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~第五章:ダンジョン開拓編~

149ページ目…オークション【1】

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 何やかんやでダンジョンの第5階層にて守護者を倒したプリン達、そんなみんなの疲労とかの関係で、一旦、ダンジョン攻略を終える事にした。
 そんな訳で、僕はみんなを連れて第1階層に戻ってきた。

 とは言っても、いちいち階段を上っていたのでは時間が掛かる為、裏技を使用しての帰還だ。
 もちろん、その裏技は他の人に見付からると大変なので、見付からない様にコッソリとである。

 もっとも、裏技と言っても、大した事ではないかもしれないが、ダンジョンマスターのみ持つ事が許される転移の指輪を使っての集団移動である。

 コレに関しては、サブマスターとして活動しているスライム経由でダンジョン内の人を確認して貰い、完全に死角となる場所を見付けて貰い、そこに転移する事により安全を確保しての転移となる。
 安全確認その事に関しては、只の端末として使うはずだったスライムを、高性能なスライムにしたプリンを褒めてあげたい。

「さて、僕はさっき手に入れた武器を見せてくるね?
 おそらく、直接買い取るのではなくオークションになるはずだから、すぐにお金が手に入る事にはならないとは思うけど、その分、購入金額は高くなると思うから、しばらくの間、ちょっと贅沢出来るかもしれないね。」

 僕はそう言うと、みんなに家に帰る様に言う。
 当然、ブラウニーのアリス以外は付いてこようとするが、今回は可哀想だが却下する。
 何せ、ガーゴイルを倒す時、みんな無茶しすぎて、予想以上に消耗が激しいのだ。
 それに、レベルが上がった際に、種族としても成長したヤツらが数人いる為、その強化に身体が慣れていない為、何が起こるか分からないのだ。
 それに、力加減を間違えただけで、大惨事になりかねないのだから、大事を取って休ませるのが、現状、一番良いと考えたからでもある。

 ちなみに、アリスに関しては、ブラウニーの種族としての制限があるから付いて来たくても付いて来れないと言うのが現状である。
 そんな訳で、僕は無限庫インベントリから高速移動用ゴーレム…通称:車を取り出すと、後部座席に〖魔法:空間転移ゲート〗と使い、家への門を開く。

 これなら、端から見れば単純に車に乗り込んだだけに見えるだろう。

 そうやって、みんなを車から家へと転移させると、僕は車を走らせギルドへと向かう。
 そして、メルトの町へ向かう途中で車から降りると、再び無限庫に車を収納する。

「よし、ここなら誰にも見られないな…。」

 僕は周囲を見渡す…誰も周囲にいない事を確認すると〖魔法:空間転移ゲート〗を使い我が家へと飛ぶ。
 正直、かなり無駄な行動ではあるが、ある程度は人目に付かないと、どうやって移動したのか?と言う問題が出てくる為、仕方のない行動だと思って欲しい。

 簡単に説明すると、僕の使う車と言うのは、この世界には存在していない物だ。
 故に、トラブル回避の為には、車の持ち主を分からなくしなければいけない。
 ただまぁ、いくらゴーレムとは言え、この世界で車が走っているのは十分問題だと思うだが…。
 その内、十分な素材を手に入れて、馬車型のゴーレムを作ろうと思う。

 ちなみに、馬の変わり大きなトカゲ?に荷台を引かせる事で、馬車ならぬ竜車と言う物になるらしい。
 とは言え、そんな珍しい乗り物があっても、流石に、何者にも引かれる事なく自走する荷台なんて物はない。
 つまり、僕の作り出した車と言うのは、この世界では非常に目立つ物となっているのだ。

 そんな貴重な物を、比較的、田舎の部類に入る、メルトこの町で見掛けた場合、何事かと騒ぎになるのは間違いないであろう。
 場合によっては、下賤な者が持つには相応しくないからと、車を取り上げようとする頭のイカレた貴族なんかもいるのではないだろうか?
 それを回避する為にも、二度手間になるが、この様な手段で移動するのだ。

 ただし、それの理由は二番目…本当の理由は時間短縮だ。

 ダンジョンからメルトの町まで、最低でも馬車で1時間…車であれば、のんびりと安全運転で走った場合30分は掛かるであろう距離だ。
 それを、魔力MPが続く限りは、回数制限無しで一瞬で移動出来る術を持っているのだ。
 なら、使わないと言うのは実に効率が悪い。

 正直な話…元の世界よりも、こっちの世界の方が時間は貴重だと思う。
 クエストにしろ何にしろ…こっちの世界では時間に追われて生活する事が多いのだ。
 とは言え、姿を見せずに移動していた場合、移動先で他の人に姿を見られると大変な事になる。

 その為、誰にもバレない様にラオンさんの部屋に、直接、転移した事があったのだが…その時に、ちゃんと表から入って来いと、激しく怒られた事があった。
 そもそも、盗賊とかが普通にいる世界で、どこにでも現れる事が出来る人がいれば、それだけで犯罪者扱いになると言う物。
 それを、わざわざ教える様な真似していたら、それこそ問題発生だ。

