~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神

文字の大きさ
上 下
134 / 421
~第五章:ダンジョン開拓編~

134ページ目…交渉【1】

しおりを挟む
 その日、受付嬢のポプラは朝早くからやってきたムゲンとプリンの二人を待合室に待機させると、その足でギルドマスターであるラオンの執務室へとやってきた。

ギルドマスターラオン様、ムゲンさんとプリンさんが、ギルドマスターに大事な話があると、お見えになっておりますが、いかがいたしましょう?」

 すると、部屋の中から、疲れた様な声で返事が聞こえた。

「はぁ~、また、あの二人か…今度はどんなトラブルだ?
 まぁ、いい…私の部屋に通してくれ。」
「畏まりました。」

 ポプラはラオンに言われた通り、いつもの様に、ムゲン達をギルドマスターであるラオンの部屋へと案内する。
 なお、ポプラには、この二人がラオンの部屋に行った時、いつもラオンが胃薬を飲んでいるのが気になっていた。

 なので、今日も胃薬が必要かと思い、こっそり用意しておこうと準備を開始するのであった。

☆★☆★☆


「ラオンさん、お疲れ様です!
 実は、かなりやっかいな事になりまして、事後報告に来ました。」

 僕はラオンさんにそう言うと、念話でプリンに魔王化をする様に指示する。

 ぶっちゃけ、最初から魔王化しても良いのだが、その場合、色々とヤバイ状態にあり誤魔化しが利かない可能性があったのだ。
 その為、ギルドマスターであるラオンさん専用の個室とも言える執務室に入るまで、ただの人間・・・・・でいたのだった。

 もちろん、プリンも、その辺の事はしっかり理解しているので、なんら問題はない。

 と言うよりも、記憶を共有しているのだから、本来は説明しなくても良いのだが、プリンの場合、力任せで解決しようとする傾向が強い為、ちゃんと言葉に出して注意を促した方が良かったのだ。

「またか…お前が訪ねてくる時は、いつも厄介事だ『プリン、魔王化』…なッ!?
 ちょっと待て!いきなり魔王化するな!俺にも心の準備くらいさせろッ!!」

 プリンが部屋のドアを閉め、ラオンさんが部屋の外に音を漏らさない様に防音の魔法を掛けたのと同時に、プリンが〖融合〗を使い魔王化を完了させる。
 しかも…最初に冒険者登録をした際にラオンさんに見せた魔王化と違い、『七大罪』の称号を揃え〖魔王〗の称号を手に入れた状態で魔王化した姿は、今回が初めてだ。

 その為、初見であるラオンさんには、洒落にならない程の恐怖が押し寄せているのを想像するのは容易だ。

 何せ、クズハを除き、他人にとしてはラオンさんが初めてだったのだ。
 一応、ラオンさんの名誉の為に秘密にしておくが、後処理は大変だったと思う。

「いや、流石に今回の事は魔王化していないと、マジでラオンさんに殺されるんじゃないかと心配になって…最初から最終手段を使わせて貰おうかと。」
「い、いったい…何を…何をしたんだ…?」

 う~ん、ラオンさん、ガクガクブルブルと震えているが大丈夫だろうか?

「えっと…落ち着いて聞いて貰って良いですか?」
「だ、だったら、その魔王化を解除してくれ…このままじゃマジで寿命が縮まりそうだ…。」

 命令口調であるが、強がりでしかない事は明白である。

「仕方ないか…その代わり、攻撃とかしないでくださいよ?
 今回の事は、流石に悪いと思っていても、いつもみたいに甘んじて罰を受ける事は出来ませんので…。」

 僕はプリンに魔王化を解除する様に言うと、来客用の椅子に座る。
 そして、プリンも僕と同様に椅子に座った…と言うより、ベッタリくっついていると言った方が正しいか?
 ちなみに、魔王化の影響もあるが、プリンが僕の側を離れないのには理由がある。
 それは、何かあった場合、即座に対処する様に…僕を守ると言う姿勢を取っているのである。

 そして、僕の手の上に自分の手を重ねる…これにより、いざと言うときは一瞬で魔王化する事が出来るぞ!と言う意思表示だ。
 暫し、何一つ音がない世界が続いたが、ゴクリ…と喉を鳴らしたラオンさんが、意を決して僕に聞いてきた。

「そ、それで…今度の厄介事とは?」

 恐る恐る、ラオンさんが僕に聞いてくる。
 僕はどう説明して良いか迷っていたら、プリンが先に答えてくれた。

「この前のダンジョンと言えば分かりますか?」

 プリンの質問に、すぐに気が付いてラオンが答える。

「この前の…と言うと、初心者ダンジョンと言うことだよな?スケルトンが溢れた…。」
「そう、そのダンジョンなんですが、ご主人様が完全クリアしました。」
「ん?それって、第7階層を超える事が出来たって事なのか?」
「えぇ、それで、ご主人様があのダンジョンのダンジョンマスターになりました。」

『ゴンッ!』

 プリンの爆弾発言を受けてラオンさんが頭を机に打ち付ける…。
 あの音からするに…かなりの力で頭を打ち付けた様だ。

「何か凄い音がしたけど、その…大丈夫か?」

 僕は慌てて、ラオンさんに声を掛ける…が、もちろん攻撃されない様に近付く事はしない。
 あくまで、声のみで心配してるだけだ。

「あ、あのな…お前には、この状態が大丈夫に見えるのか?
 もし、そう見えるなら、良い病院を紹介するぞ?」

 そう聞いてくるラオンさんの顔には、物凄く疲れ切った哀愁が漂っている。
 うん…かなり疲れ切っているみたいだ。

『コトリッ…。』

 僕は、無限庫インベントリから、新しく作ったダンジョンで入手出来る、初級回復薬ポーションをラオンさんに差し出す。

「ん?これは?」
「あぁ、先ほど言った通り、ダンジョンマスターになってしまった・・・・・・ので、ダンジョンを改造してたんですけど、その過程で、作り出したポーションです。
 何と言うか、その…ラオンさんがお疲れの様だったので、1本差し上げますよ。」

 僕はそう言うと、ラオンさんにすぐに飲む様に勧めるのだった…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。 最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。 更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。 「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」 様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは? ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。 突然足元に魔法陣が現れる。 そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――― ※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

処理中です...