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~第七章:魔神復活編~

320ページ目…同士討ち

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 次の日の朝…僕達は、朝早くから出発するはずだったのだが予定を遅らせた。
 と、言うのも…。

「しっかし、下級魔族レッサーデーモンばかりとは言え、流石に本気マジで洒落にならない位、長い行列だよな…。」

 そう、アリスの張った人払いの結界のお陰で、下級魔族や魔物は寄りつかなくなってはいる物の、朝からずっと、魔族領から流れてきているのだ。
 そして、朝からずっと僕達の目の前を、此処には何も無いと言わんばかりに通り過ぎて行くのである。
 もっとも、気が付かれないのは、人払いの結界が、ちゃんと機能しているからだから文句はないのだが…。

ご主人様あなた、何時まで待つつもりなんですか?」
「さ、さぁ?本当に何時までなんだろうね…。」

 プリンの問いかけに、僕は頬を掻きながら答える…。
 正直、ここまで長い行列が出来るとは思っていなかった。
 余談ではあるが、人払の結界の所為で、魔物達が通る道が狭くなる為、この場所で渋滞を起こしている原因だったりもする。

「あ、あの…ご主人様あなた、私達だけ先に進むのはどうですか?
 私達だけ・・・・なら、わざわざ待たなくても良いと思うのですが…。」
「ま、まぁ、それは否定はしないけどさ…それをすると、彼等を見殺しにする様な物だからね?
 正直、監視されているとは言っても、寝覚めが悪いと言うか何と言うか…。
 そもそも、彼等だけで、これほどの人払いの結界を張れるとは思えないし、ほったらかしで移動したら、全滅する可能性だってあるんだよ?」

 まぁ、確かにクズハの言う通り、僕達だけなら問題なく魔族領まで行けるだろう。
 多少の怪我をする可能性リスクもあるが、それでも軽傷程度の怪我で済むだろうと僕は考えている。
 ただし、先程も言ったが、彼等だけでこれほどの人払いの結界は張れそうにない。

 つまり、僕達が移動すると言う事は、彼等は敵のまっただ中に置き去りにされ『飛んで火に入る夏の虫』よろしく、殆どの者がレッサーデーモン達に殺される事になるだろう…。

あなた…所詮、弱肉強食。」
「ローラさん、御主人様の言っているのは、そう言う事ではありませんよ?
 御主人様が心配してるのは、彼等もまた私達と同じ冒険者仲間と言う事です。
 まぁ、もっとも、彼等は冒険者ギルドの暗部ですけど…。」

 そう…彼等は同じ冒険者とは言っても、彼等の立場は運営側…自己責任の冒険者と違い、冒険者ギルド側なのだ。
 僕達みたいに冒険者側ではない…しかも、暗部なのだから命を失う覚悟は常日頃から覚悟しているはずだ。
 でも…さ、だからと言って、こんな場所で犬死にする必要はないと思うんだよね。
 だから、これは俺の我儘わがままだ…。

「みんな、ゴメン…それでも、僕は彼等を見捨てたく無いんだ…。」

 そう言って、嫁~ズに頭を下げる。

「はいはい…どうせ、ご主人様あなたならそう言うと思って、みんな待ってるんだから気にしなくて良いわよ?
 ただ…ね、この数のレッサーデーモンがファナル砦に向かうのって、大丈夫なのかしら?」
「そ、それは…大丈夫だと信じたい…。」

 そもそも、ファナル砦には、冒険者達だけでは無く、れっきとした軍隊が居るからだ…。

「で、でも…物語か何かだと…ちょっとしたトラブルが起きて、ピンチになってますよね?」

 と、クズハが身も蓋もない事を言う。
 でも、それって所謂、フラグと言うヤツだから、なるべく言わない様にしようね?
 そんなフラグを回避する為に、僕は一つの行動に出る…。

