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~第七章:魔神復活編~

327ページ目…魔族領、探索開始

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「まさか、本当にお二人で砦を落としてしまうとは…。」

 とは、冒険者ギルドの暗部所属、レスターさんの言だ。
 砦の中に、あまり魔族が多くなかったとは言え、上級魔族も居たのだから驚く事は無理からぬ事。

「これで、ひとまずはファナル砦への侵攻は収まるかと思います。
 なので、予定通り僕達・・は、このまま先行していこうかと思います。」

 要は、邪魔だから付いてくるな…と、言っている訳だ。

「そうですか…本来なら監視対象である貴方方あなたがたを先行させると言うのは承認出来ないんですが、既に、我々の力だけでは付いて行く事すら難しい訳ですから仕方ありませんね…。
 良いでしょう、我々は、こちらの砦を拠点とするべく動く事にしましょう。
 ただ、出来る事なら、こちらに定期的に報告に来て頂けると助かります。」
「そうですね…可能だったら・・・・・・報告に来る、と言う事で良ければ、僕達も異存はありません。」

 そう、可能なら…とは、便利な言葉だ。
 まったく、その気がなく報告に来なくても、可能じゃなかったと言えばそれまでの話なのだ。
 もっとも、そんなのはレスターさんだって分かっている…故に…。

「はぁ~、可能ならって…絶対、報告しに来るつもり無いですよね?
 まぁ、我々では貴方方に付いて行くだけですら厳しい状況ですから、それはそれで仕方がない訳ですが…。」
「そうですね…正直、何度見捨てようかと思ったか…。」
「いや~見捨てられなくて良かったですよ、ハッハッハッハッ………って、冗談ですよね?」
「えぇ、嫁~ズはともかく、僕は・・見捨てる気はなかったですよ?」

 もっとも、嫁~ズ彼女達は僕の意志を尊重してくれる為、レスターさん達を見捨てると選択肢は、絶対に無いと言えるだろう。
 まぁ、僕自身、内心では見捨ててしまえば良いのにと思ったとしても…だ。

「そ、そうですか…本当に助かりました…。
 ま、まぁ、それはともかく…話を戻しますが、先程も言いましたが、我々はこの砦を魔族領攻略の為の拠点とする為に動こうと思います。
 流石に今すぐに…とは無理でしょうが、ファナル砦の冒険者達や軍隊も、敵の動きが緩やかになったいるはずなので、そろそろ動き出すはずです。」
「なるほど…出発前、何を話していたのかと思えば、そう言う事でしたか…。」
「えぇ…まぁ、これほど早く敵の砦を落とす事が出来るとは思いませんでしたが…。
 とは言え、彼等が動き出しすとなれば十分な装備を整えてからのはず…そうなれば、途中の下級魔族《レッサーデーモン》達を各個撃破してこちらに来るでしょう。」

 ふむ…でも、それでも少なくとも数日は掛かるはず…。

「その間、レスターさん達だけで大丈夫なんですか?」
「えぇ、十全で大丈夫とは言えませんが、これでも私達は隠密行動が得意ですから…レッサーデーモン数体程度であれば余裕ですし、十数体でも何とか…。」
「それ以上だったら?」
「その時は、迷わず諦めて逃げますよ。」
「………プッ!」

 即答で逃げると言うレスターさんの答えに、思わず唖然としたが、確かに行く残るのには最善の手だと思った。
 冒険者なら、まずは自分達の命を優先すると言うのは、当然の行動だなと思ったら、つい笑ってしまった。

「はて?今の答えに笑う所なんてありましたか?」
「いや、そう言う訳じゃないんですが…ただ、あまりにも当たり前の答えだったんで…。
 レスターさん達、暗部の方だと、てっきり、死んでも守る…とか言うタイプと思っていた物で…。」
「いやいやいや、私達は軍隊じゃなく冒険者ですよ?
 幾ら私達が暗部に所属していたとしても、冒険者は冒険者…。
 それこそ、軍隊みたいに名誉だなんだと言うしがらみに縛られないからこそです。
 そもそも、冒険者は何の保障もない…それ故、生き残ってこそ・・・・・・・、なんぼでしょ?」

