上 下
213 / 421
~第六章:冒険者編(後期)~

213ページ目…救助作業

しおりを挟む
 もうもうと立ち上がる煙が少しずつ晴れていき、その爪痕を鮮明に映し出していく。
 その結果、困った事に、僕の放った威嚇射撃?は、物の見事に建物の入り口だけでなく、建物の半分以上を吹き飛ばし半壊させていたのである。
 その為、僕達は当初の予定を大幅に変更して、負傷者の救助作業をするハメとなったのである。

「おーい、そっちはどうだー?」

 僕達のチームでリーダーを引き受けたラムダさんが他のメンバーに、要救助者がいないかを聞いて回っている。
 ちなみに、既に5人ほど救助されているのだが、死者はおろか重傷者もいなかったのは奇跡に近いのかも知れない。

「みんなー来てくれー!こっちに一人埋まってるぞー!」

 ん?今の声って、確かサブ…だよな?と、僕は声のする方へと向かっていく。
 すると、崩れた天井の下敷きになっている様で、隙間から片腕だけが出ている状態の人を見付けた。

「おう、サブ!こいつ生きてんのか?」
「へい、兄貴!先程、しっかりと腕が動いていやした。」
「そうか!とは言え、これだけ崩れているとなると、どこから手を付けて良いのか…。」

 まぁ、確かにこれだけ崩れてると、下手に手を出そう物なら、更に崩れて中の人は助からないであろう。
 そう、つまり逆に言えば、上手に手を出せば問題ないと言う事だ。

「あ、あの、僕が言うのも何ですが、僕が瓦礫退かしましょうか?」

 僕の台詞に、その場にいたみんなが一斉に僕の方を振り向く。

「い、いや、旦那はその…何もしない方が良いかな?と思うんですよ、はい。」

 と、ラムダさんが腫れ物を見る様な目で僕を見ながら答えてきた。

「す、すんません…全部、俺が悪かったですから、ムゲンさんは、向こうで座って、大人しくしていてくれませんか?」

 リーダーのラムダさんに続き、サブまでも僕に何かをさせようと思わないみたいで、少し離れた所で休んでいろと言うのには、僕は困ってしまった。
 とは言え、ここで何もしないのは僕も悪い気がするので、少しだけ力を貸す事にする。

「えっと…流石に、休んでいるのはどうかと思うので、この瓦礫の山だけは片付けますので…。」

 僕はそれだけ言うと、相手の許可を待たずに無詠唱で〖魔法:模型創造モデリング〗を発動させて、瓦礫をアーチ状に作り替えていく。

 そして、それが完成した時には、埋まっていた人を引っ張り出すだけの空間を確保出来る様にいたのである。

「だ、旦那…あんた、いったい何者なんです?」

 と、ラムダさんが僕に聞いてくる。
 なので、僕はありふれた言葉だが、よく使われている返事をする事にした。

「僕ですか?僕は、ただの冒険者・・・・・・ですよ?」
「「「「嘘吐きダウトッ!!」」」」
「何故にッ!?」

どうやら、僕の返事が納得出来なかった様で、暫くの間、全員から嘘吐き呼ばわりされる様になってしまったのだった…。

◇◆◇◆◇◆◇

「で、こいつらからの情報では『零の使い魔』とは関わりがない、と言う話だ。
 それで詳しく聞いた所、彼らは本部からの指示で動いているらしく、もしかすると、その本部の方では何か知っているのでは?と言う事だった。」

 と、捕まえた聖騎士団のメンバーから事情聴取をしたラムダさんが、わざわざギルドで待機を指示された僕の所まで来て報告をしてくれた。
 ちなみに、僕が担当した拠点は、重要な拠点ではなく、所謂いわゆる、下っ端の詰め所として使われていた建物だった様だ。

「あら?ご主人様の所ハズレだったみたいですね。」
「ご、ご主人様…落ち込まないで下さい。」
「主、仲間…ローラ達と一緒。」

 と、プリン達も僕の所と同じく何の情報も得られなかった事を伝えてくる。
 だが、ここで疑問が出てくる。
 そう、彼らが黒と判断された原因の一つに、各拠点に配置したスライムが、拠点に出入りする『零の使い魔』を見ている、と言う事だ。
 だが、拠点にいた者達は、その存在を知らないと言う。

 そして、その証言は、嘘発見器の様な魔法道具で検査しているので、嘘を付いている可能性はないと言う事だった。
 そんな中、ラムダさんが驚くべき事を言ってきた。

「そう言えば…一つ気になった事を言っていたな…。」
「気になった事?」
「あぁ、何でも、自分達彼等は『異世界』から迷い込んだらしく、元の世界に戻る為に行動していただけ、と言っていたんだ。
 まぁ、この世界には異世界から来た勇者が魔王を倒したと言う話があるくらいだから、そんな事もあるのかもしれないのだが、聖騎士団の全員が、その『異世界人』と言ってるんだから、とてもじゃないが信じられんよ。」

 と、言ってきたのだった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

処理中です...