上 下
95 / 421
~第四章:冒険者編(中期)~

95ページ目…嫌な予感

しおりを挟む
「う、ううん…。」

 おや?やっと気を失っていた小さな妖精が目を覚ました様だ…。

 レオが咥えて来た時には妖精には蜘蛛の巣が付いていた…一応、噛み傷は無かったから、毒は受けて無いだろうが、万が一の事もあるから心配だったのだ。

「お嬢さん、大丈夫ですか?」

 完全に目が覚め周囲を確認している妖精に、俺は優しく声を掛ける。
 すると、すぐに、こちらに気が付いて返事をしてくれた。

「あ…はい、貴方あなたが私を助けてくれたんですか?」
「確かに俺は君を保護したけど、助けてはいないよ。
 君は、気を失う前は、どんな状態だったんだい?」

 そう…俺は、あえて遠回しに聞いた。

 何故なら、彼女を襲っていたのが蜘蛛であり、それをレオが助けたのか、蜘蛛の巣に掛かっていた彼女をレオが襲ったのか分からなかったからだ。

「えっと…最後の記憶は、大きな蜘蛛に襲われてる寸前、もっと大きな影に食べられ…あれ?何で私、生きてるの?」

 あぁ…なるほどね、これで謎が解けた。
 つまり、蜘蛛に襲われて危機一髪になっていた所を、レオが咥えて助けた訳だ。
 だけど、助けられた妖精にしてみれば、恐怖に継ぐ恐怖と言った所か?どうりで気を失ってた訳だ…。

「えっと…お嬢さん、君を助けたのは俺の仲間のレオなんだけど、どうやら助ける時に君に怖い思いをさせてしまったみたいなんだ、許して欲しい。」

 と、こちらは悪くないのだが下手したてに出て謝る。

「いえ、そのお陰で助かったから、我慢します。」
「あ、ありがとう…。」

 許すのではなく、我慢するなのか…助けて貰った癖に、図々しいな…と思うものの、別に彼女から助けてと言われた訳じゃないから、こればっかりは仕方がないのかもしれない。

 とは言え、助かった事に関しては感謝をしている様だし、プリンの様子も普段に比べて、微妙に可笑しい。
 何時もであれば、もっと威圧的な態度になると思うのだが…。
 しかし、そう言う事なら、変なトラブルが起きる前に、さっさと別れてしまった方が良いだろうと思う。
 そうと決まれば、僕はすぐに実行に移す。

「何はともあれ、君が無事で良かった。
 俺達は用事があるので、これで失礼させて貰う、君も気を付けて帰るんだよ?」

 そう言うと俺は妖精に背を向けて歩き出す。
 その際、妖精が何か言ってるが、あえて聞こえない振りをしてプリンとレオを連れて、バルムングさんがゴーレムを見たと言う湖へと向かったのだった…。

◆◇◆◇◆◇◆

「ここか…プリンは何か感じるかい?」

 俺は周囲に意識を巡らせるが、残念ながら何も感じないので、プリンに確認をする。
 当然ながら、レオも感知を働かせてる様だが、反応は無いみたいだな。

「いえ、私は特に何も感じません…ご主人様もですか?」
「あぁ、俺も何も感じないな…既にこの場所から居なくなったって事か?」

 そこまで台詞を言った時、遠くの方から強い力を感じる。
 魔王化した時の俺と同等…否、どちらかと言うと、俺よりも強い力を感じる…。

「プリン、レオ、緊急警戒態勢ッ!!」

 俺は慌てて声を掛ける…だが、それよりも先に、プリンは既に迎撃態勢を取っている。
 やはり、俺よりもプリンの方が危機感知能力は上なのかもしれない。
 そして、俺の指示を受け、レオは俺の側まで走ってきた。 

「ガウッ!ガウッ!」
「レオ、武装化アームドッ!」

 俺の命令を受けてレオの身体ボディーが分離し、次々に俺の身体へと装着されていく。
 そう、コレがレオの本来の姿で、生きてる鎧をイメージして作られた、俺の思考を受けて力を増加させる強化鎧…所謂、パワードスーツなのだ。
 まぁ、今回が実戦投入なんで実際の性能がどうなっているのか疑問だが、こちらに向かってくる反応の敵を相手にするには、十分、有効な装備だと思う。

 しかし、こんな早さで近付いてくる物の正体とは、いったい何なんだろうか?
 そして、悪い予感と言うのは、得てして嫌になるくらい良く当たる物。
 そんな嫌な予感を、俺はビシビシと感じていたのだった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~

星天
ファンタジー
 幼馴染を庇って死んでしまった翔。でも、それは神様のミスだった!  創造神という女の子から交渉を受ける。そして、二つの【特殊技能】を貰って、異世界に飛び立つ。  『創り出す力』と『奪う力』を持って、異世界で技能を奪って、どんどん強くなっていく  はたして、翔は異世界でうまくやっていけるのだろうか!!!

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

処理中です...