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~第六章:冒険者編(後期)~

186ページ目…偵察【1】

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「いらっしゃいませ、『天使の翼』へ、ようそこ~♪」

 僕達が店に入ると、元気な挨拶で出迎えてくる店員…。
 確かに、この世界の店でも、元気に客を出迎える店は多々あった…だが、この店のは少し違う気がする…。
 例えるならば、高級レストランではなく近所のファミレスの様な、気軽に訪れる事が出来るレストランの様である。
 正直、予想外の出来事だ…これでは、元の世界に戻ってきた様な雰囲気だ。

「お客様、何名様…って、お客様、どうかしましたか?」

 店の中をまるで物色するかの様に、キョロキョロと見渡す僕を不審に思ったのか、店員が尋ねてくる。

「あ、いえ…あまりに知ってる店の様な雰囲気だった物で、その…なんて言うか、驚いてしまって…。
 えっと、人数でしたっけ?僕達は3名です。」

 正確には3人+その他なのだが、それをバカ正直に言うと、警戒されるだけなので無視して話を進める事にした。

「おタバコは吸われますか?」
「いや、タバコは吸わない。」

 やはり、この店は色々と可笑しい。
 そもそも、この世界の飲食店では、タバコを吸うかどうか聞く事はない。

「でしたら、こちらの『禁煙席・・・』がお薦めです。
 席にご案内しますので、こちらへどうぞ。」

 店員はそう言うと、僕達を席へと案内してくれる。
 そんな中、僕は、ますます元の世界のファミレスか?と言う疑問が強くなってくる。
 先程も言ったが、タバコを吸うかどうかなんて、この世界の人達は気にしないのだから…。

「どうぞ、こちらへお掛け下さい。」

 店員の声で、先程まで色々考えていたのを覚醒させられ、現実世界へと戻ってくる。

「あ、はい…ありがとう御座います。」

 僕はお礼を言って、プリンとクズハにも座る様に指示を出す。
 すると店員はテーブルの横にあったメニュー表を取り出すと僕達に渡してくる。

「すぐにお冷やをお持ちいたします。
 それと、ご注文が決まりましたら声を掛けてください。
 すぐにご注文を聞きにまいりますので。」

 店員はそれだけ言うと、早歩きで戻っていった。

「ご主人様、どうかしましたか?
 何やら、神妙な顔付きですけど…。」
「た、確かに…今日のご主人様、ちょっといつもと違います…。
 ご、ご主人様、本当に、どうかしましたか?」
「あ、あぁ…いや、何でもない、ちょっと…ね。
 えっと…プリン、僕の記憶からファミレスの情報を検索してしてみてくれ。」

 僕は、プリンの中に眠る僕の記憶から、『ファミレス』に関する記憶を確認させる。

「なるほど、そう言う事でしたか…。
 確かに、こちらのお店では、ファミレスと同じ様なシステムを取っている様ですね。」

 やっぱりそうだよな…と、僕はプリンの意見に肯く。
 まぁ、クズハは僕の記憶見る事が出来ないので、除け者感が半端無いのか、黄昏れている様に見えなくもないのだが、それでも、僕達の会話に加わろうとするあたり、少し頼もしく思う。

「そ、それで…そのファミレスとは何ですか?」
「あぁ、ファミレスてって言うのは、ファミリーレストランと言う名前を省略した名称でね。
 家族で気軽に行くレストランって例えが一番分かりやすいかも?。」

 そう、この世界にもレストランと呼ぶお店は、あるにはある…。
 ただし、ファミレスみたいに、気軽に…そして、ラフな格好で来る様な店ではない。
 何処かの貴族であれば、それが当たり前の事で、気軽にご利用出来るのかもしれないが、当然ながら、僕みたいなヤツには、お洒落な服で着飾り、それなりの準備をして行くお店な訳で、絶対に、気軽に利用できるお店ではない。
 
 そんな中、プリンは僕に目で合図をする。
 すると、僕の気配探知に一瞬だけ、反応があった。
 そう…敵の本拠地とも言える、こんな場所でプリンは〖分裂〗を使いプチスライムを作り出すと、それを直ぐに高速で店のあちこちへと撃ち出したのだ。
 とは言え、ただ撃ち出しただけでは、相手に直ぐにバレてしまう可能性がある訳で…。
 それを可能にしたのは隠密系のスキルを撃ち出されると同時に発動させたたプチスライム達であった。

 プチスライム達は、天井やら壁に取り付くと、認識阻害も併用してなのか、そのまま完璧に気配を立つ。
 その為、そこに居るはずのプチスライム達を完全に見失ってしまった。
 ちなみに、プチスライム達は誰にもバレない様に、ゆっくりを移動して店内に死角がない様に移動を始める。
 そして、そのうちの何匹かは厨房へと入っていく。

 そのプチスライム達には高難易度のミッションとなるのだが、それでもゆっくりと…誰にも悟られない様に慎重に移動するのだから、情報収集とは言え、高性能なプチスライム達だと言えるだろう。
 情報命の戦いにおいて、本当にプリンが味方で良かったと思う。

 そんな中、店員さんが、お盆に3人分のお水を入れたコップを持ってくる。

「こちら、サービスのお冷となります。
 それと、ご注文はお決まりになりましたか?」
「いえ、もう少し考えたいと思います。」
「畏まりました、それでは、ご注文がお決まりになりましたら、声を掛けてください。
 直ぐに係の者が参りますので。」

 店員はそう言うと席を離れる。
 そして、先程店員が持ってきたコップには、ちゃんと氷も浮かんでいた。

「やっぱり、この店は他の店とかとは違うみたいだね…。」

 僕は店員の『お冷や』と言う名称に、もしや…とは思ったのだが、案の定、氷が浮かんでいたのを見て、疑問は確信へと変わる。
 やはり、この店には転生だか転移だか知らないが、僕と同じ世界の人物が関わっているのではないのか?と言う事を確信するのだった…。

◆◇◆◇◆◇◆

 元の世界の住人が関わっている…その確信を更に強める出来事があった。
 それは、味を奪われたと言う料理店と同じメニューが運ばれてきた時の事だ。

「おまたせしました、こちらがハンバークとなります。
 鉄板が、大変お熱くなっていますのでご注意下さい。
 あと、お好みでこちらの『マヨネーズ・・・・・』を付けて食べますと、もっと美味しくなりますよ。」

 そう、今まで色んな場所でご飯を食べてきたのが、今まで出会う事のなかった調味料…それがマヨネーズだ。
 ちなみに、我が家では、食卓に普通にマヨネーズは出てくる。
 もちろん、僕が作った…と、言いたい所だが、残念ながら正しいレシピを覚えておらず、プリンが僕の記憶から作り方を引っ張り出してきて作ってくれた物だったりする。

 そう言えば、先程、店員は『マヨネーズ』を付けて…と言っていた。
 そして、日本人であれば馴染みの深いマヨネーズの味は、料理をより一層、美味しくする立役者でもある。
 これを見て、元の世界と無関係…と思う事は無理だと確信する。

 つまり、この料理を作り出した人…もしくは、それに関係する人物の中に、元の世界の住人が居るはずだと言う事だ。
 だとすれば、僕同様、何かしらのチートスキルを持っている可能性が出てきた。
 その為、僕はプリンとクズハに〖念話〗で、警戒を最大級に引き上げる事を伝えたのだった…。
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