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~第六章:冒険者編(後期)~

190ページ目…偵察【5】

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 『ギィー』と言う音と共に、何のスキルで作られたのか分からない扉が開いて行く。
 その扉を開けて入ってきたのは二人組の男女だった。

 とは言っても、逢い引きとかではなく、先程見たガラクタを取りに来た様だった。

「アルファ、このカップは貴重な物らしいから気を付けて運んでよ?
 傷付けたら、オメガに何言われるか分かった物じゃないんだからね!」
「うるせ~な、そんな事言うなら、デルタが持てば良いじゃね~か。」

 どうやら、男の方が『アルファ』、女の方が『デルタ』と言う名前らしい。
 更には『デルタ』と言う名前のヤツもいるみたいだが、これらの名前から想像するに、本名ではない筈だ。

「ふ~ん…そんな事言うんだ~。
 だったら、あの事、みんなに言っちゃおうかな~。」
「ちょッ、おまッ!?それは秘密にしてくれるって言ったじゃね~か!」
「だったら、どうするか分かってるわよね?」
「へいへい…ったく、そんなに性格悪いと嫁の貰い手居なくなるぞ?」
「大きなお世話ですよ?って言うか、それもセクハラですからね?」
「マジかッ!?やっぱ、時代が変わると、世知辛い世の中になっちまうのかね~。」
「はいはい…時代が違っても男は女に扱き使われるんですから一緒ですよ。
 そんな事より、さっさと、運んでよね?
 私はまた扉を壁に『錬成・・』しなきゃいけないんだから!」
「前から言おうと思ったんだが、それって必要あるのか?」
「あのね~…アルファの時代はどうか知らないけど、私の時代は防犯の為に施錠するのは当たり前なんですかね?
 それでも鍵を開けて泥棒に入るヤツが居るんだから、扉自体を無くしてしまえば安全でしょ?」
「そうかも知れないが、その所為で、わざわざ物置を使う為の部屋に呼び出されてちゃ大変じゃね~のか?」
「し、仕方が無いじゃない、そう言う性分なんだから…。」
「まったく、デルタも苦労人だな…。」
「それ言ったら、アルファだって…私何かより、こっちに来てから長いんでしょ?」
「まぁ…な、もっとも俺の場合は、こっちに来てから直ぐに冒険者になって、カネを稼いでたからな…。
 まさか、お仲間がこんなにいるなんて思いもしなかった。
 そう言う意味では、デルタ達に出会えて良かったと思ってるぞ。」
「はいはい、お疲れお疲れ!そんな事より、さっさと行くわよ?」
「チッ、冷て~ヤツだな…まぁ、早く戻らないと、他のヤツにからかわれるのも癪だから、さっさと戻るとするか…。」
「アルファ、ありがとね…。(ボソ」
「ん、デルタ、何か言ったか?」
「さっさと行けって言ったのよ!」
「へいへい、言われなくても行きますよ、行けば良いんでしょ!」

 そう言うと、二人は扉から出て行った。

 そして、再び『バチバチッ』と音を立てて扉が壁へと戻ってしまった。
 それを確認した僕達は物陰から出ると、先程の会話を思い出す。
 どうやら彼らも遠くから来ている様だ。

 ただ、彼らの会話で、一つ気になる事がある。
 それは、『時代』と言っていた事だ。

 まぁ、あの二人は親子ほどの年齢差がある様に見えたら、会話の流れで言っただけかも知れないが。
 ただ、その言葉が抜けない棘みたいに心に残っていたりする。

「ご、ご主人様…それで、どうなりました?」
「あぁ、ちゃんと見て・・覚えたよ。
 それと、幾つかの魔法も覚えた。」

 僕はそう言うと、クズハにサムズアップする。
 ちなみに、彼女が扉を作り出すのに使っていた技は、魔法ではなく〖錬金術〗と言うスキルで、扉を『錬成』していた様だ。
 その為、僕も同じ様に『錬成』すれば問題なく扉を作成出来るだろう。
 そうすれば扉の向こう側に潜入捜査が出来る。

 いったい、聖騎士団の目的は何なのか?
 また、あの料理店との繋がりは?
 調べる事はいっぱいあるが、まずは、敵かどうか…それからだ。

 僕は覚えたばかりの〖錬成〗で扉をするとクズハを連れて、潜入捜査を開始するのであった。

◆◇◆◇◆◇◆

 調べ始めて分かった事がある。
 やはり、ここは聖騎士団と名乗る者達の本拠地だと言う事だ。
 そして、残念な事に『零の使い魔』と繋がりがあると言う事だった。

 簡単に言うと、目的こそ分からなかったが、聖騎士団の収入の内の半分以上が『零の使い魔』の活動資金として流れている事。
 そして、彼らはある目的の為に、命懸けで行動し、何かを探していると言う事だけだった。

 ちなみに、料理屋の件も、収入に繋がるからと言う事までは突き止めたが、それ以上の事は分からなかった為、プリンの方に期待する。
 こうして、僕とクズハは潜入の痕跡を残さない様に気を付けながら宿屋へと引き上げていくだった…。
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