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倏忽5
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「本社からまた電話ですよ」
明子から言われて書類を置いて数秒置いて受話器を取った。専務の喚き声が聞こえそうだ。
「はい。人事部長ですが?」
「今変わります」
「今いいかしら来てくれない?」
知らない声だ。
「本社の社長室分かった?」
私は首を傾げながらタクシーに乗った。最上階の専務の部屋の隣で少し狭い。受付が私の顔を不思議そうに見てそれでも社長室をノックした。
「待ってたわ。顧問から話はよく聞いているわ。力を貸してほしいのよ。君の資料は見たから紹介はいいわ」
元気そうな女社長だ。もう質問状を出して机に置く。
「不良債権は専務の思うほど難航はしません。およそ2年で銀行の債権放棄の話になるかと」
「やはり私はそれでは呼ばれていないのね」
「専務の派閥が厄介です」
「そのようね。その工作はすでに考えているわ」
「本社の業績は?」
「負債を引き取りますので3年は苦しいですが本来業務は健全です。だが今の経営陣では時間がかかるかもしれません。社長は顧問とは親しいのですか?」
「オーナーから紹介されて親しくなったのよ。本来この事件がなかったら顧問が社長になる予定だったのよ。私は専務よ。オーナーは経営から降りて政界に出る予定だったの。あなたもそうだけど予定通りに行かないのが人生ね。どこまで修正ができるか分からないけど力を貸してね?」
「私なんて」
「何言うの裏の会社を任されたのじゃないの?」
「いえ、裏の会社の社長はいますよ」
「ミーに取り込まれないようにね?」
なぜ社長はミーを知っているんだろうか。
明子から言われて書類を置いて数秒置いて受話器を取った。専務の喚き声が聞こえそうだ。
「はい。人事部長ですが?」
「今変わります」
「今いいかしら来てくれない?」
知らない声だ。
「本社の社長室分かった?」
私は首を傾げながらタクシーに乗った。最上階の専務の部屋の隣で少し狭い。受付が私の顔を不思議そうに見てそれでも社長室をノックした。
「待ってたわ。顧問から話はよく聞いているわ。力を貸してほしいのよ。君の資料は見たから紹介はいいわ」
元気そうな女社長だ。もう質問状を出して机に置く。
「不良債権は専務の思うほど難航はしません。およそ2年で銀行の債権放棄の話になるかと」
「やはり私はそれでは呼ばれていないのね」
「専務の派閥が厄介です」
「そのようね。その工作はすでに考えているわ」
「本社の業績は?」
「負債を引き取りますので3年は苦しいですが本来業務は健全です。だが今の経営陣では時間がかかるかもしれません。社長は顧問とは親しいのですか?」
「オーナーから紹介されて親しくなったのよ。本来この事件がなかったら顧問が社長になる予定だったのよ。私は専務よ。オーナーは経営から降りて政界に出る予定だったの。あなたもそうだけど予定通りに行かないのが人生ね。どこまで修正ができるか分からないけど力を貸してね?」
「私なんて」
「何言うの裏の会社を任されたのじゃないの?」
「いえ、裏の会社の社長はいますよ」
「ミーに取り込まれないようにね?」
なぜ社長はミーを知っているんだろうか。
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