上 下
43 / 421
~第二章:冒険者編(初期)~

43ページ目…頼まれ事

しおりを挟む
「〖魔法:加速&身体強化アクセルブースト〗…からの~双剣〖闘気剣オーラブレード〗ッ!」

 僕は強化魔法を使い、鎧状態のプリンに骸の魔銃を、ひょいっと渡すと両手に1本ずつ、オーラブレードを装備する。
 そして、そのままゴブリン達目掛けて、グンッ!と加速。
 すれ違い様に、ゴブリンを2匹細切れに…そして、最後のゴブリンへと顔を向けた…。
 だが、その視線の先には、ちょうど、ゴブリンの頭が弾け飛び、後ろの木に血を撒き散らして崩れ落ちる所だった。

【経験値121を獲得した。】
【レベルが2あがった。】
【称号:〖勇者の卵〗を手に入れた。】

 えっと…とりあえず、相変わらず色々と何が何だか分からない状態になっている。
 いや、本当は分かっている…最後のゴブリンを攻撃したのは彼女…プリンだ。

 僕は再充填リロード済みの骸の魔銃を彼女に渡した…。
 ちょうど腰の辺りに…だ。
 しかし、その骸の魔銃は、現在、僕の肩の所にある…某アニメの量産型モビルスーツみたいに…だ。

 そして、残弾は4…つまり2発撃たれてる事になる…。
 って、プリンさん…ちょ~っと器用過ぎじゃないですか?
 自動で敵を倒す鎧って、異世界的にも、いかがな物でしょう?

 それと、人助けをした一環で称号が手に入ったって所だろうか?
 それにしても〖勇者の卵〗って…既に〖魔王の欠片〗なんてのも持ってるんですがね…。

「う…うぅ…。」

 ん?男の声だと?でも、僕以外に立っている男は居ない。
 と、なると…誰だ?と思ったが…確か、逃げたオッサン以外にも襲われていた人間がいたはずだ。

『キョロキョロ…。』

 いた!ちょっと離れた木の根元に転がっている。
 僕は男の所に走って寄っていく。

「だ、大丈夫ですか?」

 と、声を掛ける…が、うん、どう見ても死にかけだ。
 助かる見込みは、おそらく万に一つもないだろう。
 それでも、僕は回復魔法を使おうとして…。

「い、いや…もう俺はダメだ…既に体の感覚が無い…。
 カルマの野郎、俺や奴隷を囮に逃げやがって…許さなねぇ…ゴフッ!
 に、にぃちゃん、悪いんだが…俺の最後の頼み…ちと頼まれてくれや…。」

 この状態で、頼まれたら嫌と言えないのは日本人の性なのだろうか?

「はい、僕に出来る事なら…。」
「そこに居る奴隷をメルトの町に届けてやってくれ…。
 そ、そして…役所で、カルマが俺を…ザンキを殺した…と…。」

『ブチッ!』

 ザンキと名乗った男は自分の服に付いていた紋章をむしり取り、僕に渡してきた。

「こ、これを持って行けば、役所の奴らも話を聞いてくれるはずだ…。
 ゴホッゴホッ…すまねぇ…見ず知らずのにぃちゃんに、こんな事を頼ん…。」

『パタツ…。』

 ザンキと名乗った男が、僕の目の前で死んだ…。
 プリンと戦った時以外、あまりリアルに感じなかった異世界ではあるが、寒気を覚えるほど人が簡単に死ぬリアルに恐怖を覚えた。

〔ご主人様…大丈夫ですか?〕
「あ、あぁ…それよりも、彼女を連れてメルトに向かおう…。」

 僕はプリンだけに聞こえる様な小さな声で返事をすると、女の子の方に近付いていく…そして、声を掛けた。

「えっと…僕の名前は夢幻ムゲン…『語部カタリベ 夢幻ムゲン』だ、それで…君の名前は?」
「わ、私はクズハ…です。」
「クズハちゃんだね?クズハちゃん…あっちのザンキさんに頼まれて君をメルトの町に送る事になったんだけど、僕と一緒に来てくれるかな?」
「は、はい…それで、ザンキさんは…。」

 こんな小さな女の子に、一緒にいた人が死んだと言って良いのか迷いが生じる。

「そ、それは…その…。」
「や、やっぱり…死んじゃったんですね…。」
「う、うん…。」

 少しの間、沈黙が流れた。

〔ご主人様、いつまでココにいる気ですか?
 そろそろ移動しませんか?〕

 プリンが催促する様に話しかけてきた。
 こう言う時は人外…『スライム』のプリンの性格が羨ましい…。
 いや、それは違う…魔王化する前なら、そう思っていただろうが、今のプリンは既に人の心を理解している。
 それは彼女と〖融合〗した僕が一番理解している。
 彼女は、そんな悲しみを理解した上で、敢えて冷たい態度をとっているのた…。

 その証拠に、彼女の〖念話〗からは、悲しみを必死に隠してるイメージが混じっているのが分かった…。

 とは言え…確かに、いつまでもこんな場所にいる意味はない。
 なので、女の子に、そろそろ出発したい事と言おうと思う。

「あ、あの…私をメルトの町に連れてってくれるんですよね?」

 クソッ…情けない事に、一瞬早く先に言われてしまった。

「う、うん…もう移動しようと思うんだけど、もう良いかな?」
「は、はい…準備します。」

 そう言うと、クズハちゃんはザンキの所に行き、持ち物を剥ぎ取っていく。

「って、何やってるのッ!?」

「え?何って…普通に使える物を回収してるだけですけど?」

 と、逆に何を驚いているの?と、首を傾けて不思議がられてしまった。

〔あの…ご主人様、この世界では常識ですよ?〕

 と、プリンが教えてくれた…そうですか…常識ですか…。
 僕の世界では、そう言うのは行為は、基本的に犯罪ですよ…と心の中で呟いておいた。

 なんか、異世界怖いです…でも、すぐに慣れちゃうだろうな…と思ったのは秘密にしたいと思います。
 そう言えば、じぃちゃん曰く、使える物なら何でも使え…と言っていたのを僕は思いだしたのだった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...