 と、冒険者にとって一番大事な『生き残る』の部分を強調する様な返事が返ってくる。

 あぁ、そうか…僕がレスターさん達を見捨てないと決めたのは、単に見捨てたくないと思う他に、冒険者なのだから、こんな所で死ぬんじゃない!絶対に生き残るんだ!と思っていたのかも知れない。
 ならば、レスターさん達は無理をせずに引き際を間違う事もないだろう。

 僕は〖無限庫インベントリ〗から初級の回復薬…ポーションを何本か取り出すとレスターさんに渡す。
 もちろん、取り出す際は肩掛け鞄ショルダーバッグから取り出して、〖無限庫〗の存在は隠している。

「これは…ポーションじゃないかッ!?貰って良いのかい?」
「えぇ、でもポーションとは言え初級の回復薬ですから、大怪我をしたら効かないので注意して下さいね?」
「あぁ、それでも生き残る可能性が増えるのはありがたい。」

 正確には、初級のポーションだろうが大怪我だからと言って効かない訳ではない。
 ただ、回復量に対して怪我が酷くて、所謂、焼け石に水…と言った状態になるだけの事。
 とは言え、運が良ければ、致命傷だった傷が致命傷じゃなくなる事だってあるのだ。

 それに、確かに渡したのは初級のポーションだ…が、一言で初級と言ってもピンキリだ。
 中級の回復薬とほぼ同じほどの品質があったしても、鑑定の結果、初級と明記されていれば初級なのだ。

 中級ポーションの品質が著しく悪い物と初級ポーションの高品質…はたして、どちらが良い物か…と言われたら、場合によっては初級の方に軍配が上がる事もあるのだ。
 そして、高品質の初級ポーションと言うのは一般的には市場に出回らない。
 何故なら、その品質が当たり前だと思われたら低品質の物が売れなくなるからだ。

 そう言う意味では、僕が渡した初級ポーションは高品質だったりする。
 また、それらは自分で作った物だし、一般的には出回る事がない品だったりする。
 とは言え、それを説明するつもりは、さらさらない。

「それで…君達はもう行くのか?」

 と、レスターさんが聞いてくる。

「えぇ、これでも忙しい身なので…ね。」
「そうか…なら、君達も無理をせずに、再び必ず生きて会おう!」

 そう言ってレスターさんが右手を差し出してくる。
 だが、僕はその手を握り返す事はなかった…何故なら…。

「レスターさん、僕達は冒険者ですよ?」

 そう言って、僕は握り拳を前へと出す。

「あぁ、そうだったね…これは一本取られたね。」

 レスターさんはそう言うと拳を握り、僕の拳と合わせた。
 そう、これこそが冒険者流の…再び会おうと言う別れの挨拶なのだから…。

◇◆◇◆◇◆◇

 それから直ぐに僕達は砦を後にした。

 とは言え、行く宛がある訳ではない。
 元々、僕達の住んでいた領土は魔族領とはあまり交流が少ない土地なのだ。

 その為、どこに村や町があるか知る機会が殆どなかったのだ。
 それ故、魔族領の地図と言う物を手に入れる事が出来なかったのだ。

「で…みんな、どっちに行く?」

 レスターさん達の前では格好を付ける様にしていた。
 当然、別れる時に格好を付けたのだが、嫁~ズ達の前では、情けない姿も平気で見せる。
 そもそも、僕の嫁達は、そんな事で僕の評価を落とす事はしない。

「そうですね…それなら、こんなのはどうでしょう?」

 プリンはそう言うと、僕達に思い付いた事を教えてくれたのだった…。
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