そうですか…でしたら、先輩が戻るヒントは、そこにあるかも知れませんね。」
「おう!砕神、サンキューな!」
「えぇ、気を付けて…。」
先輩が慌てて出こうとするから、反射的に気を付けてと言ってしまう。
だけど…。
「先輩、今日、遊びに来たんじゃ…。」
あちらの世界に行く為のヒントが見付かったからか、先輩は慌てて僕の家を飛び出していく。
そんな先輩の後ろ姿を見送りながら、僕はそう呟いた。
まぁ、僕が先輩と同じ立場なら、同じ様に飛び出したと思うから、今回は許してやろうと思う。
先輩は先程言っていた『本』の入手先である祖父母の家へと向かって行ったのだと思う。
それから、数日が過ぎ、僕はある事に気が付いた…。
それは、僕以外に、誰も先輩の事を覚えていないと言う事を…そう、先輩のご両親さえも…。
何とも悲しい事ではあるが、その代わり、僕は一つだけ確信した事がある。
それは…。
「先輩、戻れたんですね…大変でしょうけど、頑張って下さい。
僕は力に慣れませんが、プリンさん達を助け、幸せになれる事だけは祈っていますね…。」
何気なく呟いた言葉だが、何故か、先輩に届いた気がしたのだった…。
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