~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

文字の大きさ
上 下
309 / 421
~第七章:魔神復活編~

309ページ目…置き土産

しおりを挟む
「あら、お客さん、おはようございます♪
 昨晩は、しっかり休めれましたか?」

 そう言ってきたのは、この宿屋の女将さんだ。

 昨日、何故か町の食堂で、偶然、ビビンバを作ったら、それを見ていた他のお客さんから注文を受ける事となってしまい、その美味しさから食べたお客が他の客を呼ぶと言う。負のスパイラルを生んだ為、僕達のお休みは料理を作るだけで潰れてしまった。
 しかも、その数、なんと200杯以上…もちろん、面倒だし作りたくないからと、1杯、銀貨1枚(約1万円)とボッタクリ価格にしたのにも関わらずの結果だ。
 その為、材料が切れて作れなくなるまで作り続けた結果…称号に〖異世界料理人〗なんて名前の称号が追加されていた。
 まぁ、確かにこっちの世界には無かった料理みたいだが、料理人は流石に違うんじゃないかな?と思う。

 話を戻そう、明るい挨拶してきた女将さん、今日は、昨日や一昨日と違い何故かルンルン気分で作業している。
 更に言うなら、肌の艶が2割ほど良くなっている気もする。
 そして、大将…旦那さんは言うと…。

「や、やぁ、おはようございます…。」

 お疲れモードと言うか…少しやつれたか?

「あの…大将、何か疲れてませんか?
 何だったら、初級の回復薬ポーションを差し上げましょうか?」

 まぁ、わざわざポーションを使わなくても、回復魔法で失った体力スタミナは回復できるのだが…。

「ははは、気持ちだけ頂くよ。
 なぁーに、昨日、ちょっと激しい戦闘があって、気力が減ってるだけで怪我をしたとかじゃないから、心配はいらないよ…。」

「せ、戦闘…ですか…。
 そう言えば、女将さん…今日は肌の調子が良さそうですね?」

 既に何がどうなっているのか予測が付いた僕は、あえて、大将に聞いてみる。

「まぁ、あれだけすれば…いや、なんでもない。
 そんな事より、今日、出立するんだったな?」
「はい…正直、行きたくない気持ちはありますが、それでも、こればかりは絶対に行かないとダメなんで…。」
「そうか…実はちょっと頼みがあってな…。
 まぁ、俺には良く分からんが…女房にょうぼうのヤツが、あんたにお世話になったからって、弁当を作って渡すと言っていたから、それが出来るまで、出立を待って貰えると助かるんだが…。」

 と、言ってきた。
 どうやら、秘密のプレゼント媚薬のお返しに、女将さんがお弁当を用意してくれる様だ。

「何だ、そんな事でしたら構いませんよ。」

 むしろ、道中での食事の確保が出来るのは良い事だ。
 それに、昨日消費した食材も買い足さないと、万が一を考えると心配になる。
 とは言っても、普通に生活したとしても一月分以上は暮らせる程の食材は〖無限庫インベントリ〗に貯蓄してあるので、それほど重要ではない。
 もっとも、一月分の食材以外にも、色々なドロップ品や装備品、その他の素材やらも大量に入っている訳で…それらを、何の苦労もなく持ち運べるのだから、〖無限庫〗とは本当に便利な物だと改めて思う。

「そう言えば、大将…昨日、僕達が近くの食堂で料理作ったのは知ってますよね?」
「ん?あぁ、何でも…野菜とかの食材は大した事がないのに、病み付きになる程、美味い辛さの料理だとか…。」

 やはり、アレだけの騒ぎになったからか、この宿屋にも話が伝わってしまった様だ。

「えぇ、それで…その料理、この宿屋でも出したいと思いませんか?」
「な、何だってッ!?」

 正直、この宿屋は大したサービスもない…どちらかと言うと二流どころか、三流の宿屋である。
 だが、雰囲気に関しては、個人的に三流の宿屋とは言え、とてつもなく過ごしやすい宿屋だと思う。
 その為、もしも、再びこの町に来る事があるのならば…また、この宿屋にしようと思う程の安心感等がある。
 もちろん、それは嫁~ズ達、全員も同じで…その為、ハメを外したとも言える。
 なので、その迷惑料お礼として、ちょっとした置き土産を…と思ったのだ。

「だ、だが…昨日、聞いた話では銀貨1枚の値段だと聞いたが?」
「あ~、ぶっちゃけちゃいますけど、本当は作りたくないからって事で、思いっ切りボッタクったんですよ。
 それなのに、それでも良いからと…まぁ、客の殆どが冒険者だったから、それなりに稼いでた人達なんでしょうけど…。」
「ははは…たしかに、ぶっちゃけちゃってるな。
 で、それを俺に教えて、どうしろと?」
「いえ、お世話になったお礼ですよ。
 それに…もし、儲けがいっぱい出たのなら、今度来た時にでも還元して頂ければ…。」
「つまり、宿代をまけろと?」

 まぁ、再び、この町に来る事があるか?と聞かれたら、来る可能性は殆ど無いのだが…。

「えぇ、それなら大将も気兼ねする事もないでしょ?」
「なるほど…な、まぁ、良いだろ。」

 大将は、少し悩むと直ぐに了承する。

「なら、これを…。」

 僕はそう言うと、懐にしまってあった紙を大将に渡す。

「これは?」
「僕が作った『ビビンバ』のレシピですよ。
 まぁ、僕の故郷では大銅貨1枚(約千円)程で食べる事が出来る料理ですけどね?
 ただ、昨日の様子を見ると大銅貨2~3枚でも、喜んで食べる人がいそうですが…。」

