上 下
78 / 421
~第三章:美味い物ツアー編~

78ページ目…木こり

しおりを挟む
『ザシュ!ザシュ!ギギギギギィィィィ…バタンッ!!』

 今、僕達はメルトの町の南にある森に来ていた。
 と言うのも、ラオンさんに言われた様に、自分達で材木を確保しに来たからである。

 そして、冒頭の音こそ、僕が木を〖闘気剣オーラブレード〗で切り倒したのだ。

「プリン、頼む!」

 これで何度目か忘れたがプリンに合図をする。

〔はい、ご主人様!〖魔法:石の刃ストーンエッジ〗!〕

 そして…僕の合図で、プリンの魔法が木の枝を綺麗に切り落としていく。

『シュパ、シュパ、シュパッ!』

 それにしても、よくもまぁ、ストーンエッジの魔法で綺麗に枝を切り落とせるものだと感心する。

〔では、クズハさん…枝を集めて置いてくださいね。〕

 魔法で枝打ちをしたプリンが、クズハに指示を出す。

「り、了解です。」

 うん、みんなの連携が上手くいってるみたいだ。
 まず、僕が木を斬り倒す、次にプリンが枝打ちをする、次にクズハが枝を集める。
 そして、最後に…再び、僕が倒した木を無限庫インベントリに入れる。

 このサイクルが家を修理する為の材木集めの手順となっている。

 ちなみに、クズハの集めた枝は、一ヶ所に集められている。
 後でまとめて無限庫に入れる為である。
 ん?何に使うのかって?薪に使うんですよ。
 既に練習がてらではあったが、〖魔法:模型創造モデリング〗を使えば、薪にする以外使いみちがなさそうな枝でも、他に仕えるのは確認済みである。

 そう考えると、モデリングの魔法を使って商売をするのも面白いかもしれない。
 幸いにも手に入れた家には、少し大きな庭もある…小さい小屋でも建てれば、立派な…立派じゃないかもしれないが工房だって出来るだろう…。

〔ご主人様、魔力が残り僅かなので、補充良いですか?〕
「あぁ、構わないよ。」

 僕はそう言うと、左手をプリンに向ける。
 プリンの〖スキル:魔力強奪マナ・ドレイン〗は、対象に直接触れないと吸収出来ない。
 つまり、左手から吸収してくれと言う意思表示なのだ。

〔それでは、ご主人様…いただきますね♪〕

 そう言うと、プリンは僕に近付き、そっと触れる。

『ちゅ~~~♪ポンッ!』

 ある程度の可能性は予想はしていたが、それでも確率としては低いと思っていたのだが、プリンがキスをしてきた。
 もっとも、体力が減らなかった所を見ると〖強奪の接吻ドレイン・キッス〗ではなく〖魔力強奪マナ・ドレイン〗の様だ。

「えっと…プリンさん、なんで左手を出したのに、キスして魔力を回収したのかな?」

 だいたいの予想は付く物の、一応、念の為に聞いてみる。

〔だって…がキスして魔力を貰うのに、妻である私がご主人様の手からなんてありえませんわ!〕

 そう…先程、ブラウニーが僕から魔力を貰う際に、キスをして魔力を貰った事に対して、ヤキモチを焼いていたのだ。
 とは言え、プリンとブラウニーのアリスとの仲は決して悪い訳ではない。
 ヤキモチの部分が大半を占めてるとは言え、単にキス出来る口実が欲しいだけの様だ。
 まぁ、僕としてもプリンとのキスは満更ではないのだが…。

 そんな事を考えながら、僕は再び木を斬り倒した。

◆◇◆◇◆◇◆

 その後、更に木を10本近く斬り倒し僕達は撤収する事となった。

「世界と世界を繋ぐ門、我が意志持ちて彼の地へ門を開け!〖魔法:空間転移ゲート〗!」

 すると、僕の目の前に魔方陣が現れ…そして空間が歪む。
 ちなみに、先程の詠唱はまったくのデタラメだ。
 そもそも、僕は詠唱を知らないのだから当然と言えば当然である。
 只、それとなく格好良い感じの詠唱擬きを唱え『無詠唱』でゲートを発動させただけの事。
 ちょっとした見栄みたいな物である。

「みんな、帰るよ~!」

 と声を掛けると真っ先に門を潜ったヤツが居た。

〔クスクスクス、まったくローラさんは元気ですね。〕

 そう、今まで伐採作業に加わらず、森の中を走り回っていたローラだが、ゲートが開くと我先にとゲートを潜ったのだ。
 そして…クズハ、僕&プリンの順番で家へと戻ってきた。

「お帰りなさいませ、ご主人様。
 それで、材木の確保は…どうなりましたか?」

 と、僕の姿を確認したアリスが、遠慮がちに聞いてくる。

「あぁ、十分確保出来たと思うよ。」

 僕はそう言うと庭に行き、森で採取した木を山積みにしていく。

『ドカッ!ドカッ!ドカッ!』

 これで、家の修理はすぐに済むだろう…そんな風に考えていると、その考えが甘かった事を知った。

「こんなに沢山…ご主人様、ありがとうございます!
 あとは暫く乾燥させて…それから修理しますね。」

 と、アリスが言ってきたのだ。
 そう言えば…昔、じぃちゃんが、木材を使う時は十分に乾燥させてから使わないと、反りが入って使い物にならなくなるから、十分に乾燥させた木を使わないとダメだと言っていた事を思い出した。
 しっかし、改めて思うが、僕のじぃちゃんって本当に色々な事教えてくれたよな…。

「御主人様、どうかしました?」

 いかんいかん、少し考え事が長かったみたいで、アリスに心配されてしまった。

「いや、何でもない…ちょっと昔の事を思い出していただけだよ。」

 僕はそう言うと、アリスの頭を撫でてから、家の中に入ったのだった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

処理中です...