~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

文字の大きさ
上 下
247 / 421
~第七章:魔神復活編~

247ページ目…ダンジョンマスターの憂鬱【6】

しおりを挟む
 ダンジョン…それは、数多あまたの冒険者達が、自らの力を誇示する為に挑戦し、その戦利品を持ち帰る事により栄誉を手に入れる場所である。
 その為、己の限界を超えて挑戦し、志半ばで死んでしまう者もいる。

 ダンジョン…それは、通常では手に入れる事すら不可能な、貴重な魔法道具が手に入る場所である。
 その為、空間魔法が付与され大量の荷物を運んだり出来る魔法の鞄マジックバッグなどの貴重な魔法道具により巨額な富を手に入れる者もいる。

 ダンジョン…それは、魔法でも治らない様な病気や失われた部位すらも復活させる事が可能な回復薬ポーション等の道具アイテムが手に入るかも知れない場所である。
 その為、死を待つしかない者や、事故などにより腕や脚を失った者にとって最後の希望として、それらのアイテムに望みを託す者もいたりする。

 それ即ち、絶望すらも覆す可能性を持った希望の場所でり、己の力を誇示する場所でもある。
 故に、ダンジョンには数多の挑戦者が命懸けで挑む場所だと言える。

 そんな命懸けな場所を、僕は、まるで近所を散歩をするかの様に、のんびりと歩いていた。
 そんな危険な場所を歩いているのだから、当然ながら危険な魔物にも出くわす事になる。

 もっとも、今の僕には、そんじょそこらの魔物では相手にならないし、何より、このダンジョンの中では僕に襲い掛かってくる魔物は、一部の例外を除き、存在していない。
 何故なら、このダンジョンの全てを支配しているダンジョンマスターと呼ばれる存在こそが、僕の正体なのだから…。

「ってな訳、ここまで来たんだけど…最近、冒険者の入りってどうなってるんだ?」

 そう…今、僕が居るのはダンジョンの第10階層へと続く階段の前…所謂いわゆる安全空間セーフティーゾーンと呼ばれる場所である。

 本当ならば、直接ここに転移してきたかったのだが、僕がダンジョンに入った時、ちょうどこの場所に人がいたので、少し離れた人がいない場所エリアへと転移して、時間を掛けて歩いてきたのだ。
 そのお陰か、此処にいた者達は、次の階層へと歩みを進めたのか、ここにたどり着いた頃には、冒険者達の姿は見えなかった。
 そして、今僕と話している相手は、このセーフティーゾーンで、唯一の雑貨屋を開いている店主であるリッチと呼ばれる不死者アンデッドだったりする。

「そうですね…マスターが、このダンジョンを10階層から100階層へと拡張したお陰で、それなりに人の出入りは多くなった気がしますね。
 ただ、その分、マナーの悪い冒険者も増えてきたのは、いささか問題かと思いますが…。」

 不死者アンデッドであるリッチに、冒険者のマナーが悪いと言われるのどうかと思うが、内容が気になるので確認をする。

「…と言うと?」
「そうですね、極一部の冒険者に言える事ですが、自分の手に負えない魔物を、わざと他の冒険者に押し付ける様にして逃げる者とか、傷付いてる冒険者を殺して、戦利品とかを奪う者も見掛けますね。」
「うわぁ…確かに僕の知ってるダンジョンの知識で、そんな人がいるのは知ってはいるが、僕のダンジョンでもそんなヤツ居るのか…。」

 やはり、よくある小説とかでもそうだが、当然の事の様に人の物を奪おうとするヤツがいるんだな……。

「えぇ…ですが、先程も言いましたが、あくまで極一部の冒険者…ですけどね。」

 そりゃまぁ、全員がそんなヤツだとしたら、そこら中、死屍累々で大変な事になってる事だろう…。
 って言うか、ぶっちゃけ、少数でも問題なのだが…。

「あ~…でも、そうすると弱い仲間や奴隷を囮にして…ってヤツもいそうだな。」

 テンプレと言えばテンプレだが、先程のマナーが悪いと言ってた内容から想像するに、相手を騙すヤツや、強制的に奴隷を囮に使うヤツもいそうだな。

「えぇ、残念ながら…確かに、その様な輩もいますね…。
 もっとも、そんな事をしている者達は、上に報告していますので、強い魔物達に出会うと優先的に倒されますが…。」
「…そうなのか?」
「はい、このダンジョンでは、悪質な行為をする冒険者を優先的に排除する様に魔物達が動きますから。」

 とは言え、上に報告と言われても、僕には、そんな報告が回って来た事は一度もない。
 つまり、ダンスラ(ダンジョンのサブマスター権限を持つスライム)が、自分の判断で、その様な悪質な冒険者を優先的に排除する様にしていると言う事か…。
 うん、本当に良く気の利くスライムだ…と言うか、本当にスライムなのだろうか?

