~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

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~第六章:冒険者編(後期)~

167ページ目…目指せ、聖王都【8】

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 材料は揃った…唐突に、これだけ言われたら何を言ってるんだ、こいつは?となるはずだ。
 いや、分かってた事なんだけどさ。
 伐採した材木を運ぶのに悩み、やっと解決したかと思えば、なけなしのダンジョンポイントで部屋と、アイアンゴーレムを1体のみ作成して、何とか手に入れた大量の鉄。

 コレが意味する所は、やっと馬車が出来ると言う事だ。
 但し、今回作るのは、本当に馬車にしか見えないゴーレム馬車と言う事。
 その為、本来、この世界にない高速機動用ゴーレム通称:車とは違い、目立たずに移動が可能となる…はずである。

 とは言え、正直な話、僕は馬車なんて物は作った事がない。
 まぁ、それを言い出したら、車を作った事も無かったのだが、遊園地でゴーカートとかを運転した事があるし、親の運転する車助手席に乗った事もある。
 なので、多少なりだが車の知識があった為、最低限は分かった。
 もっとも、エンジンとかの駆動機部分は分からないが、そこら辺の事はゴーレムな為、面倒な部分に感しては無視出来たのは幸いだった。

 さて、話を戻すとしよう。
 僕は車同様、馬車を作るのは今回が初めてである。
 但し、車と似た部分があるのも確かである。
 なお、当たり前の事ではあるが、馬車と言うからには、当然ながら荷台と、それを引く馬が必要になる。
 そして、その馬に関しては鎧を着せた馬の形をしたゴーレムにするつもりである。
 そんな馬型ゴーレムを2体作り、二頭引きの馬車を作る予定である。

 問題は、馬車の荷台の方だったりする。

 大体の作りは、移動をする際に、何度か馬車に乗った事があるから、ある程度は分かるのだが、だからこそ通常の馬車では色々と危ない事を理解している。
 その為、ちょっとした小細工が必要になるだろう。

 まぁ、何はともあれ、馬車の荷台部分の研究をする為に、僕とアリスは、とある場所へ来ていた。

「御主人様、もう少しで目的の場所に到着します。」
「へ~、正直、こっち側なんて来る事がなかったからな…僕一人で来てたら迷子になりそうな場所だね。」
「ですが、御主人様ならこちらの区域に住まわれても、問題ないのでは?」
「いやいや、僕は普通の人だからね?こんな悪趣味な区画なんかには住みたくないね。
 と言うか、今の家、気に入ってるからね?」
「ありがとうございます、そう言っていただけると私も嬉しいです。」

 何も、このんで、こんな金持ち連中が集まる様な区域に住まないといけないのだ。
 もっとも、メルトの様な田舎の町なので、都会と違い、そこまで酷くはないと思うが…。
 だが、それ以前に、今住んでる家と、此方では決定的な違いがある。

「仮に引っ越し出来たとしても、アリスが居ないんじゃ寂しいからね。」
「御主人様、そんなに私の事を…うるうる…。
 あ、でも、引っ越しする場合、付いていく事は可能ですよ?」
「え?そうなの?」

 てっきり、今住んでいる家に憑いているから、引っ越しの際は付いてこられないのでは?と思っていたので、あっけらかんと言うアリスの発言に唖然とする。

「でも、それなら何でお化け屋敷になるまであの家にいたんだい?」
「それはですね、当時の御主人様が家を頼むと言って出て行かれた物ですから…。」
「あ~それで帰ってこないままだった訳か…。」

 全く、前の持ち主は何を考えていたのやら…とは言え、そのお陰で、僕は安く家を手に入れたのだから、その点は良かったと言える。

「はい、その為、私はあの家に縛られたままと言うか何と言うか…でも、そのお陰で、御主人様に会えたのです♪」

 それはまた、さぞかし寂しかった事だろう…。
 いくらブラウニーでも、何時戻るかも分からない主を待って、何十年、何百年も待っていたなんて…。

「まぁ、あの時は、危うくプリンに食べられそうになっていたけどね。」
「はい、あの時は、本当に死ぬかと思いました…もっとも、その後の御主人様の方が怖かったですけど…。」
「えッ!?確か、『生まれてきて、すいません』とか言ってた気がするけど…もしかして、『魔王化』した僕って、そんなに怖い?」

