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~第七章:魔神復活編~
308ページ目…散策【3】
しおりを挟む ひょんな事から、プリン達が料理を作る事になった為、店内に残された僕とローラは暇を持て余す事となった。
だが、只待っていると言うのも暇だったし、既に頼んだ料理も捨てるのが勿体ないと言う事もあり、僕達の食べかけの料理を集めて、別の料理へ作り替えるべく、作業を開始したのだった…。
と、言う事で…まずは何からやろうかな?
僕は〖無限庫〗から、適当に食材を取り出して料理を開始する。
もやし、ニンジン、小松菜…こっちの世界だと、若干名前が違うが、面倒なので、僕は元の世界の名前で呼んでいる。
まず最初にするのは、ニンジンの千切りだ。
ニンジンは細めの千切りにしておこう。
その次は、鍋に水を入れ、お湯を沸かす…グツグツと沸いたのを確認したら、もやしを鍋に投入。
1~2分くらいで茹で上がるので取り出してギュッギュッと水気を絞る。
その後、塩、砂糖、ゴマ油を混ぜた物を調味料として、もやしとよく混ぜ合わせる。
ちなみに、大体の分量で言えば、塩を少々…まぁ、本来であれば親指と人差し指の2本の先で摘む位なのだが…子供と大人では指の大きさも変わるので、今回は0.5g程使用。
次の砂糖なのだが、大さじ1/3杯…確か、砂糖の場合、大さじ1杯が9gと覚えていたので3gを使う事にする。
まぁ、うろ覚えなのだが、それほど極端に不味い物が出来る訳じゃないので良しとしよう。
最後にゴマ油なのだが…確か大さじ1杯だったはずなのだが…こちらも、よく覚えていないので適当に15gほどを混ぜている。
これにより、『もやしのナムル』が完成する。
次に、用意したのは先程のニンジン…細めの千切りにしてある為、火の通りも早いみたいで、2~3分も茹でたら茹ですぎたか?と思うほど柔らかくなっていた。
で、こちらも先程と同じ分量の調味料を使い、よく混ぜ合わせる。
これにより、『ニンジンのナムル』が完成した。
最後に、小松菜…同様に茹でるのだが、茹で上がったヤツを食べやすいサイズに切ってから、同様の調味料を使い混ぜ合わせる。
これにより、『小松菜のナムル』が完成する。
これで、もやし、ニンジン、小松菜のナムルの完成である。
「ふ~…ここまでは、大した事はなんだけど…問題は、この次だな。」
醤油、日本酒、オイスターソースは無い。
だが、幸いな事に似た様な食材を使った代用品は既に手に入っており、〖無限庫〗の中にある。
その為、困る程の事はない。
では、何が問題なのか…そう、僕が作ろうとしている料理にはコチュジャンがいるのである。
「取り出したりますは、味噌!そして砂糖、更に醤油にゴマ油!
最後に…粉唐辛子ッ!!」
作業用に用意しているテーブルの上に、ドンッドンッドンッ!と続けて置いていく。
そして、鍋に、味噌、砂糖、醤油を入れ温めながら焦がさない様によく掻き混ぜる。
全体が滑らかになったのを確認した僕は、火から外して粉唐辛子を混ぜ込…その後、トドメと言わんばかりにゴマ油を投入して更に掻き混ぜたら、手作りコチュジャンの完成である。
ちなみに、使った分量は、味噌350g、砂糖250g、醤油120cc、ゴマ油大さじ1、粉唐辛子20g+αが分量だ。
確か…醤油100ccをgで計算すると118gと半端になるんじゃなかったかな?
