~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

文字の大きさ
上 下
160 / 421
~第六章:冒険者編(後期)~

160ページ目…目指せ、聖王都【1】

しおりを挟む
 ラオンさんと別れた僕達は、急いで家へと帰ってきていた。

「と言う訳で、居るか居ないか分からないが、例の男を捜す事となったんだけど…みんなはどうする?
 正直な話、もしも例の男が『零の使い魔』だった場合、今までの様に無事に帰ってくる事は出来ないと思う。
 なので、出来れば、みんなには残って欲しいと思うんだけど…。」
「ご主人様、私もお留守番なんですか?」

 と、プリンが、いの一番で聞いてくる。

「いや、相手が本当に『零の使い魔』だった場合、『魔王化』が必要になると思うから、プリンは一緒に来て欲しいと思っている。」

 そもそもな話、ラオンさんは、僕とプリンに対して指名依頼をしたのだから当然と言えば当然の選択である。

「では、私はご主人様と一緒に行きますね。」

 まぁ、最初から断るとは思っていなかったが、これでプリンが同行するのは決まりだ。
 後のメンバーがどうするかなんだが…。

「それで、プリンは付いてくるとして…他の人達は?」

 次に反応したのはブラウニーであるアリスだ。

「御主人様、私も付いて行きたいと思うのですが、私は家を離れる訳にはいかないので、今回もお留守番で宜しいでしょうか?」
「あぁ、アリスが来れないのは、ブラウニーだから仕方がないよ。
 とは言っても、向こうに着いたら〖魔法:空間転移ゲートト〗を使って呼べば、買い物とか食べ歩き位は出来ると思うよ?」

 そして、次に反応したのは…。

「主、肉あるか?」
「う~ん、どうだろ?まぁ、聖王都と呼ばれるほどの街なんだから、食べる物は多いと思うけど、それが美味しいかは別問題だぞ?」
「うぐぅ、美味しい物食べたい、でも、無いかもしれないのは困る。」

 流石、我が家の食いしん坊、やはり行動の原理は食い物に左右されるようだ。

「分かった、だったら、ローラは串焼きを買える様に、お小遣いをあげるから、お留守番の方が良いかもね?
  それに、聖王都に着けば、アリス同様に〖空間転移〗で呼べば良い訳だし…。」
「分かった、ローラ、お留守番する。」

 正直、ローラも強くはなっているが、『零の使い魔』が相手だった場合、ローラはまだ戦力外と思えるのだから、お留守番をしてくれた方が安心出来る。
 まぁ、相変わらず串焼きに釣られるのはどうかと思うが、自由奔放なのだから、それは仕方がないだろうと思う。

「それで…クズハはどうする?」

 そして、最後まで反応しなかったクズハに声を掛ける。

「え、えっと…その…ご迷惑とは思いますが、私も付いていきたいと思います…。
 あ、でも調査のお手伝いと言う訳ではなく、あくまでご主人様の身の回りのお手伝いと言う事で…です。」
「そっか…確かに、僕とプリンだけだと、色々と不安要素がいっぱいだからな…。」

 正直な話、プリンと二人きりだと、何が起こっても不思議じゃない気がする。
 それに、僕達は、それほど家事が得意ではない。
 そうなると、移動の際、野宿した場合、食事がかなり質素な物になる可能性がある。

 まぁ、実際には、〖空間転移〗で家に戻ってきそうな気もしなくはないのだが、クズハがいれば、わざわざ戻ってこなくても良いと思われる。
 それほど、クズハの家事スキルは高くなっているのだ。

「い、いえ…私なんかいなくてもご主人様達なら、何も問題は無いと思います。
 ですが、その…わ、私がご主人様と一緒にいたいと言うか…何と言うか…その…。」

 最後の方は何と言っているか分からないが、顔を真っ赤にしながら俯いて話すクズハ…尻尾の数も増えて、種としては成長したはずなのに、自信なさげに話すのは相変わらずの様だ。
 とは言え、これで全員の意見は聞いた事になる。

「さて、コレで、みんなの予定が決まった訳だが、今回の聖王都行きは、いつもなら時間短縮の為として高速移動用ゴーレム通称:車で移動するのだが、今回はしない。
 と、言うよりは、出来ないと言うのが正しい。
 ラオンさんに言われたのだが、あくまでも、今回は普通の冒険者として行動して欲しいとの事だったので、このメルトの町で馬車か竜車を借りるか乗り合い馬車での移動と言う事になっている。」

