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~第七章:魔神復活編~

287ページ目…聖剣の鍛冶師【3】

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『グ~~~~~ッ!!』と言う盛大なる音量の腹の虫の音…果たして、どれほどの期間食べなければ、これほどの音が鳴るのか疑問でしょうがない。
 だが、幸いな事に腹の虫が鳴ると言う事は生きている証であり、同時に、お腹が空いている証でもある。
 僕は〖無限庫インベントリ〗からサンドイッチと暖かいスープを取り出す。

 こう言う時は、時間の経過が起こらない〖無限庫〗の存在が非常に有り難いと改めて思う。
 僕は、倒れている彼女の口元にサンドイッチを近付ける。
 当然ながら、それは鼻先にも近付く訳で…。

『クンクンッ、クンクンッ』

 と、音が聞こえてくるほど勢いよく鼻を鳴らす彼女…。
 そして、次の瞬間…。

『バクッ!!』

「き、きゃーーーーー!」

 サンドイッチを持っていた僕の手首から先が消えている事に驚いたクズハが鼓膜が破れるんじゃないかと思う程の悲鳴を上げる。

「ク、クズハ、大丈夫だから!」

 そう言って、服の袖から無くなったと思われた手を出す。
 そう、あと一瞬でも手を引っ込めるのが遅ければ、クズハが想像したであろう事が現実に起こりえたかも知れなかったのだが、何とか刹那の差で無事に回避する事が出来た様だ。
 我ながら、良く回避出来たと自分自身を褒めてあげたい。
 しかし、そんな勢い良く食らい付くと、お約束通り喉に詰まらせるんじゃなかろうか?と不安になる。

「もぐもぐ、モグモグ…んぐッ!?ん~~~ッ!!」

 うん、やはり、この世界に来てから度々起こっている事ではあるが、この手のお約束は当然の如く起こる様だ。
 そして…どんどん顔色が青くなっていく彼女が哀れに思えてくる。

「はぁ~…誰も取って喰わないから、落ち着いて食べな?
 それから、はい、スープ…まだちょっと熱いから気を付けてね?」

 そう言って、僕は彼女にスープを渡す。
 考えてみたら、最初から、ちゃんとコップと水を用意しておけば良かったな…。

「ゴクゴクゴク…ぷは~ッ!!あぁ、本気マジで死ぬかと思ったわ!」
「こっちも、ご飯を与えた所為で死なれたんじゃ、堪らないですよ?」
「は、ははは…本当に、残念な方ですね…。」

 うん、確かに僕もそう思うけど、クズハさん…本音が漏れてますよ?

「ねぇ、お代わりは無いの?って言うか、貴方達…誰?」

 そっか…僕達が誰か疑問に思う前に、お代わりが先なんだ…まぁ、空腹で倒れてたんじゃ仕方がないけどさ。
 ただ、僕達の存在は、食料以下だったのか…何やらやるせない倦怠感けんたいかんに苛まれながら、それでも気力を振り絞って答える。|

「えっと…僕達は、バルムンクさんの知り合いでして、君は『アルテイシア』さんで合ってるのかな?」

 まず間違いはないと思うが、念の為、名前の確認と追加のサンドイッチを〖無限庫〗から取り出すのを忘れない。

「えぇ、私がアルテイシアよ♪
 それで、おにぃちゃんの知り合いさん?が、どうして此処に?」

 そう言ってアルテイシアさんは用件を聞いてくる。
 ただし、視線は僕の方ではなく、僕が〖無限庫〗から取り出したサンドイッチに常時ロックオンされている。
 なので、サンドイッチの乗った皿を、上下左右に動かしつつ返事をする。

「えっとですね…バルムンクさんが、アルテイシアさん…貴方なら聖剣を打てるはずだ、と言っていたんです。
 それで、もし本当に聖剣を打てるのなら依頼をしたいと思いまして…。」

 その間にも、僕の手はあちこちへ動き、その手に持っている皿を追う様に、アルテイシアさんの顔と目が、皿に釣られ動いていく。

「えぇ、確かに…最近、やっと聖剣を打てる様になったわ。
 でも、聖剣を打つには材料が別途、必要よ?
 そ、それに…お腹いっぱい食べて体力を回復させないと、聖剣どころか普通の剣でさえ打つなんて流石に無理ね…ジュルリ…。」

 ふむ…これでも〖無限庫〗の中には、色々な素材となる物が揃っている。
 仮に、足りなかったとしても今の僕には手に入れる事はそれほど難しい物は無いと思われる。

「そうですか…では、材料やらはこちらで準備させて頂きますので、ご注文しても良いですか?
 引き受けて頂けるなら、こちらのサンドイッチだけではなく御満足いただける程の食料も差し上げますよ?」

 すると、彼女…アルテイシアさんは白い歯がキラーン!と光る様な満面の笑みと共に、サムズアップをしながら、こう言った…。

「えぇ、これで商談成立ね♪だから、ご飯を私に頂戴ッ!!」

 と、アルテイシアさんが満面の笑みで答える。
 いや、だから…そんなに涎垂らして、ドヤ顔で言われてもですね?
 そもそも、聖剣の材料…素材はこちらが用意するにしても、依頼料の話もしてないんですけど…。

 僕は一抹の不安を感じながら、彼女にロックオンされているサンドイッチを慎重に渡すのだった…ちゃんちゃん…。
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