～僕の異世界冒険記～異世界冒険始めました。

～第七章：魔神復活編～

226ページ目…魔族との戦い【2】

　何故か急に〖ひよこ勇者〗の称号が〖勇者〗に進化パワーアップした…とは言え、これで何かある訳ではない。
　もっとも、まるっきり関係ないという訳ではなく称号による補正は多少なりにも影響はあるだろう。
　ただ、あくまでも『多少・・』なだけで、全体から見れば微々たる物のはずだ。

　とは言え、今の僕は『ひよこ勇者』改め、『勇者』な訳で…つまり、じぃちゃんと同じ『勇者』だと言う事。
　これでビビってたら勇者じゃない。
　もっとも、勇者とは勇気ある者の事である。
　例え、その職業が剣士だろうが魔法使いだろうか…極端に言えば、遊び人や村人だったとしても勇気があれば、それは勇者足り得る物なのだ。

　ならば、勇気ある者勇者としては、有効打が無いからと言っていては、魔族なんかにビビってなんていられない。

　ならば、今僕に出来る事は何か無いか、僕は急いでステータスを確認する。

　そして、そこで見付けた反則的なチート能力…いや、ぶっ壊れスキルとも呼んだ方が良いのかな？
　〖全魔法オールマジック：LvMax〗と〖スキル：魂強奪ソウル・ドレイン〗と言う、本来であればあり得ない能力だった。

　全魔法…文字通りならば、どんな魔法であろうが使えると言う事。
　そして、魂強奪…このスキルはガーゴイルやゴーレムみたいな擬魂で動く物だろうがスケルトンとかのアンデッド、そして、ゴーストからですら魂を奪うスキルである。
　であるならば、聖騎士団…副団長の身体を奪い、受肉を果たす事で精神体アストラルボディーではなくなり攻撃が魔族にすら効くのではないか？と半ば確信じみた感覚に陥る。

　その為、ここは多少無理をしてでも、あの魔族ラドルを倒す必要がある。
　そして、僕の隣には、そんな不可能と思える事を、可能に変える奇跡を起こせる者がいる。
　ならば、何も畏れる事はない！次の瞬間、僕は隣にいる最愛の人に声を掛けていた。

「プリンッ！！」

　たった一言…ただ、名前を呼んだだけ、ただそれだけなのに全てを理解したと言う様な笑顔でプリンは行動した。
　そして、それ・・は姿を現した。

　そう、俺・・とプリンが融合した姿…俺達が『魔王化』と呼んでいる姿である。
　人の形を取ってはいる物の、その姿は竜の力すらも取り込んだ事で、『デビル・ドラゴン・スライム』にパワーアップしているたのだ。

　久しぶりに融合した、俺とプリン…そして、これでもかと言うほどの力が身体の奥から湧き上がる。
　こんな力を人の身で振るおう物なら、少し動いただけで直ぐに自壊してしまうだろうと思えるほど強大な力を感じる。
　そして、何よりヤバイのが、全ての物を破壊してしまいたくなる様な破壊衝動。
　だが、ここで待ったを掛ける声が俺の心に語りかけてくる。

〔ご主人様、落ち着いて下さい！〕

　一言…そう、たったの一言で俺の中で荒れ狂っていた破壊衝動が霧散する。
　そう、俺は一人じゃない…プリンと一緒なのだ。
　それも、文字通り『一心同体』である。

　もっとも、基本となるベースは俺の人格であり、プリンはサポート担当と役割分担をしているので『一心』と言って良いのかは微妙ではある。

〔あぁ、ごめん…ちょっと暴走した。
　でも、もう大丈夫！反撃開始と行こう。〕

　俺はそう言うと、軽く右腕を振り、力の一部を開放する。
　すると、そこから放たれた風刃がラドルを襲う。

「ハッ！そんな物効く訳無いだろうがッ！！」

　ラドルはそう言うと除けもせず無防備のまま攻撃を喰らうと、後ろへと吹き飛ばされ木々を吹き飛ばしていく。
　これが只の人間とか魔物であれば、生きている可能性は皆無な程の威力なのが分かる。
　だが、ラドルは先程の公言通り、何事もなかった様に笑いながら戻ってきた。

「ギャハ、ギャハハハハハ！
　おやおやおや？どんな奥の手かと思ったら、ただ身体能力を上げただけなのかな？
　あ～怖い怖い、怖すぎて笑いが出ちゃうぜ、ギャハハハハハハハ！」

　そう、確かにラドルの言う通り、俺が『魔王化』と呼んでいる状態は、ラドルを倒す能力が備わった訳ではなく、基本となる能力が約10倍に跳ね上げただけの事。
　だが、よく考えて欲し…全ての能力が約10倍になる、コレの意味する所を…。

　仮に、時速100キロで走る車があったとしよう…それを10倍したら時速1000キロ…正確ではないが音速と呼ばれている約マッハ1の速度近くまで速度が出る事になる。
　本来であれば、それだけの負担は人間の体では耐えられない。
　そう、耐えられるはずがないのだ…だが、あり得ない事に、今の俺は種族は人族からスライムになっている訳で…その特性から、こんな無茶な状態でも平気で耐えられたりする。

　それ、すなわち、常識外れな事が出来ると言う事に他ならない。
　もっとも、こんな状態は俺だけ制御する事など不可能で、その鍵となるのはプリンである。
　そのプリンが、俺の出来ない部分をサポートしてくれるからこそ、使用可能な奥の手である。

　つまり、普通であれば、まず出来ない事なのだが…右を見ながら同時に左を見ると言った様な、通常では不可能な事すらも可能なのだ。
　ぶっちゃけ、何が言いたいかと言うと、今までにない魔法やスキルすらも使えると言う事。
　ならば、魔族であるラドルにすら、大ダメージを与える…どころか、滅ぼすだけの力が使えるのでは？と言う事なのだ。

　そして、それを証明するかの如く、俺は呪文を唱え始めたのだった…。