 ちなみに、乗合馬車とはバスみたいな物だ。

「ご、ご主人様、何故、車ではダメなんですか?」

 事情を知っているプリンと違い、事情を知らないクズハが聞いてくる。

「あぁ…元々、車と言う物は、こっちの世界には無いものだからね。
 そんな物に乗って聖王都に行ったりしたら、色々とトラブルが起きるだろうから…と、ラオンさんから、今回は普通の移動手段を使ってくれと注意されたんだよ。」
「へ~、そうだったんですね。」

 一瞬、クズハが返事したのかと思ったが、声の主はプリンか…って、プリンさん?僕と一緒に聞いてましたよね?
 それとは別に、クズハが返事もせずに考え込んでいる。
 いったい、クズハは何を考え込んでいるのだろう…。

「あ、あの…車がダメと言うのは、外見が問題ですよね?」
「あぁ、あんな外見の物なんて、こっちの世界にはない物だからね。
 だからこそ、馬が引く馬車や、トカゲの化け物の様な地竜が引く竜車でって話なんだけどね?」
「で、ですよね…だったら…でも、材料が…あ、でも時間が…ぶつぶつ…。」

 珍しく、クズハが悩む様にブツブツと言っている。

「えっと…クズハ、何か思い付いた事でもあるのかな?」
「あ、はい…いえ、何でも…で、でも、もしかしたら…。」
「ごめん、僕にも分かる様に言って貰えるかな?」
「ご、ごめんなさい!えっとですね…。
 車の外見が問題で行動に遅れが出るのであれば、馬車の形をしたゴーレムを作れば…と思ったんですが、時間も掛かるし…そんな簡単には無理…ですよね?」
「馬車の形のゴーレム…か、その形で作る意味が分からないが、馬車の形ではなく、馬の形のゴーレムを作り馬車を引かせると言うのであれば、比較的早く出来るんじゃないかな?
 なお、問題としては、馬の強度とか力がどれだけ出るかなど、材料の問題もある。
 鉄鋼を手に入れるにしても、鍛冶ギルドを通して別けて貰わないと、なかなか確保が難しい。」
「そ、それなんですが、ダンジョンに、アイアンゴーレムを作り出して、材料確保…なんて事が可能だったりしませんか?」

 何故か、いつも以上に食い下がるクズハ…だが、その考えは非常に良いアイデアかもしれない。

「あ~…確かに倒す前に分離させたパーツを回収出来れば、ドロップアイテム扱いになるから…。」

 そこまで考えて、その方法は案外上手くいくのでは?と思い、ダンジョンマスター代理のスライムに〖念話〗で声を掛ける。

〔もしもし、聞こえるかな?〕
〔これはご主人様ボス、はい、聞こえております。〕
〔えっと…ダンジョンポイントが足りるか分からないけど、魔物リストの中にアイアンゴーレムとかの…素材が回収出来そうな特殊ゴーレムは載っているかな?〕
〔ちょっと待ってください…今、確認を…。
 え~…あった、これですね。
 やはりダンジョンポイントを結構消費する様ですね。
 通常の魔物の10倍近くの消費が必要になりますが、それほど余裕がある訳では無いですが、作れない訳ではないですね。〕
〔そうか…だったら、僕がそちらに向かうので、それからゴーレムを作ってみようと思う。
 その時は、手伝ってくれるかな?〕
〔もちろんです、仮に我が身が砕けようとも、お相手させていただきます。〕

 うわ、なんたる忠誠心…プリンのヤツ、良い仕事してるわ…。
 予想以上にハイスペックのスライムの様だと、改めて思った。
 とは言え、今はあまり時間がないので…いちいち考えているのではなく、ダンジョンに向かうのが先決だ。

 僕は急いで〖魔法:空間転移ゲート〗を使い、ダンジョンへと飛ぶのであった…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

手違いで勝手に転生させられたので、女神からチート能力を盗んでハーレムを形成してやりました

2u10
ファンタジー
魔術指輪は鉄砲だ。魔法適性がなくても魔法が使えるし人も殺せる。女神から奪い取った〝能力付与〟能力と、〝魔術指輪の効果コピー〟能力で、俺は世界一強い『魔法適性のない魔術師』となる。その途中で何人かの勇者を倒したり、女神を陥れたり、あとは魔王を倒したりしながらも、いろんな可愛い女の子たちと仲間になってハーレムを作ったが、そんなことは俺の人生のほんの一部でしかない。無能力・無アイテム(所持品はラノベのみ)で異世界に手違いで転生されたただのオタクだった俺が世界を救う勇者となる。これより紡がれるのはそんな俺の物語。 ※この作品は小説家になろうにて同時連載中です。

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

処理中です...