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~第三章:美味い物ツアー編~

92ページ目…配達【2】

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「実は、ムスビ山脈の一つに、オムスビさんと言うのがありまして…。
 この町からその山頂まで行ける道があるのですが、その中腹…6合目あたりに、ちょっと変わったドワーフ様がお住んでいまして、何でもお米から酒を造るとかで毎月配達を頼まれているのです。」
「あぁ、なるほど…それで、配達の人が戻らないので僕にお願いしたい、とそう言う事ですね?」

 米から酒を…と言うのであれば、日本酒と同じ様なお酒なのだろうか?
 もっとも、俺は未成年だから飲んだ事はないが…。

「えぇ、お恥ずかしながら左様で御座います。」

 ふむふむ、なるほどなるほど…。
 確かに、ちょうど山へ探索に出るつもりだったし、物はついでだ。
 とは言え、もう一つだけ確認しなければいけない事がある。

 依頼を受けるかどうかにおいて、もっとも重要な事…依頼料の話だ。

「それで、依頼料は…。」
「そうですね…では、前金で大銅貨5枚、無事に届けていただいた暁には銀貨を1枚と言うのはどうでしょうか?」

 つまり、日本の金で言えば、前金で5000円、無事に配達が住めば10000円…合計で15000円と言った所か?
 まぁ、無限庫インベントリ持ちの俺には重さは無関係だから、悪い話ではない…と思う。
 せっかくの機会だ、依頼を受けるのも良いだろう。

「分かりした…そう言う事でしたら、その依頼、お受けしましょう。
 とは言え、本当ならトラブル防止の為にギルドを通した方が良いのかもしれませんが、ギルドを通さなくても大丈夫ですか?」
「ま、まぁ、こちらとしては持ち逃げされたら困りますが、そこは信用すると言う事で…。
 それに、無限庫持ち自体少ないですし、冒険者をしているとなると、数人程度…ほとんど皆無でしょうから、万が一の場合、通報とか可能でしょうし…。」

 まぁ、確かに物がいっぱい入って持ち運びが可能になる魔法の鞄マジックバッグを持ってる人ならば少なからずいるだろう。
 だが、無限庫なんて超稀少スーパーレアなスキル持ち…ともなれば、探し出すのは可能だろう。

「は、ははは…途中で死んだり大怪我しない限り、それは大丈夫ですよ。」

 俺は苦笑しながら、そう言うと、店側が準備する間…仲間達に依頼を受けた事を伝える為、一旦、店を出るのであった。

◆◇◆◇◆◇◆

「ってな訳で、急遽、配達をする事になった。
 とは言え、何人もぞろぞろ行く様な依頼じゃないから俺だけで行こうと思うんだけど…。」

 そこまで言った時、プリンがその言葉を遮る様に大きな声で否定する。

「ダメです!確かにご主人様は強いかもしれませんが一人では危険です。
 最低でも、一人は連れて行ってください!」

 まぁ、確かに、何かあった時に一人なのと二人なのとでは、対処の仕方が変わってくる。
 プリンの言う通り、一人より二人の方が有利なのは間違いないだろう。
 ならば、ここはプリンに従った方が正解だと思う。

「って事だ…誰が一緒に来る?」
「「「はい!」」」

 と、アリス以外のみんなが手を挙げる…だが、さっきも言ったが、本来、僕だけで行くつもりだった依頼だ…仕方がないのでジャンケンで同行する人を決める。
 と言うか、ローラまで手を挙げているのには、少し気になるが…一緒に来てもお肉を狙っているなら無駄だぞ?

 そんな心配を余所に、ジャンケンが始まる…そして数度の後、勝敗を決した。
 その結果、プリンが僕に付いてくる事になった。

「んじゃ、アリス達を家に送り届けてから出発するか…プリン、よろしくね。」

 俺はそう言うと、〖魔法:空間転移ゲート〗を使い、家への門を開くのだった…。

◆◇◆◇◆◇◆

「お待たせしました、こちらは準備は出来ております。」

 家で色々と準備した後、店を尋ねると既に準備が完了しているのだろう。
 俺達が店に着いた時には、店主自ら店先に立ち俺達を待っていた。

「いえいえ、こちらこそ急な依頼にも関わらず、受けていただきまして助かります。
 それで、こちらが商品となっております。」

 店主は、すぐ側に用意された荷物を俺達に教えてくれた。
 って、これ…300kg位あるんじゃないか?と思う量が並んでいる。
 そりゃ、運び屋がいないとは言え、偶然見掛けた無限庫持ちの俺を頼る訳だ。

 しかし、この量で15000円の報酬と言うのは、少し安いのでは?と思う物の、無限庫を使えば重さは関係ない。
 それを考えると、仕方がないのかもしれない。
 まぁ、ちょっと予想よりも量が多かったが、約束は約束だ…。
 俺は諦めて、無限庫に全部回収する事にした。

「それでは、こちらが地図となっております。」

 そう言うと手書きの簡易地図を渡してきた。

「えらくシンプルな地図ですね…。」

 そう…渡された地図には、基本的には一ヶ所だけ曲がる道があった物の基本的には一本道…ビックリするほど簡単な地図だったのだ。
 もっとも、山道なので直線で書かれていても、実際にはカーブしてたりするのだが…。

「えぇ、そうですね、私もそう思います。
 でもまぁ、そのお陰で、商品の配達をする事が出来るんですけどね。」

 なるほど…言われてみれば確かに納得がいく。
 多少クネクネしていても、基本的には一本道、それならば迷う事はないだろう。
 実際、簡単に迷う様な所への配達だと依頼料が安すぎると思うからね。

「なるほど…では、俺達は今から配達に行ってきますね。」

 そう言うと、俺は店主に背を向けた。

「ちょっと待ってください!」

 ん?何故か店主が慌てた様に呼び止めて来た。
 俺は何事か再び店主の方を向く。

「どうしました?」
「どうしました?じゃありませんよ!何、前金を受け取らずに、さっさと行こうとしてるんですか!」
「あ…す、すいません…。」

 考えてみたら、今回の様に、前金を貰って仕事をする依頼クエストは、今回が初めてである。
 これからも、こう言う前金のあるクエストをする事もあるのだから、もう少し注意しようかと思った。

「クスクス…ご主人様ったら♪では、私が受け取りますね。」

 プリンはそう言うと、俺の代わりに店主から前金を受け取ってくれた。

「で、では、今度こそ、行ってきますね?」
「はい、よろしくお願いします。」

 そう言って、店主が苦笑いしながら送り出してくれた。

 こうして、俺達の新たな任務、配達が始まったのだった…。
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