今回、僕は120g程の醤油を使っているが…少し入れすぎたかな?と思った程度である。
ついでに言うと、粉唐辛子の+αは好みによる辛さ調整分と考えてくれたら良いと思う。
個人的にチリパウダーを使いたかったのだ、流石に、まだこっちの世界ではチリパウダーを見掛けた事がないので、今回は我慢だ。
「よっしゃ!あとは、プリンとクズハの頼んだ焼き肉定食から肉を回収して…っと。」
何故かと言うと、僕が頼んだ豚丼みたいだったが、プリン達の焼き肉定食は牛肉みたいだったからである。
「既に、焼かれてるから上手くいくか疑問だが…牛肉は生で食える事もあり、あまり火が通ってないみたいだし…多分、上手くいくだろ。」
日本酒大さじ1.5、砂糖小さじ2、醤油大さじ1、オイスターソース小さじ1…っと…。
それらを混ぜ合わせた物に、プリン達の焼き肉定食から回収した肉を漬け込み、よく揉み込む。
そして、その間にローラに指示して温めて置いて貰ったフライパンへと投入。
『ジュ~~~~ッ!』
よく熱せられていたのか、タレが蒸発する音が響き渡る。
ぶっちゃけ、店前で調理なんて事をしている所為で、少し人集りが出来ていたのだが、その音と匂いに引き寄せられた通行人が何事かと思い、更に人集りを作る。
「そう言えば…ここのご飯、ちと固かったんだよな…。」
もやしとかを茹でた鍋に、中敷きを置き、どんぶりを乗せる事で入れ蓋をして鍋に掛ける。
そう…蒸気で蒸そうと思ったのだ。
とは言え、先程の豚丼のご飯をそのまま使うのでは、塩っ辛いままなので、ちょっと勿体ないが、ここは軽く水でご飯を洗い流した物を使用である。
そして、全ての作業が終わった頃、店の中でも決着が付いた。
もちろん、プリン達の圧勝である。
って、思ったより、早く決着が付いたみたいだな…。
「クソッ!これが同じ料理だと言うのか…こんなに美味い料理を出されたら手も足もでねぇ…。」
「お、オヤジ…おい、お前ら!今回の一件は俺が原因だ!
だから、オヤジは悪くない!だ、だから…頼む、土下座は俺だけで許してくれ!!」
声が気になり、僕は店の中を覗く。
すると、先程、店主にバカ息子と呼ばれた男が既に土下座をした体勢でプリン達、嫁~ズに土下座をしている。
「フンッ!約束をしたのは、その親父さんですが、この程度の事を料理勝負と言って、更に土下座をさせたとあっては、ご主人様の妻として恥ずかしい事この上ない事です。
今回は料理勝負は最初から無かった…それで良いですわね?」
そりゃ、プリン達が作る料理って、基本的に僕の記憶からの再現料理な訳だから、こんな店で出す偽物の日本食に比べたら、勝負にすらならないだろうね。
「あ、あぁ…私も、何が300年続いた料理だ…と、思い知らされたよ…。
それで、図々しいお願いとは思うのだが、先程、あんた達が作ったレシピなんだが、うちで使わせて貰えないだろうか?」
「まぁ、私達は別に構わないけど…そもそも、私達が作った料理が本物な訳だし…。
偽物を本物と偽って、威張られるよりはマシな訳だし、ご主人様が良いと言うなら良いんじゃないかしら?」
おや?何か、話の流れが変わってないか?
聞き耳を立てていると、話の流れが変わって来たのに気が付いた。
「はい?どうして、旦那の許可がいるんだ?」
「え?だって、私達のご主人様って、勇者セイギのお孫さんですから。」
と、ここでプリンが爆弾発言をする。
「「「「「な、なんだってーーーーーッ!」」」」」
店主とバカ息子以外にも、女将さんはおろか、周囲のお客さんからも驚きの声が上がる。
そりゃそうだろ…そもそも、魔王を倒した勇者セイギは元の世界に帰った事なっている。
しかも、それは300年前の話である。
そんな中、孫が…と言われたら驚きもするだろう。
そもそも300年も前の勇者の孫が、今、ここにいる…など、信じられるはずがない。
ないのだが…どう言う訳か疑われる事がなかった…。
「ど、道理で…長年料理をしてきた俺だが、この人達の料理を食べた時、次元が違うと心が折れそうになったが、本物を知ってるなら、それも頷ける…。
はて?そう言えば、あんた達の旦那さんは、何処に?」
そう言って、キョロキョロと周囲を見渡す店主…これは、出て行かないとダメなパターンだよな。
「え~っと…ここにいますが…。」
右頬をポリポリと掻きながら、ゆっくり近付く僕…。