 仲間になったとは言え、全てが許される訳ではない。
 そう思って聞いてみたのだが…。

「いえ、は大丈夫です、『魔王化』しても御主人様は御主人様ですので…。」
「そっか、それなら安心した。」

 考えてみたら、そんな事があったのも、そんなに遠い話ではない。
 すでに何年も前の様に思えるが、まだ数ヶ月前の出来事だ。
 改めて考えてみると、こっちの世界に来てからと言う物、どたばたした日が続いている気がするな。
 だからこそ、こんな何ともない日常と言う物が大事なんだろうな…。

「あ、御主人様、見えてきました!あちらが、この町一番のお店です。」

 そうアリスが言って指さしたお店こそ、今回の目的地であるお店だった。

◆◇◆◇◆◇◆

「ふむふむ、さっきの馬車より、こっちの馬車の方が僕は好みかな…。
 アリスは、どっちの方が好き?」
「私としては、先ほどの馬車の方が…ですが、御主人様の馬車ですので、御主人様の選んだ方を優先させるべきだと思います。」

 と、アリスが切り返してくる。
 現在、僕達が居るのは、色々な需要に対して馬車を貸し出すお店だ。
 元の世界で言うならレンタカー屋さんと言った所かもしれない。

 その需要と言うのが実に厄介な物で、貴族なら派手で豪華な物、商人であれば大型の、荷物をいっぱい運べる物。
 それ以外にも、普通の人が大きな荷物を運んだりするのであれば、屋根も幌ホロもない、ただ、乗って運ぶ程度の物と、多種多様に用意されている。

 そんなお店に、僕達は色々な馬車の見学に来ている。

「それで、ご所望の馬車は見付かりましたかな?」

 只、どんな感じなのか見学に来ただけである。
 その為、店員に声を掛けられても、正直、困るだけである。

「いえ、どれも良い馬車だとは思うのですが、何と言うか、これだッ!って即決出来る様な物が無いですね。
 もっとも、僕が欲張り過ぎなだけなんでしょうけど…。」

 と、誤魔化しておく。

「そうですか…今現在、当店で今いてる馬車はこれだけでして…。
 あと、10日もすれば、今出払ってる馬車達も帰ってくる予定となっていますね。
 その中には、当店で一番良い馬車も帰ってくる予定となっていますが…。」

 ぶっちゃけ、あと10日も待つほど余裕はない。
 なにせ、明後日には、出発しないといけないからだ。

「そうですか…そちらも見てみたかったんですが、残念ながら僕達にはそれを待っている時間がないのです。
 ですので、今回は機会がなかったと言う事で…もし、次の機会があれば、その時はよろしくお願いします。」
「えぇ、その時は当店をよろしくお願いします。」

 と、頭を下げてくる…ほぼ冷やかしの客にも関わらず、流石は商売人だと言える。

「それでは、僕達はこれで失礼します、アリス、帰るよ。」
「はい、御主人様。」
「それでは、またのお越しをお待ちしております。」

◆◇◆◇◆◇◆

 そんなやり取りをして店の外に出てきた僕達は、『ふぅ…』と、大きな溜息を付く。
 僕達は、まるでコンビニで立ち読みをする様な感覚で、馬車がどう言った物か見学に来たのだが、思った以上に店側の重圧プレッシャーが凄かった。
 そもそもな話、わざわざレンタル馬車屋に僕達が来たのは、馬車を作る際の参考資料として見学に来ていたのだ。

 故に、店側としては何しに来たか分からない状態だったと思う。
 とは言え、わざわざ来た甲斐は十二分にあった。

「よし、これで思ったより馬車の方も、しっかりと作れそうだね。」
「そうですね、一応ですが、細部まで確認出来ましたので、御主人様ならバッチリだと思います。」

 流石に、見ただけで色々出来れば苦労しないが、それでも見た事により、気が付いた事も多々ある。
 そう言う意味では、見に来た事は正解だった。

「よし!なら、あとは帰って作成開始だ。
 っと、その前に…アリス、お腹空いたから、どっかで食べて帰ろうか?」

 メイド姿のアリスを付添にして見学に来たには理由がある。
 一人で見学するよりも、従者がいた方が、不自然にならないからだ。
 そんな我儘わがままに付き合ってくれたお礼の意味も込めて、アリスに食事を提案する。
 すると、アリスは笑顔で答えてくれる。

「はい、御主人様、御一緒させていただきます♪」

 こちらの意図を理解しているのか、何となく嬉しそうだ。
 こうして、僕達の馬車見学は無事に終了し、食事を済ませた後、家へと戻ったのだった…。
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