~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

文字の大きさ
上 下
286 / 421
~第七章:魔神復活編~

286ページ目…聖剣の鍛冶師【2】

しおりを挟む
「こ、こんな所に人が住んでいるんでしょうか?」

 と、クズハが不安な顔をして聞いてくる。
 が、それに対して、僕の答えは正直な話、『知らんがな』である。
 いや、流石にそんな受け答えは稀にしか《・・・・》しない訳で…。

「ど、どうだろ?でも、さっき聞いた人は、ここに住んでるって話だったし…。」

 とは言え、他の工房みたいに炉に火が入っている様な匂いもしないし、鎚を打つ音も聞こえない。
 はっきり言って廃業しているのでは?と思えるほど静かである。

 だが、ここで大人しく引き返したのであれば引き受けた依頼は失敗になる。

 まぁ、もっとも、今回の依頼に関しては失敗してもペナルティーは発生しない。
 だが、それはそれで、あの威張り腐った貴族が難癖付けてくるのは目に見えて分かっている。
 なので、今回の依頼は失敗する訳にはいかない訳なのだが、どうしたものか…。

◇◆◇◆◇◆◇

「すいませ~ん、誰かいませんか~?」

 これで何度目かの呼び掛けだろう?相変わらず、人の気配は無い。
 やはりと言って良いほど無いのだが、それでも何となく違和感があり、僕はずっと呼び掛けを続けていた。

『………カタン。』

 店の奥の方で、何やら小さい音がする。
 ネズミか?とも思ったが、念の為、確認をした方が良いと思い、僕はクズハを連れて中に入っていく事にした。
 まぁ、不法侵入と言われたら困るが、怒られたら素直に謝れば許してくれるはずだ…たぶん…。

「あの~入りますよ~?」

 僕は一言、声を掛けて音のする方へと向かう。
 玄関を潜ると、空気が変わった様な気がする。
 何やら匂いの方も、鉄や他の金属やらの匂いやらがしてきた様な気がする。

 そんな匂いを感じつつ僕達は店の奥へと進んでいく。
 そして…この先は工房であろう扉を見付け、ドアノブを捻る。

『ガチャリ…ギ、ギーーー!。』

 ゆっくりと開いていく扉…そして、目の前に広がる景色。
 そこには、1つの死体が…。
 どうやら、死体は衣服と髪の長さから判断するに女性の様だ…。

ご主人様あなた、あの人、ちゃんと生きてますよ?」

 どうやら、クズハは僕が何を考えているのか分かったらしく、変な事を言う前に説明をしてくる。

「あ、そうなの?」

 僕は間抜けな声でクズハに聞き返す。

「は、はい、私の耳に、心音が聞こえてきましたから♪」

 そう言って、僕に笑顔を振りまくクズハ…うん、プリンとはまた違う可愛さがあって良い。
 しかも、何が嬉しいのか、尻尾も嬉しさを物語っている様に、ゆらゆらと揺れる。
 ただまぁ、妖狐族としての力を使ったのであろうか?
 普段は隠している尻尾まで姿と表しており、その尻尾の数、全部で7本がゆらゆらと揺れている姿は凄い物を見ている気がするが…。

 ちなみに余談ではあるが、クズハの…妖狐と呼ばれる一族はレベルにより尻尾の数が増え、最大で9本まで尻尾の数が増えるらしいのだが、実際に9本まで増える事は稀で、9本まで増えた事例は、クズハが知っている中では6件ほどらしく、通常であれば基本的に2~3本で止まるらしい。
 まぁ、そんな話を聞くと…クズハの7本と言う数は、正直、かなりの高レベルなのでは?と疑問に思う。

「っと、こんな事をしている場合じゃないな…その人を助けなきゃ!」

 そう、余計な事を考えている暇があれば、まずは人命救助が優先だ。
 そもそも、聖剣を打って貰いに来たのに、その鍛冶師に死なれたのでは話にならない。
 僕とクズハは急いで、その死体…じゃなかった、死体に見えた誰かに駆け寄り、体を起こす。

「大丈夫ですか?意識はありますか?」

 僕の呼び掛けに対して、何も反応がない。
 クズハは生きていると言うが、生きていても意識がないのでは話にならない。

『ペチペチッ、ペチペチッ…。』

 僕は痛くならない様に、彼女?の頬を叩いて刺激を与える。
 しかし、反応が全くない…仕方がないので、もう何度か頬を叩くも反応が無い…。
 どうしよう?と悩んでいた時、それは突然、大音量で鳴り響いた。

『グ~~~~~ッ!!』

「い、今の音はッ!?」

 慌てて周囲を確認する僕…そして、クズハと目が会う。
 すると、クズハはフルフルと首を振って、否定する。
 そして、僕の方を指さして、こう言った…。

「ご、ご主人様、その方から聞こえました…。」

 そう、クズハが僕の方を指さしたと思ったのだが、その指は、僕が支えてる女性を指さしていたのだ。
 そして、もう一言、付け加えた…。

「い、今のって彼女のお腹の虫の音では?」

 と、鳴りやんだお腹の虫の音、再び訪れる静寂に、僕は頭を抱えるのだった…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。 令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。 しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。 『骨から始まる異世界転生』の続き。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

処理中です...