 と、大将に説明する。
 まぁ、正直な話、大銅貨1枚でも少し高目なのだが、それに関しては、慣れない内は、手間がかかるからと手間賃を多めに上乗せしていたりする。

「大銅貨2~3枚…また、大きく出たな。
 とは言え、昨日は銀貨1枚だったって話だから、あながち間違ってないな。
 むしろ、ここは大銅貨5枚でも良いんじゃないか?」
「いえ、それは流石に取り過ぎですね。
 そもそもな話、先程も言いましたが、僕の故郷で大銅貨1枚ですよ?
 それでも、ちょっと高いな…と思うほどの料理です。
 ですから、あまり高くすると最初は物珍しさもあり良いかもしれませんが、直ぐに誰も食べなくなり、結果、売れなくなるのは明白。
 だったら…少し高いけど、ちょっと贅沢しようか?って思える程度で抑え解いた方がリピーターも増え、結果として儲ける事が出来るんです。」
「なるほど…確かに、短期間だけの販売なら高くても…と思うが、恒久的に売るのなら、値段を下げておくのは常識か…。」
「えぇ、それに…この宿屋なら、ビビンバそれが食べれる。
 となれば、それだけで客寄せの宣伝効果がありますからね。」
「ふむ…では、ありがたく頂くとしよう。」
「えぇ、どうぞどうぞ…そして、頑張って売って、次に僕達が来た時の宿代を稼いで下さい。」
「チッ!ちゃっかりしやがって…まぁ、売れるか分からんが試してみるさ。」
「あ、そうそう…ちょっと厨房借りて良いですか?
 大将と女将さんに、ビビンバを食べて貰おうと思うんですよ。
 レシピだけ貰って実物食べてなかったら、味が合ってるのか分からないですよね?」

 昨日、こっそり〖無限庫インベントリ〗に入れたビビンバ二人前は、既に僕の腹の中に入っているので、新しく作る必要がある。
 それに、目の前で作れば、作り方も分かると言う物である。

「あぁ、確かに、実際に食べておいた方が良いな。
 なら、遠慮無く使ってくれ。」

 大将はそう言うと、僕を厨房へと案内する。

「さてと…〖無限庫〗から作り置き各種、ナムルを取り出して…っと。」

 僕はそれを、フライパンでサッと炒めていく。
 本来なら石焼きビビンバにしたいが、この世界だと簡単に器を用意する事が出来ないので、フライパンで炒める事にした…こちらなら簡単だ。
 そうして、暫くした後、出来上がったヤツを、大将と女将さんに出す。

「うッ…少し辛いが、これは凄く美味い。」
「あら?確かに、この辛さは堪らない…これ、本当に美味しいわ♪」
「えっと…今、大将が食べてるのがビビンバです。
 それで、女将さんが食べてるのが、ビビンバを更に炒めた物…焼きビビンバですね。」

 僕がそう説明すると、二人は自分達の食べてるのを交換する。

「ほほぅ…これは、炒めただけで、ここまで変わるのか…。」
「本当…まるで、別の料理みたい…。」

 いや、別の料理と言うのは流石にそれは言いすぎだと思うが、それでも、火を通すだけでも食感やらが違うのは確かだ。
 もっとも、どちらが良いかは好みによるが…。

「喜んで貰えて良かったです。
 大将、これで大丈夫ですよね?」
「あぁ、味は覚えた…まぁ、これに使われている材料を揃える所から始めないといけないが…な。」
「まぁ、それは…仕方がないですけど…でも、それだけ苦労をする価値はあるんじゃないですか?」
「そうだな…この宿屋の看板メニューにする為にも、頑張らないとな。」
「そうですね、あなた…私も手伝うわ。
 だから、一緒に頑張りましょう。」

 こうして、この宿屋に新たなメニューが加わった。

 しかも、このビビンバを食べる為だけに宿屋の食堂を利用するお客も増え、大繁盛した宿屋は、副業でビビンバ専門店まで開き大成功を収める事になるのは、これから数年後の事となる。

◇◆◇◆◇◆◇

「それでは、僕達はこれで失礼します。」
「お気を付けて、それと…はい、お弁当…忘れないで食べておくれよ?」

 ちょっと忙しい時間帯にも関わらず女将さんが僕達を送り出してくれる。
 まぁ、ビビンバのレシピのお礼も兼ねてなのだろう。

「ありがとうございます!今度来るのを楽しみにさせて貰いますね。」

 僕は女将さんからお弁当を受け取ると、クズハに渡す。
 何故なら、僕達が乗る馬車の御者は僕がするからだ。
 もっとも、この馬車も普通の馬車ではなくゴーレム馬車なのだが、ちょっと見ただけでは普通の人には判断が出来ない。
 故に、町に入る時は、このゴーレム馬車。
 町から離れたら車、と使い分けているのだ。

 もっとも、それでも普通の馬車の2倍の速度は出るので、それほど急ぎでない時はゴーレム馬車だけと言う事もある。
 何はともあれ、こうして僕達は細やかな休暇を終え、再び戦場へと旅立つのだった…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

前世の幸福ポイントを使用してチート冒険者やってます。

サツキ コウ
ファンタジー
俗に言う異世界転生物。 人生の幸福ポイントを人一倍残した状態で不慮の死を遂げた主人公が、 前世のポイントを使ってチート化! 新たな人生では柵に囚われない為に一流の冒険者を目指す。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

処理中です...