上 下
187 / 421
~第六章:冒険者編(後期)~

187ページ目…偵察【2】

しおりを挟む
 この世界では見掛けなかったマヨネーズと言う調味料の存在に、もしかしたら僕と同じ様な存在が居るのでは?と、警戒心を強めた僕達は急いで食事を終わらせると、早々に店を出る事にした。
 とは言っても、店内に放ったプチスライム達は、この店の監視を目的としている為、そのまま店内に待機させている。

 と言うよりも、プチスライム達は、完全に周囲に溶け込んでいる為、肉眼では確認出来ない上に、認識阻害や気配遮断等のスキルも持っている、気配探知でもその存在が分からないほどの隠密性なのだから、これほど監視に向いている存在はいないのではないか?と思う。
 まぁ、その代わり、攻撃スキルは皆無なのだが…。

「しっかし、まさかマヨネーズが出てくるとは思わなかったな…。」
「そうですね、ご主人様の記憶から私も作ったりはしていますが、私の作る物よりも美味しかった気がします。」

 とは、プリンの台詞だ。

 もちろん、僕の記憶から読み取っている為に味やらは認識しているのだが、実際に作って食べるのとでは認識の違いが出てくるのだ。
 これは、人の好み…とも言えるべき状態ではあるが、人の感じる味覚に差がある為だ。
 故に、僕が食べたのとプリンが食べた物は、同じ物を食べても違った風に感じる訳だ。
 その為、初めて他の人の作ったマヨネーズを食べたプリンには、そこそこ驚きのある味だった…と言う訳だ。

「わ、私もビックリしました…ご主人様が驚いていたので興味を持ちましたが、あんなに美味しい物だったとは思いもしませんでした。」
「そう?だったら、新鮮な卵が手に入るならマヨネーズは作る事は出来るけど?」

 まぁ、レシピさえあれば、僕じゃなくても作るのだが…。

「流石に、こっちの世界では、長持ちさせるのは大変だから大量には作れないと思うけどね?」

 そう…こちらの世界では基本的に食料品と言うのは長持ちしない。
 そもそも、常に食材を冷やす冷蔵庫が無いのだから仕方がないのかもしれない。
 ただ、氷の魔法を使い、冷蔵庫みたいな使い方をする方法で食品を長持ちさせる方法もあるにはある。
 ただ、その効果には、かなりのロスが出るみたいで、上手く調整が出来ていない様だった。

 ちなみに、もしも僕が簡易版の冷蔵庫を作るのであれば、冷蔵庫の内部を直接冷やすのではなく、でっかい氷を作り、その氷から出る冷気を使い食品を冷やす方法を使うんじゃないだろうか?
 もっとも、僕が本気で作るのであれば、そんな古い冷蔵庫みたいなの物を作らなくても、魔石を使い直接魔力を冷気に変換する物を作り上げて、元の世界の冷蔵庫に引けを取らない様な冷蔵庫を完成させる事だろう。
 ただし、魔道具を作り出す知識はないから実現は難しいのだが…。

 と、話が逸れているので話を戻す事にしよう。

「それで、プチスラ達の様子はどうだ?」
「概ね、順調だと言っても良いと思います。
 ですが…やはり、隠密性重視の性能の為、基本的には敵の気配探知に気配に引っ掛からない様に行動は出来ますが、移動速度は物凄く遅いので厨房に辿り着くには、かなりの時を要するかと存じます。」

 と、プリンは言って謝罪をしてくる。

「あぁ、その辺は気にしなくて大丈夫だから、プリンが謝る必要なんて無いからね?
 それよりも、問題は聖騎士団と料理屋がどう繋がるのか…が、問題だよな…。」

 何やら、どうにも嫌な予感がするのだが原因すら判らないのだから、お手上げだ。

「あ、あの…ご主人様、プリン様の包囲網が時間が掛かるのでしたら、例の男が立ち寄りそうな場所を私達が直接行ってみるのはどうでしょう?」

 うん、クズハの言う通り、僕もその通りだと思う。
 ただ、僕とクズハの考え方には若干のズレがある。
 クズハの言う『立ち寄る場所への移動』と言うのは、今から何処に行く事を決めるから始まる。
 だけど、僕の言う『立ち寄る場所』と言うのは、すでに立ち寄っていた料理店の数々なのだ。

「クズハさん、ご主人様が無駄に料理屋に行ったのだと、本当にお思いですか?
 ご主人様は、今まで行った料理店の店主達が馬鹿な事をしでかさない為に監視する為にプチスラ達を置いてきました。
 ですが、その中でも怪しいお店には、プチドラゴンスライムを配置しました。
 つまり、先程、クズハさんが言った行動は既にしていると言う事です。」
「そ、そうだったんですね…余計な事を言って申し訳ありませんでした。」

 そう言って頭を下げるクズハ…それを見て、僕はクズハの頭を優しく撫でてから、頭を上げる様に言う。
 すると、目に涙を浮かべてはいる物の、クズハは笑顔を見せてくれた。
 次の瞬間、プリンに反応があった。

「あッ!ご主人様、プチドラのルシちゃんが聖騎士を名乗る怪しい者を発見いたしました。
 現在、〖スキル:光学迷彩ステルス〗と〖スキル:飛行〗…それと、〖スキル:気配遮断〗を使用しての追跡中です!」

 突如、放っていた7体のプチドラシリーズの1体からプリンに連絡が入る。

 余程の事がない限りは、プチスライムの上位互換でもあるプチドラゴンスライムが監視対象に見付かる可能性は限りなく少ないはずだ。
 しかも、何気に、そこそこの戦闘力も付与してある。
 なので、おそらくは、そのままそいつ等のアジトを見付け出してくれる事だろう。

 そこに、もし違法な物があれば各ギルドも、それを理由に何かのアクションをする事も可能になる。
 そうすれば、再びギルドに恩を売る事が出来るはずだ。

「よし、それなら急いで宿に戻るぞ!」

 プリンからの報告を受けた僕達は、急いで宿屋に向かう。
 何故なら、この宿屋は部屋は既に改造済みで、防音仕様の部屋の為、色々と作戦を立てるのに適しているからだ。
 もっとも、それならば〖空間転移ゲート〗の魔法で、遠く離れたメルトの屋敷に戻れば一番安全なのだが、あくまでも冒険者ギルドを立てた行動をする事で、冒険者ギルドの地位を回復するのを目的としての行動だったりする。
 そもそも、この宿屋も冒険者ギルドが管理する宿屋だったのだから…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

処理中です...