~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

文字の大きさ
上 下
180 / 421
~第六章:冒険者編(後期)~

180ページ目…聖王都探索【2】

しおりを挟む
「た、大変申し訳ありませんでした!」

 奥から戻ってきたギルド受付嬢のお姉さんは、顔を真っ青にして僕達に謝ってくる。
 その際、勢い良く頭を下げた為、少々、胸元…谷間が目についた。

「いえ、僕達は怒っていませんので、お気になさらずに。」

 僕は直ぐ様、問題ない事を伝える。
 そうしないと、プリンがボロカスの様に文句を言いそうだったからだ。

 僕は、横目でプリンを見ると、案の定、ほっぺたを膨らませて不機嫌な態度を取っていたのだが、さっき、僕がブラックドラゴンの部位を〖鑑定〗に出した時に、悪戯と言って、僕と一緒に笑っていたのに、何で今は不機嫌なのか疑問に思う。

「あの~失礼ですが、ギルドカードを拝見しても宜しいでしょうか?」
「えぇ、全然問題ないですよ?」

 僕はそう言うと、お姉さんにカードを渡す。
 すると、『うわ~』と言って、再び慌てて奥へと走っていってしまった。
 あの~、流石に持って行かれると困るんですけど…。

 すると、先ほどのお姉さんが、すぐに一人の爺さんを連れて戻ってきた。

「お初に目に掛かります、ワシはこのギルドのギルドマスターでクラウスと言う者です。
 このパフィーがとんだ失礼をした様で、ワシの方からも謝罪をさせて頂きたいと思います。」

 これはまた…何とも腰の低そうなギルドマスターである。

「いえ、先程も…パフィーさんですか?そちらのお姉さんにも言いましたが、どうかお気になさらずに…。」

 まぁ、だからと言って、まったく気にしない様だと、問題があるが…。

「では、お言葉に甘えさせていただきたく存じます。
 それでは改めて、お伺いを致したいのですが、こちらのギルドに何のご用でしょうか?」
「それはですね?今日、メルトの町から此方シロガネに着いたのですが、少々、路銀が減ってきましたのでクエストを受けようかと思いまして…。」

 何処で誰が聞いているか分からない為、バカ正直に、『零の使い』を調べに来たとは言えず、路銀が少なくなったからと誤魔化しを入れる。
 まぁ、普通であれば、こんな話を信じるとは思えないのだが…。

「なるほど…ですが、おそらく掲示板を見てガッカリしたと思われますが、当ギルドでは基本的に雑用クエストを扱うばかりでして…ムゲン様が満足出来るクエストはないかと思われます。」

 一瞬、自己紹介していないのに何で名前を?と思ったが、先程、冒険者カードをパフィーさんが持って行ったのだから、いくらでも見る機会はあったはずだ。

「えぇ…先程、パフィーさんに聞きましたが、何でも聖騎士団の方に、討伐クエストが流れているとか。
 しかし、魔物の討伐と言えば、普通は冒険者の仕事と言うイメージがあるんですが、何でそんな事になったのですか?」
「それが…ワシにもよく分からんのです。
 いつの間にか、依頼が来なくなり、聖騎士団に取って代わられた、と言う感じで…。
 正直、未だに何故そうなったのか、皆目、見当も付かないのです…。」
「つまり、原因不明なのですね?」
「お恥ずかし話ですが、その通りです。」

 聖騎士と言えば、特別な加護を持った騎士で、強力な騎士と言うイメージがある。
 そのイメージそのままの存在であるのなら、まぁ、こんな風に危ない仕事に騎士が立ち向かうのも納得がいくし、依頼が聖騎士団へと流れるのも理解出来る。
 ただ、本当にそうなのか?そもそも、今まで田舎メルトにいたとは言え、『聖王都』の聖騎士の噂など一度も聞いた事がないだの。
 だとしたら、いったい何処から現れたのか…。

「あの…失礼ですが、聖騎士ってどの様な人達か伺っても?」
「それは、白い鎧を着た騎士達の事ですね。」

 パフィーさんがクラウスさんの代わりに答えてくれた。
 うん、でも聞きたいのは、どんな格好をって話ではないんだよね…。

「これこれ、パフィー、こちらの方は、その様な事を聞いておるのではない。
 とは言え、パフィーの言う事も正しいがの。
 確かに白い鎧を着ているのもそうなのじゃが、皆が皆、見た事もない様な強力な魔法を使う上に、王様より直接この街を守る様に言われたとかで、下手な貴族よりも権力があるとか言う噂ですな。
 もっとも、裏ではとんでもない事をしていると言う噂もあるじゃが、何をしているかまでは全然聞こえてこないがの。」
「ちなみに、何人くらいいるんですか?」
「正確な数は分からんが、ワシが見た事があるのは、謁見の間で王様の護衛に付いていた、7人じゃな。」

 7人…か、多い様な少ない様な微妙な数だが、下手に探ると、藪蛇になりそうだから、もう少し情報が集まるまでは放置しとくのが無難な様だ。

「分かりました、ありがとうございます。」
「いやいや、大して役に立てず申し訳ない。」

 そう言うと、頭を下げるクラウスさん…その姿から、かなりの疲労が見て取れた。

「あの…失礼ですが、だいぶお疲れの様子、もし宜しければ、こちらをどうぞ。」

 そう言うと僕は持っていた小さな小瓶…回復薬《ポーション》をクラウスさんに渡す。

「これは…見た所、ポーションとお見受けしますが、よろしいので?」
「はい、やはり健康が一番ですので…それでは失礼いたします。」

 僕はそう言うと、二人を連れて宿屋へ戻るのだった。

◆◇◆◇◆◇◆

「さて、二人共、これからどうする?
 幸い、この宿屋は思ったよりも安いので、しばらくは泊まれるとして…問題は、聖騎士と呼ばれている者達の事と『零の使い魔』の探索…だな。」
「それと、美味しい物…ですよ、ご主人様。」
「あぁ、そうだった…それが本来の目的の筈だったからね。」

 一応、表向きの理由となっているが、実際、それがメインである。

「そ、それで…どうしましょう?」
「ご主人様、協力していただけましたら、一つ方法が…。」
「ん?どういう事だ?」
「まず、『魔王化』します。」
「…ここで?」
「はい…その後、分裂して多数のプチスライムを作成します。」

 確かにプチとは言え、スライムであれば潜入捜査にはもってこいであろう。

「なるほど…それで、そいつ等を使って情報収集って訳だ。」
「はい、それと…今回、私も嫌な予感と言うのですか?
 何か危険な感じがしますので、保険を用意しておこうかと…。」
「保険って、どんな物を?」

 プリンは、僕の感じる違和感は感じない様だが、別件で危険の予感は感じている様だ。

「それは、女の秘密ですよ♪」
「はいはい…なら、チャッチャとやっちゃいますか。」

 そう言うと、僕はプリンと〖融合〗して『魔王化』するのだった…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。 突然足元に魔法陣が現れる。 そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――― ※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

処理中です...