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~第七章:魔神復活編~

276ページ目…護衛依頼【6】

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「あちゃ~…さすがに市販のロングソードじゃ力に耐えきらずに壊れちゃったか…。」

 と、僕は呟く、正直な話、ギガント・マンティスを倒すだけなら、わざわざ魔力を纏わせる必要はなかったのだが、一撃で倒そうとするとそうはいかない。
 何故なら、力を抑えた状態では、その強固さから単純に攻撃するだけではダメージが小さすぎて不可能なのだ。
 それ故に、魔力を纏わせて刀身を強化して攻撃したのだが、その分、威力が増してしまった…それ故、その破壊力に耐えきれずロングソードが粉々に破壊されてしまった。

 つい、|ダンジョンの壁を素材にした、いつも使う・・・・・武器と同じ感覚で使った為に、市販の…それも安物のロングソードだった為か、その負荷に耐えきれず粉々に壊れてしまったと言う事だ。
 しかも、刀身のみならず柄までも…となると、どうあがいても修復不可能だ。

 もっとも、この安物のロングソードは鍛冶ギルドの見習いが作った練習用の剣である。
 10本買ったとしても銀貨3枚にも満たない様な、数打ちの安物の剣と言う事を考えれば、ダンジョンの…しかも、この階層で戦えていたと考えるならば元は取れているのかもしれない…。
 何はともあれ、下手をすれば、攻撃する前に壊れていた可能性もあったのだから、ギガント・マンティスを倒した後に壊れたと言うのは、ある意味では僥倖《ぎょうこう》だったと思う。

「はい、ご主人様あなた新しい予備の剣です。」

 と、プリンが、こっそりとアイアンさんから見えない所でスライムの〖胃袋〗に仕舞ってある予備の剣を取り出して渡してくれる。
 正直、いい加減、アイアンさんにバレてるんじゃないか?と思うのだが…。

「プ、プリンさんの魔法の鞄、か、かなり大容量みたいですね…もしかして、かなり高価な物なのでは?」

 と、聞いてくるので、〖胃袋〗の事はバレていないと信じたい。

「え、えぇ…まぁ、これでも僕達はAランク級の冒険者ですから、それなりに装備は良い物を揃える事が出来るんですよ。
 とは言え、大容量の魔法の鞄なんて持ってるのがバレたら、他の人に狙われるので、他言無用でお願いしますね?」

 と、僕は誤魔化しておく。
 これで問題はないはずだ…たぶん…。

「え、えぇ…それはもちろんです、その点はご安心下さい。
 いくら私が護衛の依頼主だからと言っても、雇った者の装備がどうだとか言う大事な情報を他人に売るというのは人として倫理に反しますからね。」
「いや、そこまで強く言ったつもりはないんですが…まぁ、企業秘密と言う事で内緒にして頂けると助かります…と言うだけですので、もし、言わなければ殺すとか脅された場合は、遠慮なく、喋っちゃって構いませんので。」
「そ、そうですか…了解しました。
 とは言え、そうそう喋る機会は無いと思いますけど…ね。」

 と、アイアンさんが苦笑する。
 まぁ、幾らAランクの冒険者だからとは言え…違うな、Aランクの冒険者だからこそ、その持ち物を狙うヤツがいるとは考えにくい。
 あるとすれば、僕達の事を知らずにスリなどをするヤツくらいだろう…と思う。
 まぁ、何はともあれ話が逸れてきてるので話を戻すとしよう。

「そんな事より、ちゃんと籠手は拾えましたか?」
「はい、こちらに。」

 そう言ってアイアンさんは僕に籠手を見せてくる。
 ちなみに、ギガント・マンティスからのドロップ品は鎧だったので被らなくて良かったと思う。

「では、アイアンさんは、そのドロップした鎧と籠手を装備して下さい。
 少し重いかも知れませんが、一式手に入れるのが目標なんですから。」

 そう…聖なる装備一式を集めダンジョンから出る。
 それがプリンがアイアンさんから受けた護衛依頼なのだから…。

◇◆◇◆◇◆◇

 現在地は、安全地帯…セーフティーエリアと呼ばれる魔物が出現しない&魔物が近付かないと言う貴重なエリアへと僕達は来ていた。
 あれから5時間ほど狩りを続けたが結局、一式揃う事はなかった…。

「さてさて…物の見事に、防具ばかりですね…。」
「そ、そうですね…まさか、武器が何一つ出ずに防具ばかりとは…。
 しかも、ご丁寧に2セットですか…これで武器さえあれば、直ぐにでもダンジョンから出るんですけどね…。」
「まぁまぁ、そんな事より、ご飯を食べませんか?
 よく食べよく寝る…そうじゃないと、明日の狩りに響きますよ?」

 と、プリンがアイアンさんに言う。
 ちなみに、今の台詞だと、プリンが料理した様に聞こえるが実際に料理したのは僕だったりするのだが、気にしない事にしよう。

「そ、そうですね…正直、疲れてしまってご飯食べたら直ぐに寝てしまいそうです。」
「ははは…とは言え、アイアンさんも凄く頑張っていましたから…。
 そもそも、C級になったばかりなのに、このダンジョンの攻略は無茶に近いですからね。」
「えぇ、本当に…カタリベ殿にプリンさんがいなければ、どうなっていた事やら…。」
「ん~、十中八九、死んでたと思いますよ?
 いえ、そもそも、この階層まで来る事すら出来なかったと思いますね。」

 と、ど直球で素直に答えるプリン、それもオブラートに包む事無く…である。
 もっとも、その意見には僕も同意見なので否定はしないが、もう少し優しく言ってあげようね?と思う。

「で、ですね、プリンさんの言う通り自分の実力不足は痛いほど理解出来ました。
 ですが、彼女を妻に迎える為には、どうしても、ここの装備一式が必要なのです。
 ですから、ご迷惑をお掛けしているのは重々承知していますがしていますが、もう少しだけ…もう少しだけ私に御助力をお願いします!」

 そう言ってアイアンさんは、頭を地面に付けるほどの土下座をする。
 正直な話、アイアンさんは僕よりも年上だ。

 そんな人が年下の僕に土下座までするとは…。
 仕方がない、報酬は安いが、もう少しだけ手伝ってあげるとするか…と、そんな事を思いつつ、明日の打ち合わせをするのだった…。
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