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天海の陰謀8
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伊賀上野城に戻りさっそくムササビを小姓の中に入れた。蝙蝠の代行を命じた。鼠は狐の元に行きくノ一を貰う。1日違いで天海が僧正として表から城にやってきた。天井裏には服部と柳生が潜り込んでいる。天海にそれぞれ下忍を張り付かせているのだ。揚羽は天海の小姓として座っている。
天海は家老を下座に座らせて、家老は高虎の側近の狗を呼びつけた。
「いつぞやぶりだな?」
「はああ」
「どこにおった?」
「夏の陣以降四国に隠密で入っておりました」
「夏の陣は?」
「高虎殿の陣に」
「見たような気がするが?」
天海の目が睨んでいる。
「天海殿は家康殿の側におられたとか?」
一瞬揚羽が口針を吹いた。狗は微かに体をずらせ指先ではなく手の甲に受けた。ここなら回りが遅い。半刻の間冷や汗をかいて外に出た。もし逃げればそこで忍者だと攻める気だったのだ。だから敢えて受けた。廊下を出てムササビに影になれと伝えた。その足で裏庭に出る。早くも手裏剣が飛んでくる。狗は眩暈で倒れ込んだ。
飛び降りてきた揚羽が殺す勢いで剣を突き付ける。そこに黒装束のムササビがその剣を払いのける。狗は石垣に仰向けに倒れる。だがしっかりと見つめている。もしムササビがやられるようなら揚羽を切り捨てる。だがなかなかの戦いだ。2合の打ち合いで揚羽が飛び去る。
「私を背負って行け」
「はい。すいません。あれが精一杯です。強いです」
「あれでいい。あれが揚羽だ。これでムササビが狗だ」
天海は家老を下座に座らせて、家老は高虎の側近の狗を呼びつけた。
「いつぞやぶりだな?」
「はああ」
「どこにおった?」
「夏の陣以降四国に隠密で入っておりました」
「夏の陣は?」
「高虎殿の陣に」
「見たような気がするが?」
天海の目が睨んでいる。
「天海殿は家康殿の側におられたとか?」
一瞬揚羽が口針を吹いた。狗は微かに体をずらせ指先ではなく手の甲に受けた。ここなら回りが遅い。半刻の間冷や汗をかいて外に出た。もし逃げればそこで忍者だと攻める気だったのだ。だから敢えて受けた。廊下を出てムササビに影になれと伝えた。その足で裏庭に出る。早くも手裏剣が飛んでくる。狗は眩暈で倒れ込んだ。
飛び降りてきた揚羽が殺す勢いで剣を突き付ける。そこに黒装束のムササビがその剣を払いのける。狗は石垣に仰向けに倒れる。だがしっかりと見つめている。もしムササビがやられるようなら揚羽を切り捨てる。だがなかなかの戦いだ。2合の打ち合いで揚羽が飛び去る。
「私を背負って行け」
「はい。すいません。あれが精一杯です。強いです」
「あれでいい。あれが揚羽だ。これでムササビが狗だ」
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