「旦那、何で外から?」
店の外から入ってきた僕に店主が変な目で僕を見る。
「いや、暇だったから先程の料理に手を加えて、『ビビンバ』を作っていたんですよ。」
「ビビンバ…ですか?」
恐らく、聞いた事のない料理名だったのだろう、店主が首を傾げている。
「えぇ…食べてみますか?美味しいですよ?」
「ぜ、ぜびッ!!」
『キュピーン!』と音が鳴るんじゃないのか?と思うほど、目を輝かせて力強く肯く店主。
勇者セイギの孫が作った料理、それも美味しいと言う言葉に、料理人の血が騒いだのだろう。
「ご主人様…それって当然、私達の分もあるんですよね?」
プリンからも催促が入る。
プリンに至っては、僕の記憶から料理名で検索して、料理を見つけ出した様だ。
「え、えっと…まだ自分の分しか…い、今すぐ作らせて頂きます、ハイッ!!」
元々、残した料理の手直しの為、そこまで量は確保出来ていない。
なので、自分の分+少し余る程度しか作れなかったのだ。
その結果、プリンだけではなく他の嫁~ズからの冷たい眼差しに、僕は耐えきれなかった…故に、追加で調理を開始する。
もっとも、面倒だったコチュジャンには余裕があるし、先程とは違い、今度は厨房と食材を提供してくれる事になったので、店先で調理するよりは、かなりマシである。
「あ、あの…ご主人様、他のお客さんから、私達の食べてるビビンバを是非にでも食べたいと言う声が上がっているのですが…。」
余程、嫁~ズが美味しそうに食べていたのだろう。
まだ店主の分が出来ておらず、追加で作成していたのだが、それを見ていた他の客が我慢出来なくなり食べたいと騒ぎ出した…と、クズハが報告に来る。
「…えぇ~い!そんなに喰いたけりゃ、一人前、銀貨1枚で良ければ喰わせてやると言えッ!!」
正直、嫁~ズ達の分を先に作った為、正直な話、未だに僕はビビンバを食べていない。
それなのに、他の客?そんなの作っていたら、僕が食べ損なうのは明白だ。
それ故、銀貨1枚…日本円にして1万円ほどで喰わせてやるとボッタクリ価格を提示したのだ。
常識がある人なら、たかがビビンバで1万円も出す人はいない。
そう考えての発言だった…だったのだが…。
「ご主人様、ビビンバ6人前の注文が入ったわよ。」
「ご、御主人様、こっちは3人前です。」
「主、ビビンバ、2人前。」
「御主人様、お忙しい所申し訳ありません…新しくビビンバ4人前の注文を受けました、追加でお願いします。」
と、予想を反して、注文がガンガン入ってくる。
まさか、一杯1万円相当の料理がガンガン売れるとは思っても居なかった。
その結果…。
「なんでやねんッ!!」
と、店内に僕のツッコミが響き渡る…だが、注文はそれだけでは収まらず…。
「ご主人様、2人前追加です!」
「ご、ご主人様、こちらも3人前追加です。」
「主、1人前追加。」
「御主人様申、し訳御座いません、こちらにも5人前追加お願いします。」
既に先程まで店内に居た客の数よりも多くの注文が入っているのに、更に追加で入る注文の数にキレそうになる…。
「ク、クソッ!!もう、なる様になれ!だ…オッサン、女将さん…それからバカ息子!
これから、ここは戦場だ!死ぬ気で働けッ!!」
「「「は、はいッ!!」」」
僕の鬼気迫る迫力に負け、3人揃って返事をする。
こうなれば材料が尽きるか、客足が途絶えるか、はたまた僕達が倒れるか…限界への挑戦だ。
こうして、この騒動は食材が無くなった為、終了となる。
ちなみに、この騒ぎの一番の元凶は、僕が店前で調理していた事による客寄せ効果が一番の原因だと言うのだから、自業自得…他人を責める訳にはいかない。
そうそう…儲けは材料費込みの折半と言う事になり、金貨1枚を貰う事が出来た。
つまり…最低でもビビンバが200杯は出たと言う事…そりゃ、フラフラになる訳だ…。
ちなみに、途中からこうなる事が予想できた僕は、自分の分を2人前を無限庫に、こっそり入れてあったりする。
こうして、僕達の休日は食べに寄った店で料理を作ると言う予期せぬ事態になり、それだけで休日は終わりを告げたのだった…。
だが、只待っていると言うのも暇だったし、既に頼んだ料理も捨てるのが勿体ないと言う事もあり、僕達の食べかけの料理を集めて、別の料理へ作り替えるべく、作業を開始したのだった…。
と、言う事で…まずは何からやろうかな?
