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~第二章:冒険者編(初期)~

60ページ目…一時撤退

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『ドカッ!ひゅ~~~ドサッ』

「グハッ!」
「だ、大丈夫ですか?」

 ん?今の声はクズハ…だよな?
 僕は慌てて声のした方を向く…そこには、後方で一緒に戦っていた冒険者の一人が倒れている。
 どうやら、間をすり抜けたゴブリンの攻撃を受けて吹き飛ばされてしまった様だ。

 そして、その側に…クズハが座って、その冒険者を起こそうとしていた。

「お、俺の事は良いから離れて敵を倒せ!」

 倒れていた冒険者が、クズハを押しのけるように叫んでいる。
 その次の瞬間、その冒険者に斬りかかるゴブリンが一匹…。

「危ないッ!」

『ザシュッ!』

「きゃ~~~ッ!」
「ク、クズハッ!」

 飛び散る鮮血…次の瞬間、僕の肩に設置してある骸の魔銃から『バシュッ!』と言う音と共に魔弾が発射される。
 攻撃したのは、もちろん鎧に擬態してるプリンだ。
 プリンの攻撃は、クズハを斬り付けたゴブリンの頭を吹き飛ばし黒いチリに変える。

 まだ周囲に魔物は多数居るが、それを無視して僕は急いでクズハの元へ駆け寄った。

「ク、クズハ!大丈夫か!?」

 そう、ゴブリンに斬られそうだった冒険者を、何とクズハが身を挺して庇ったのだ。
 そして、クズハの背中にはパックリと裂けた革鎧から溢れ出てくる多量の血…僕は慌ててクズハを見た・・

◆◇◆◇◆◇◆

名前:クズハ・オサキ
Lv:9
HP:35/158 MP:132/132 SP:140/140
攻撃:90(+20) 防御:68(+24) 魔法力:126 素早さ:90

健康状態:流血

◆◇◆◇◆◇◆

 り、流血!?や、やばい…パニックになっている間に、さらに、HPが1下がり34になった…。
 このままだと、クズハの命が危ない…そう思った瞬間…。

「リーダー!すまない、ドジった!
 俺を庇ったクズハさんが負傷した、一時撤退を希望する!」

 そこからの行動は早かった。
 その声を聞いたリーダーさん、一切の迷い無く決断をする。

「分かった!全員、撤退だ!殿しんがりは俺とお前でやるぞ!」

 と、すぐに撤退の指示を出すリーダーさん…即座に退くと決める決断力が半端無い。
 そんな中、一人だけ冷静だったのがプリンだった。

〔ご主人様、〖応急処置ファーストエイド〗の魔法を…出血を止める効果があります。
 その後、〖初級治療魔法ヒール〗の魔法を使えば、クズハさんは助かるはずです。〕

 そ、そうか!プリンに言われるまで、僕は自分の持ってる魔法を忘れていた。
 とは言え、今はクズハの命が危険な状態…なので、慌てて〖魔法:ファーストエイド〗をクズハに使う。
 少しずつではあるが出血量が収まってきている様に感じられる。

「お、おい…早く撤退してくれ!そう長くは持たないぞ!」

 撤退より、クズハの治療を専念しようとしていたら怒られてしまった。
 言われてみれば当然だ…逃げる為に時間を稼いでくれているのに、逃げようとしないのだから怒られるのは当然、仕方がない事である。

「す、すまない…今、行く!」

 僕は慌てて返事をしながら出口を見る。
 その出口の方から魔術師が氷の塊を撃ち出すのが見えた。
 この魔術師が覚えている魔法の中で氷系の魔法は2つのみ。
 一つは〖氷の矢フリーズアロー〗…そして、もう一つは〖氷結弾フリーズブリッド〗である。
 つまり、今のが氷結弾だと推測出来る。

 これで、この魔術師の使える魔法は、全部模倣コピーが完了した事になる。

 僕はクズハをお姫様だっこで抱えると、出口に向けて走り出す。
 その間も、〖魔法:応急処置ファーストエイド〗は使ったままだった…。

◆◇◆◇◆◇◆

「はぁ、はぁ、はぁ…。」

 僕達は急いでダンジョンの入り口から離れ、クズハの治療に専念する。
 何とか血は止まったが傷が深い…。

 僕はプリンに魔力が全快するまで魔力強奪《マナ・ドレイン》を使わせると、僕からクズハに移動して貰う。

「プリン、クズハの治療を頼む…僕は、魔物を倒しに行く!」

 僕はそう言うと、再びダンジョンに向かう。

〔ご、ご主人様!?待ってください私も一緒に…。〕

 プリンが何か言ってるが、ダンジョンからゴブリンが溢れ出すまで、もう一刻の猶予もない…ならば無茶でも何でもやるしかない。
 もう、僕にはプリンの援護がない…とは言え、このままだと魔物が外に出てきてしまう。
 そうなれば、今以上の最悪、全滅の可能性も出てくる…。

 何か良い方法があれば良いんだが…そう考えながら、僕は再度、ダンジョンの入り口に向かうのだった…。
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