「それはそうと、何か用があったんじゃないんですか?」

 僕がダンスラについて考えていると、店主のリッチに声を掛けられる。
 それにより、わざわざ、この階層にやって来た理由を思い出した。

「あ、そうだった…この雑貨屋って、高級回復薬ハイポーションって扱ってる?」

 店主に言われて、ここまで来た理由を思い出した僕は、店主に確認をする。

「ハイポーションですか?それでしたら、うろ覚えですが、うちではなく、19階層の雑貨屋からだったと思いますが…。」
「あちゃ~、19階層の方だったか…。」

 そう…ダンジョンを大幅10倍に拡張した際に、店舗数を大幅に増やした事が原因で、何処の階層から、高級回復薬を扱う様にしたのか、良く覚えてなかったのだ。

「いえ、もしかしたら29階層の方だったかも知れません…ですので、先に29階層に行った方が無難かも知れませんよ?」

 確かに、言われてみれば深い階層の方が扱っている可能性が高い。
 手間を考えるなら深い階層に移動した方が無難だ。

「あぁ、確かに、そっちの方が良いかもな、サンキュー!」
「いえいえ、どういたしまして。」
「あ、そうだ!そんだけマナーの悪いヤツが増えてきてるんだから、お前も襲われない様に注意しなよ?」

 マナーが悪い冒険者が多いので、店主を攻撃して商品を奪おうとする輩が居ても可笑しくないので、念の為、店主に注意を促す。

「えぇ…ですが、これでもリッチの端くれですから…そんじょそこらの冒険者如きでは、今の私にダメージを負わせる事は出来ませんから、大丈夫だと思いますよ。
 それに、此処は安全地帯セーフティーゾーンとは言え、雑貨屋の店主階層守護者権限で骸骨兵スケルトンソルジャーを喚び出す事も出来ますし…最悪、この場をモンスターハウスにする事だって可能ですので…。」

 確かに、セーフティーエリアをモンスターハウスにされれば、そんじょそこらの冒険者では太刀打ち出来ない出来ないだろう…しかし…。

「セーフティーゾーンがモンスターハウスにって…本気マジで考えたくない悪夢だよな…。」
「そうですね…ですので、一応ですが注意勧告として、そちらに立て看板を設置しております。」

 そう言って、店主のリッチは雑貨屋の端の方にある立て看板を指さす。
 そこには「マナーの悪いお客様はお断りしております。また、あまりに酷い場合は実力で排除しますのでご了承下さい。」と書いてあった。

「は、ははは…とりあえず、僕としてはちゃんと看板を読んでくれる事を祈るよ…。
 まぁ、出来る事なら、マナーの悪い冒険者以外に、害が及ばない様にして欲しい所ではあるけどね。」
「流石に、そこまでは保証出来ませんが、善処だけはしますよ。」
「うん…無理しない程度に頼んだよ。」

 僕はそう言うと、第29階層の人がいないエリアへと、ダンジョンマスター権限を利用して転移するのだった…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】 一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。 目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。 『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。 勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】 周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。 -------------------------------------------------------- ※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。 改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。 小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ! https://ncode.syosetu.com/n7300fi/ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

見習い女神のお手伝いっ!-後払いの報酬だと思っていたチート転生が実は前払いでした-

三石アトラ
ファンタジー
ゲーム制作が趣味のサラリーマン水瀬悠久(みなせ ゆうき)は飛行機事故に巻き込まれて死んでしまい、天界で女神から転生を告げられる。 悠久はチートを要求するが、女神からの返答は 「ねえあなた……私の手伝いをしなさい」 見習い女神と判明したヴェルサロアを一人前の女神にするための手伝いを終え、やっとの思いで狐獣人のユリスとして転生したと思っていた悠久はそこでまだまだ手伝いが終わっていない事を知らされる。 しかも手伝わないと世界が滅びる上に見習いへ逆戻り!? 手伝い継続を了承したユリスはチートを駆使して新たな人生を満喫しながらもヴェルサロアを一人前にするために、そして世界を存続させるために様々な問題に立ち向かって行くのであった。 ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様でも連載中です。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。 突然足元に魔法陣が現れる。 そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――― ※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

処理中です...