僕は〖無限庫〗から、適当に食材を取り出して料理を開始する。
もやし、ニンジン、小松菜…こっちの世界だと、若干名前が違うが、面倒なので、僕は元の世界の名前で呼んでいる。
まず最初にするのは、ニンジンの千切りだ。
ニンジンは細めの千切りにしておこう。
その次は、鍋に水を入れ、お湯を沸かす…グツグツと沸いたのを確認したら、もやしを鍋に投入。
1~2分くらいで茹で上がるので取り出してギュッギュッと水気を絞る。
その後、塩、砂糖、ゴマ油を混ぜた物を調味料として、もやしとよく混ぜ合わせる。
ちなみに、大体の分量で言えば、塩を少々…まぁ、本来であれば親指と人差し指の2本の先で摘む位なのだが…子供と大人では指の大きさも変わるので、今回は0.5g程使用。
次の砂糖なのだが、大さじ1/3杯…確か、砂糖の場合、大さじ1杯が9gと覚えていたので3gを使う事にする。
まぁ、うろ覚えなのだが、それほど極端に不味い物が出来る訳じゃないので良しとしよう。
最後にゴマ油なのだが…確か大さじ1杯だったはずなのだが…こちらも、よく覚えていないので適当に15gほどを混ぜている。
これにより、『もやしのナムル』が完成する。
次に、用意したのは先程のニンジン…細めの千切りにしてある為、火の通りも早いみたいで、2~3分も茹でたら茹ですぎたか?と思うほど柔らかくなっていた。
で、こちらも先程と同じ分量の調味料を使い、よく混ぜ合わせる。
これにより、『ニンジンのナムル』が完成した。
最後に、小松菜…同様に茹でるのだが、茹で上がったヤツを食べやすいサイズに切ってから、同様の調味料を使い混ぜ合わせる。
これにより、『小松菜のナムル』が完成する。
これで、もやし、ニンジン、小松菜のナムルの完成である。
「ふ~…ここまでは、大した事はなんだけど…問題は、この次だな。」
醤油、日本酒、オイスターソースは無い。
だが、幸いな事に似た様な食材を使った代用品は既に手に入っており、〖無限庫〗の中にある。
その為、困る程の事はない。
では、何が問題なのか…そう、僕が作ろうとしている料理にはコチュジャンがいるのである。
「取り出したりますは、味噌!そして砂糖、更に醤油にゴマ油!
最後に…粉唐辛子ッ!!」
作業用に用意しているテーブルの上に、ドンッドンッドンッ!と続けて置いていく。
そして、鍋に、味噌、砂糖、醤油を入れ温めながら焦がさない様によく掻き混ぜる。
全体が滑らかになったのを確認した僕は、火から外して粉唐辛子を混ぜ込…その後、トドメと言わんばかりにゴマ油を投入して更に掻き混ぜたら、手作りコチュジャンの完成である。
ちなみに、使った分量は、味噌350g、砂糖250g、醤油120cc、ゴマ油大さじ1、粉唐辛子20g+αが分量だ。
確か…醤油100ccをgで計算すると118gと半端になるんじゃなかったかな?