「空と大地をたゆたいし、数限りない闇の精…我が魔力マナ持ちて、力と為せ…〖魔法:闇の迷宮ダーク・ラビリンス〗ッ!!」

 目標は、遙か後方…今現在、魔王領を目指している為、この場合、後方と言うのは既にかなり前に通過したレッサーデーモン達である。
 そして僕が使った魔法は、文字通り闇を利用した迷宮を作り出す魔法である。
 もっとも、本当に迷宮を作り出す訳ではない。
 その効果は、視界を塞ぐだけではなく方向感覚を失わせる事により迷宮とする事だ。

 その為、真っ直ぐ進んでいるつもりでも、実際は左に進んだり右に進んだりしていると言う訳だ。
 そして、このレッサーデーモン達は、魔物レベルまで弱体化している魔族の為か、基本的に頭は良くない…。
 その為、視界を塞がれ、行動の邪魔をされたレッサーデーモン達は、その闇を払おうと攻撃魔法を放ったのだ。

『チュドドドドーンッ!』

 当然、攻撃魔法を放ったレッサーデーモン達は方向感覚が狂っている状態で攻撃している。
 それ故、闇の中から放たれた攻撃魔法は、正しい方向へ飛ばず、周囲目掛けて飛んでいく。
 偶然にも真っ直ぐ、進行方向であるファナル砦へ飛んでいく物、それとは反対に、後続へ向けて飛んでいく物…。
 中には、闇の中で、仲間へと飛んでいく物…と、あちこちから、魔法による爆発が起こる。
 その結果、後続のレッサーデーモン達は、闇の中のレッサーデーモン達を敵と認識した様で、一斉に闇の中へと攻撃魔法を放つ事となる。

「チュドーーーーーンッ!!」

 その強力な攻撃力により、闇は霧散する。
 もっとも、その爆発が無くても、既に役目を終えた魔法は解除しているので、少ししたら消滅えていただろうが…。
 とは言え、闇の中に攻撃を放ったのがレッサーデーモンなら、攻撃されたのもレッサーデーモンだ。
 その為、攻撃を喰らった方のレッサーデーモン達が、攻撃した方のレッサーデーモンへ反撃に出る。

『チュドーン!チョドドドーン!ドッカーン!』

 もうもうと立ち上がる爆発と煙…それを見た僕は…。

「よし、これで少しは戦力が減っただろ…。」

 と、若干、予想していた以上の効果に、冷や汗を流しながら、僕はポーカーフェイスで何事もなかった様に軽く言う。
 すると…プリンが続けて答えてくれた。

「そうですね、それに今の騒ぎでレッサーデーモン達の動きが変わって道が空きました。
 今なら、この場を抜け出せると思います。」
「では、これから強行突破…ですね?」

 ゴクリッと喉を鳴らし、レスターさんが僕に聞いてくる。
 ちょッ!?この人、何時の間に側まで来たんだ!?

「え、えぇ、同士討ちをしている今がチャンスです。
 何処まで進めるかは分かりませんが、このまま一気に魔族領を目指します。
 ですので…そちらは準備は良いですか?」
「あぁ、我々の所為で、色々とスマン…こちらは準備完了だ。」

 そう…今の騒ぎの所為で、レッサーデーモン達の動きに変化が生じ、道が空いたのだ。
 故に、僕は嫁~ズ達を見る…それだけで理解したのか、みんなは一回肯くと、すぐに行動に移る。
 そして、僕達とレスターさん達のチームの準備が完了する。

「総員、全速力で魔族領まで駆け抜けるつもりで移動を開始!
 ただし、くれぐれも隠密の魔法の制御を失わない様にしろッ!!」

 響き渡るレスターさんの声、それを合図に人払いの結界から、勢いよく飛び出す。
 目指すは魔族領…普通に考えて魔族領まで辿り着くかは分からないが、出来るだけ距離を稼ぎたいので、少し無理をする事になるだろう。
 それでも、僕は嫁~ズだけは守り抜いてみせる…そう、覚悟して魔族領へ向けて走り出したのだった…。
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