~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

文字の大きさ
上 下
203 / 421
~第六章:冒険者編(後期)~

203ページ目…告白【1】

しおりを挟む
「主…ローラ、飛べないのか?」

 ローラが、目に薄っすらと涙を浮かべながら、僕に近付いてくる。
 そんなローラが可哀想になって、頭を撫でながら僕はローラに言った。

「大丈夫…心配するな、僕が必ずローラを飛ばせてあげるから。」

 そう言うと、ローラは無邪気な子供の様な笑みを浮かべてジャンプして抱き付いてきた。

「主、ローラ、空飛びたい!
 主、頼む…ローラを飛ばせて!」
「わ、分かったから、は、離れてくれ!」

 ローラにジャンプして抱き付かれた事により、僕の顔に柔らかい物が押しつけられる。
 僕は押しつけられている物の正体を知っているので、顔が赤くなるのを感じながら、慌ててローラを離しに掛かるが、思いの外、ローラの力が強い為か、思う様に外れてくれない。
 やっとの思いで、ローラを引き離すのに成功した時には、少し息が上がっていた。

 名誉の為に言うが、決して、興奮して息が荒くなった訳ではない。

 何はともあれ、僕はローラ用に調整したオリハルコンで作り上げたドラゴン・ゴーレムを調べ始める。
 もっとも、ゴーレムと言うよりはガーゴイルに近いのだが…。
 なお、鎧にもなるので、アンデッドではないが動く鎧リビングメイルと呼んだ方が良いのかも知れない。
 正直、種族としては何になるのか予想が付かない。
 もちろん、〖神眼〗で見ても、現在、鎧の形をとっている所為なのか、鎧としか表示されていない。

 そもそも、形状が変化すると種族欄の名称が変わるのだから、区別なんて出来るのかはなはだ疑問だったりする。

「とりあえず、再調整に入るから、ローラは、そのまま待ってて?
 あ!あと、毛を何本か貰えない?もしかしたら、ローラの情報が足りなかったのかも知れないから。」

 僕はそう言うと、ローラは何本か無造作に抜くと僕へ渡してくる。

「しっかし、何でダメなんだろ?
 ちゃんとローラを認識して動いてるのに…。」

 と、愚痴りながら、アレコレと確認していく。
 もっとも、鎧化までしているのだから、きちんと使用者と認識しているのだから、本来は問題ないはず…ここで、ふと感応石が悪いのかも?と思い、ローラに首輪を返して貰う事にする。
 幸い、ローラの気配は僕の直ぐ後ろにある…大人しく待つのが苦手な癖に、離れず待っている様だ。

「ローラ、ちょっと首輪を…んぐッ!?」

 ローラと名前を呼び、振り返ろうとした瞬間、ローラの気配が動いたのが分かった。
 その為、僕は慌てて振り向くのを止めようとするが、既に間に合わなかった。
 そう…ローラは、事もあろうか、名前を呼ばれた瞬間、鎧が直ったと勘違いしたのか、超至近距離にまで高速で移動してきたのだ。
 その結果、振り返った瞬間、二人の唇が触れあってしまったのだ。
 しかも、運悪く、僕は喋ってる最中であった為、口は開いている。
 その触れ合った一瞬の内に、ローラの舌をが口の中に入ってきてしまった。
 おそらく、頬を舐めたりする行動に出ようとしたのだろう。

 慌てて引き離そうとするが、ローラは勢いが付いていた為、そのまま僕の方へ体重を掛けて来た事により、押し倒されてしまう。
 そして…キスから解放された僕は、ローラの目を見た。
 明らかに、普段と目の色が違う…。

 そう言えば、最近、妙に色っぽくなる事があるローラ。
 それに、何故か僕に挑発してくるローラ。
 まるで、プリンに対抗する様に…。

 本人は否定していたが、今までの反応を見て、一つの結論に達した。

「ローラ、お前…発情期だろッ!」
「はぁはぁ…ローラ、発情期…違う…。
 ローラ、体が熱いだけ…水浴びしたら治る…。」

 男の僕には分からないが、それは水浴びで治まる物なのか?
 そんな疑問を感じつつ、とりあえず水浴びで治まるのであれば話が早い。

「そんな事より…主の匂い、発情してるのか?
 主は、ローラと一つになりたいのか?
 主が望むなら、ローラ、受け入れるぞ。」

 …ダメだ、完全に目が座っている…ローラ許せよ?
 僕は、無詠唱で魔法を発動させる。
 もっとも、僕は詠唱を知らないのだから必然的に無詠唱になるのだが、水を集める魔法を発動させる。

 本来は飲み水を集める程度の魔法なのだが、その魔法の制御を調整して、バケツをこぼした様な勢いでローラの頭から水を浴びせる。
 当然ながら、ローラに押し倒されている僕も、ローラと一緒に、びしょ濡れになる。
 自業自得とは言え、実に冷たい。

「主、ごめん…ローラ、迷惑掛けた。」

 ずぶ濡れになった事で、正気に戻ったのか、少し落ち着いたようだ。

「あ、いや…僕の方こそ、ローラの発情期に気が付かなかったのが悪い。」
「主、ローラに、嫌いになったか?」
「うん?それについては大丈夫だよ。
 ローラを嫌いになってなんかないから、安心して良いよ。」

 僕がそう言うと、再びローラが抱き付いて来た…ので、僕は、するりと避ける事にした。

「主、何故、避けた?」

 何故?と言われても、理由は二つある。
 一つは、びしょ濡れだからだが、もう一つの理由は…単純に、テレるからだったりする。

「いや、何となく…と言うか、避けないと、また暴走しそうだから?」
「あぅ…否定出来ない。」

 いやいや、そこは強い意志を持って、断固、否定してくれ。

「と、とりあえず、ローラがそんな状態じゃ、飛べない原因が分からないから、治まってからかな…。」

 もしかしたら、発情期が来ている所為で、魔力が乱れているからかもしれない。

「主、その前に、もう一度だけ試して良いか?」

 と、水浸しになったとは言え、落ち着いたローラが聞いてくる。
 まぁ、急いで帰る理由もないし、ローラが試したいなら構わないけど…。

「あぁ、それは良いけど…身体は大丈夫なのか?」
「問題ない…むしろ、さっきより落ち着いている。」
「そっか…なら、試してみたら?」

 もしかしたら、今度は大丈夫かもしれないしね。

「主、愛してる。」
「だから、言葉が違うってば…。」

 僕は苦笑しながら訂正をする。
 だが、発情期がバレた事で、ローラも何処か吹っ切れた様で、爆弾発言をする。

「間違っていない…ローラ、主と子作りしたい。」

 そう言うと、自分用のドラゴンに向けて『鎧化アームド』とキーワードを発する。
 次の瞬間、頬を赤く染めた戦女神が姿を現す。
 そして『間違ってない…ローラ、本気』と呟くと、そのまま物凄い速度で空へと飛び立つのだった…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。 最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。 更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。 「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」 様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは? ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。 突然足元に魔法陣が現れる。 そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――― ※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

処理中です...