今回、僕は120g程の醤油を使っているが…少し入れすぎたかな?と思った程度である。
ついでに言うと、粉唐辛子の+αは好みによる辛さ調整分と考えてくれたら良いと思う。
個人的にチリパウダーを使いたかったのだ、流石に、まだこっちの世界ではチリパウダーを見掛けた事がないので、今回は我慢だ。
「よっしゃ!あとは、プリンとクズハの頼んだ焼き肉定食から肉を回収して…っと。」
何故かと言うと、僕が頼んだ豚丼みたいだったが、プリン達の焼き肉定食は牛肉みたいだったからである。
「既に、焼かれてるから上手くいくか疑問だが…牛肉は生で食える事もあり、あまり火が通ってないみたいだし…多分、上手くいくだろ。」
日本酒大さじ1.5、砂糖小さじ2、醤油大さじ1、オイスターソース小さじ1…っと…。
それらを混ぜ合わせた物に、プリン達の焼き肉定食から回収した肉を漬け込み、よく揉み込む。
そして、その間にローラに指示して温めて置いて貰ったフライパンへと投入。
『ジュ~~~~ッ!』
よく熱せられていたのか、タレが蒸発する音が響き渡る。
ぶっちゃけ、店前で調理なんて事をしている所為で、少し人集りが出来ていたのだが、その音と匂いに引き寄せられた通行人が何事かと思い、更に人集りを作る。
「そう言えば…ここのご飯、ちと固かったんだよな…。」
もやしとかを茹でた鍋に、中敷きを置き、どんぶりを乗せる事で入れ蓋をして鍋に掛ける。
そう…蒸気で蒸そうと思ったのだ。
とは言え、先程の豚丼のご飯をそのまま使うのでは、塩っ辛いままなので、ちょっと勿体ないが、ここは軽く水でご飯を洗い流した物を使用である。
そして、全ての作業が終わった頃、店の中でも決着が付いた。
もちろん、プリン達の圧勝である。
って、思ったより、早く決着が付いたみたいだな…。
「クソッ!これが同じ料理だと言うのか…こんなに美味い料理を出されたら手も足もでねぇ…。」
「お、オヤジ…おい、お前ら!今回の一件は俺が原因だ!
だから、オヤジは悪くない!だ、だから…頼む、土下座は俺だけで許してくれ!!」
声が気になり、僕は店の中を覗く。
すると、先程、店主にバカ息子と呼ばれた男が既に土下座をした体勢でプリン達、嫁~ズに土下座をしている。
「フンッ!約束をしたのは、その親父さんですが、この程度の事を料理勝負と言って、更に土下座をさせたとあっては、ご主人様の妻として恥ずかしい事この上ない事です。
今回は料理勝負は最初から無かった…それで良いですわね?」
そりゃ、プリン達が作る料理って、基本的に僕の記憶からの再現料理な訳だから、こんな店で出す偽物の日本食に比べたら、勝負にすらならないだろうね。
「あ、あぁ…私も、何が300年続いた料理だ…と、思い知らされたよ…。
それで、図々しいお願いとは思うのだが、先程、あんた達が作ったレシピなんだが、うちで使わせて貰えないだろうか?」
「まぁ、私達は別に構わないけど…そもそも、私達が作った料理が本物な訳だし…。
偽物を本物と偽って、威張られるよりはマシな訳だし、ご主人様が良いと言うなら良いんじゃないかしら?」
おや?何か、話の流れが変わってないか?
聞き耳を立てていると、話の流れが変わって来たのに気が付いた。
「はい?どうして、旦那の許可がいるんだ?」
「え?だって、私達のご主人様って、勇者セイギのお孫さんですから。」
と、ここでプリンが爆弾発言をする。
「「「「「な、なんだってーーーーーッ!」」」」」
店主とバカ息子以外にも、女将さんはおろか、周囲のお客さんからも驚きの声が上がる。
そりゃそうだろ…そもそも、魔王を倒した勇者セイギは元の世界に帰った事なっている。
しかも、それは300年前の話である。
そんな中、孫が…と言われたら驚きもするだろう。
そもそも300年も前の勇者の孫が、今、ここにいる…など、信じられるはずがない。
ないのだが…どう言う訳か疑われる事がなかった…。
「ど、道理で…長年料理をしてきた俺だが、この人達の料理を食べた時、次元が違うと心が折れそうになったが、本物を知ってるなら、それも頷ける…。
はて?そう言えば、あんた達の旦那さんは、何処に?」
そう言って、キョロキョロと周囲を見渡す店主…これは、出て行かないとダメなパターンだよな。
「え~っと…ここにいますが…。」
