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~第六章:冒険者編(後期)~

175ページ目…聖王都への旅路【6】

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「ドナドナド~ナ、ド~ナ~♪」

 『聖王都』に向かう移動中、何も問題イベントが起きない事で、暇を持て余しているのか、プリンが嬉しそうに歌ている。

「あのさ、プリン…その歌を嬉しそうに歌うのは、色んな意味で間違ってるから、流石にどうかと思うぞ?」
「そうなんですか?先日、ご主人様の子供の頃の記憶から偶然見付け、引き出してきたのですが…。」

 何をどうすれば、子供の頃の記憶を漁る事になるのか疑問だが、まぁ、歌の一つや二つ歌ったりするのは問題はない。

「そうなんです、そもそも、何でこんな歌を子供の頃、この曲を音楽の授業で歌わされたのか未だに疑問なんだから…。」

 そう、確かに生きていく上では重要な話なのだろうが、小学校で歌わされるのは本当マジで疑問だったりする。
 もっとも、そう言う時代だと言われればそれまでだし、それに文句言っても仕方がない。
 既に終わった事である。
 何より、元の世界ではなく、異世界に言っても意味がない事だったりする。
 ちなみに、僕は、この曲を『暗い感じの曲』としか覚えていない。

 そう考えると、元の世界の歌を、こっちの世界異世界で広めたとしても、何処からも苦情が来るなんて事もないんだよな…と、悪い考えが浮かぶ。
 まぁ、流石に、いくら異世界とは言え、他人の歌を自分の歌として発表するの気が引けるので、直接発表するのは止めておこうと思う。
 そもそも、こっちの世界の歌と言うのは、主に吟遊詩人が英雄譚えいゆうたんを歌ったりする事が多いのだ。

 その為、元の世界の歌が流行るとは思え…いや、普通に流行るかもしれない。
 とは言え、僕自身、ある程度、歌は覚えていても曲を弾けないので意味がないか…。

 最近の歌はあまり覚えていないが、ちょっと前の歌やアニソンならば…と思い、何故か『ル○ン三世のテーマ』を口ずさんでみる。

「あ、あの…ご主人様、何か悪い物でも食べましたか?」
「ちょッ!?それ、酷くないッ!?」
「で、ですが…普段のご主人様が絶対に言わない台詞ですから…。」

 クズハが心配するのも仕方がないと言えば仕方がないのか?
 そりゃ、『真っ赤なバラはあいつの唇』とか恥ずかしい台詞なんて言う訳がない。
 だけど、ガラじゃないかもしれないが、好きなんだから仕方がないじゃないか。

「ご主人様、大丈夫ですよ?あんな小娘には分からないでしょうけど、私にはご主人様の事なら全部分かってますから♪」

 こっちはこっちで変な誤解を…いや、プリンとは記憶を共有しているので、全部分かっていると言うのは嘘ではないんだろうが、何なんだろう?この敗北感は…。

 と言うか、またクズハが僕をバカにしたと思ったのか、プリンのダークな部分が顔を出してるな…。

「プリン、クズハは僕をバカにした訳じゃないからね?」
「はい…ですが、クズハさん!あなた貴女はご主人様の何なんですかッ!」
「え、えっと…ど、奴隷です!」
「それならば、先程の言葉は、ご主人様に対して、無礼にも程があると思わないのですか!」

 確かに、プリンの言う事は正論だと思う。
 だが、少し傷付いたとは言え、そこまで言う必要はないと思うのだが…。

「プ、プリン様、ごめんなさい!」
「私に謝ってどうするんですか!あなたが無礼を働いたのは他でもない、ご主人様に対してですよ!」

 もしかしたら、これはプリンなりの教育のつもりなのかもしれない。
 だが、僕自身、クズハを奴隷扱いしたくないのだが?

「まぁまぁ、プリンも落ち着いて?
 それに、僕はクズハを奴隷して扱うなと言ってるよね?」

 代わりに、メイドとして働いて貰ってる訳だが…。

「で、ですが、ご主人様を…。」
「とりあえず、まずは落ち着いて?そもそも、クズハは僕達との関係が切れてしまうのが怖くて、奴隷のままでいるだけで、本来なら、奴隷から解放されてる筈なんだよ?
 それでも、切れない繋がりが欲しくて、奴隷のままでいたいと言ってるんだから…。
 僕が奴隷として扱ってないんだから、プリンも奴隷として扱ったらダメだからね?」
「うぅ…ご主人様は、クズハの味方なんですね…。」
「いや、クズハだけの味方ではなく『プリンとクズハ《二人》』の味方だよ。」

 もっとも、二人だけじゃなくアリスにローラの味方でもあるけど、今は良いだろう。

「だから、二人には仲良くして欲しいんだよ。」
「うぅ…分かりました、ご主人様に従います…。」
「うん、ありがとう。」

 僕はそう言うと、プリンの頭を優しく撫でるのであった。

◆◇◆◇◆◇◆

「クズハ、疲れただろう?そろそろ代わろう。」

 暫くの間、荷台側でプリンと一緒に休んでいた僕はそう言うと、荷台側から御者側へと移動する。
 その後、クズハの隣に座ると手綱を渡す様に言う。

「ご、ご主人様、もうお体の具合は良いのですか?」
「うん、流石に、あれだけ休んでいたからね…。」

 そう、あの村を出てから既に4時間は経過している。
 その為、お腹の張りも少しマシになり、何とか動ける位には回復している。

「それに、ちょっとペースを上げないと、予定よりもかなり遅れてしまってるからね…。」

 正直な話、先程の村では食料は大量に手に入った。
 だけど、その分、予想以上に時間が掛かってしまっている。
 そもそも、宿屋で泊まった方がゆっくり眠れるからと言う事で泊まったのに、朝から無茶な量の食事を食べるハメになったのは予想外だった。
 いやまぁ、大食いして動けなくなうのが予想通りだったら、逆に、普段から何考えてたんだ、お前?って話になるんだけどね?

 とは言え、流石に安全運転は重要なのだが、クズハの操縦では遅すぎる。
 一応、それでも普通の馬車並の速度は出ているとは思うんだが、このペースだと次の村まで辿り着くのが遅くなってしまう。

「は、はい…では、ご主人様、よろしくお願いします。」

 そう言うと、クズハは僕に手綱を渡してくれた。
 その際、クズハの手に触れたのだが、何故か俯かれてしまった。

「あ、あの…な、中に…ご主人さまの邪魔になるといけないので中に入っておきますです、はい。」
「あぁ、クズハも慣れない操縦で疲れただろうから、ゆっくり休んでおくと良い。」

 僕はそう言うと、クズハを荷台の方へと戻らせる。
 しかし、クズハのヤツ、声が裏返ってたが、何かあったんだろうか?
 まぁ、いっか…それよりも、ちょっと腹ごなしに飛ばして行きますか…ね。

 ちなみに、余談ではあるが魔力を使うと、それを回復するのに栄養を使うのかお腹が空く。
 その為、その所為かどうか微妙だが、魔法使いの人は痩せてる人が多かったりする。
 故に、ゴーレム馬車の操縦に魔力を使う

「っと、加速するから、気を付けて乗っておけよ!」

 荷台の二人に、そう声を掛けると、僕は手綱に魔力を送りゴーレム馬車を加速させて行くのであった…。
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