 ってな訳で、家からギルドまでは普通に移動した方が、面倒な事にならないのだ。
 個人的には、直接、ラオンさんの部屋に転移するのが、絶対的に早いと思っていても…だ。

「さてと…頑張ってギルドに向かうかとするか…。」

 プリン達の付き添いで、個人的には疲れているのだが、コレも仕事だと思って頑張ろう。

◆◇◆◇◆◇◆

 などと、くだらない事を考えながら歩いていたらギルドが見えてきた。
 最初の頃はそう思わなかったのだが、僕の家はギルドから比較的近い位置にあると思う。
 ある意味、慣れと言う物かもしれないが、遠いと思わなくなった。
 そう考えると体力が付いた…とも言える。

 そして、僕は冒険者ギルドの門をくぐる。
 相変わらず、冒険者ギルドここ喧騒けんそうが凄い。
 素材がどうとか、魔物がどうとか…それに、食堂が併設されている為、真っ昼間から酒を飲んでる人もいるのだから、さもありなんと言った所か。

 そんな喧騒を横目に、僕は受付へと足を運んだ。

「あ、ポプラさん、ラオンさんいる?」

 僕は、受付にポプラさんがいるのを見付け声を掛けた。

「あら?ムゲンさん、ラオンさんなら、今日は確か…まだ、お部屋にいるはずですが、また・・厄介事ですか?」
「また厄介事って…。」
「いえ、ムゲンさんが来た時は、いつもラオンさんがまた彼奴アイツは厄介事を…と言って、私に胃薬を持ってくる様に言うんですよ。」
「あぁ、そう言う事ですか…確かに、それなら否定するのは難しいかもですね…。」

 僕は、思わず苦笑しながら、そう答えた。
 うん、今度、よく効く胃薬でも持ってこようかな?

「それで、今日はどう言うご用件で?…もしかして、本当に厄介事なんですか?」
「いえいえ、確かに今日の要件は頼み事なんで、面倒かもしれませんが…厄介事では無いはずです。
 とりあえず、ラオンさんに面会をお願いします。」
「そうですか、では、少々お待ち下さい。」

 そう言うと、ポプラさんは奥の部屋へと入っていく。
 そして、暫くすると、ポプラさんが戻って来て、こう言った…。

「えっと…ラオンさんが言うには『彼奴は厄介事しか持ち込まないヤツだが、だからと言って会わない訳にはいかない…仕方がないから通してくれ。』との事です。」
「うわぁ…めっちゃ嫌がられてるな…。」
「えぇ、文面だけで言えば…ですが、本音は少し違うみたいですよ?」
「と、言うと…?」
「ムゲンさんが来た後は、確かに胃薬をお飲みになるのですが…それでも、やる気が出ると言いますか、生き生きとしてる事が多いので…ですが、この事はラオンさんには内緒ですよ?」

 そう言うと、ポプラさんは片眼を瞑る…所謂、ウインクと言うヤツだ。
 それを見た瞬間、僕は周囲を確認する。
 どうやら、誰も見ていなかった様で、フ~っと溜息を付く。

 ぶっちゃけ、このポプラさん…このギルドでも隠れファンが居るほど人気者だ。
 その為、必要以上に仲良くしていると、変なヤツらに絡まれる事がある。
 最初、その事を知らなかった僕は何が原因か分からなかったのだが、絡んできたヤツを暴走したプリンが締め上げて、白状させた為に知る事となった。
 まぁ、その所為もあってか、プリンは影で狂戦士バーサーカーなんて不名誉な二つ名で呼ばれる事もあるのだが、本人は、特に気にしていない。
 と言うより、若干、喜んでいる節もあるほどだ。

 何はともあれ、ラオンさんは部屋に通してくれ…と言っているのだから、部屋へ通して貰おう。

「では、案内をお願いします。」
「はい、ではこちらへどうぞ。」

 ポプラさんは、そう言うと案内を始める。
 正直、何度も来ているので部屋は分かるし、転移すればすぐなのだから案内など不要なのだが…受付嬢が案内すると言うのが決まりなので仕方がない。

『コンコンッ』

「ラオン様、ムゲン様をお連れいたしました。」

 ポプラさんが、ノックしてから部屋の中に居るであろうラオンさんに声を掛ける。
 その時の敬称が『様』になっているのは、接客モードと言うべきなのだろうか?
 毎度の事とは言え…この時だけは、ポプラさんは普段と違いキリッとした態度なので、一瞬、別人に見えてしまう。

「あぁ、分かった…ポプラ君は戻ってくれて結構だ。」

 中からラオンさんの返事が来る。
 その返事を聞いて、ポプラさんは僕に軽く会釈をすると、受付へと戻っていった。
 そして、僕も軽く頭を下げると、部屋の中にいるラオンさんに『失礼します』と言って部屋にはいるのだった…。
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