右頬をポリポリと掻きながら、ゆっくり近付く僕…。
「旦那、何で外から?」
店の外から入ってきた僕に店主が変な目で僕を見る。
「いや、暇だったから先程の料理に手を加えて、『ビビンバ』を作っていたんですよ。」
「ビビンバ…ですか?」
恐らく、聞いた事のない料理名だったのだろう、店主が首を傾げている。
「えぇ…食べてみますか?美味しいですよ?」
「ぜ、ぜびッ!!」
『キュピーン!』と音が鳴るんじゃないのか?と思うほど、目を輝かせて力強く肯く店主。
勇者セイギの孫が作った料理、それも美味しいと言う言葉に、料理人の血が騒いだのだろう。
「ご主人様…それって当然、私達の分もあるんですよね?」
プリンからも催促が入る。
プリンに至っては、僕の記憶から料理名で検索して、料理を見つけ出した様だ。
「え、えっと…まだ自分の分しか…い、今すぐ作らせて頂きます、ハイッ!!」
元々、残した料理の手直しの為、そこまで量は確保出来ていない。
なので、自分の分+少し余る程度しか作れなかったのだ。
その結果、プリンだけではなく他の嫁~ズからの冷たい眼差しに、僕は耐えきれなかった…故に、追加で調理を開始する。
もっとも、面倒だったコチュジャンには余裕があるし、先程とは違い、今度は厨房と食材を提供してくれる事になったので、店先で調理するよりは、かなりマシである。
「あ、あの…ご主人様、他のお客さんから、私達の食べてるビビンバを是非にでも食べたいと言う声が上がっているのですが…。」
余程、嫁~ズが美味しそうに食べていたのだろう。
まだ店主の分が出来ておらず、追加で作成していたのだが、それを見ていた他の客が我慢出来なくなり食べたいと騒ぎ出した…と、クズハが報告に来る。
「…えぇ~い!そんなに喰いたけりゃ、一人前、銀貨1枚で良ければ喰わせてやると言えッ!!」
正直、嫁~ズ達の分を先に作った為、正直な話、未だに僕はビビンバを食べていない。
それなのに、他の客?そんなの作っていたら、僕が食べ損なうのは明白だ。
それ故、銀貨1枚…日本円にして1万円ほどで喰わせてやるとボッタクリ価格を提示したのだ。
常識がある人なら、たかがビビンバで1万円も出す人はいない。
そう考えての発言だった…だったのだが…。
「ご主人様、ビビンバ6人前の注文が入ったわよ。」
「ご、御主人様、こっちは3人前です。」
「主、ビビンバ、2人前。」
「御主人様、お忙しい所申し訳ありません…新しくビビンバ4人前の注文を受けました、追加でお願いします。」
と、予想を反して、注文がガンガン入ってくる。
まさか、一杯1万円相当の料理がガンガン売れるとは思っても居なかった。
その結果…。
「なんでやねんッ!!」
と、店内に僕のツッコミが響き渡る…だが、注文はそれだけでは収まらず…。
「ご主人様、2人前追加です!」
「ご、ご主人様、こちらも3人前追加です。」
「主、1人前追加。」
「御主人様申、し訳御座いません、こちらにも5人前追加お願いします。」
既に先程まで店内に居た客の数よりも多くの注文が入っているのに、更に追加で入る注文の数にキレそうになる…。
「ク、クソッ!!もう、なる様になれ!だ…オッサン、女将さん…それからバカ息子!
これから、ここは戦場だ!死ぬ気で働けッ!!」
「「「は、はいッ!!」」」
僕の鬼気迫る迫力に負け、3人揃って返事をする。
こうなれば材料が尽きるか、客足が途絶えるか、はたまた僕達が倒れるか…限界への挑戦だ。
こうして、この騒動は食材が無くなった為、終了となる。
ちなみに、この騒ぎの一番の元凶は、僕が店前で調理していた事による客寄せ効果が一番の原因だと言うのだから、自業自得…他人を責める訳にはいかない。
そうそう…儲けは材料費込みの折半と言う事になり、金貨1枚を貰う事が出来た。
つまり…最低でもビビンバが200杯は出たと言う事…そりゃ、フラフラになる訳だ…。
ちなみに、途中からこうなる事が予想できた僕は、自分の分を2人前を無限庫に、こっそり入れてあったりする。
こうして、僕達の休日は食べに寄った店で料理を作ると言う予期せぬ事態になり、それだけで休日は終わりを告げたのだった…。
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