式神

夢人

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光秀の天下5

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 今や朱雀が使える式神は僅かだ。だが揚羽は死んだことになっているので動かしずらい。蝦蟇は店に張り付いている。それで再び薬売りをしていた気配を消せる式神を南宗寺に墓守の使用人として送った。ここには天海が年寄りの服部の忍者を2人付けている。天海は時々大坂城から訪ねて来て書物を置いていく。
 珍しく揚羽から繋ぎが入った。大坂の黒田長政の屋敷だ。忍び込むとすぐに天井裏にいる揚羽を見つけた。無言で下を見ろという。黒田官兵衛の前に柳生宗矩が今座ったところだ。宗矩は忍びでは服部を連れてこない。
「これは2人の秘密としていただきたい」
 官兵衛が珍しく神妙な顔で言う。宗矩も頷いた。表では今三成と家康の戦いの火花が散っている。こうなるとこの2人は現場から離れる。常に先を歩くのである。
「天海殿の動きがおかしい」
 だがもちろん光秀であることは官兵衛は知らない。この事実は家康の他宗矩しか知らない。だから核心にいることができていると思っている。もともと光秀から宗矩に誘いがあったのだ。
「私も家康殿に言われ内々に調べています」
「治長と何やら?」
「そのようです。たびだび柳生を外し服部を使い動いています。だがすべて天海殿の政策で徳川は動いているので困っておるのです」
 家康も感づいていたのだ。
「私共に任してほしいのですが?」
「それはありがたい。天海殿に疑われると厄介なことになりますからな」
と言うと襖が開いて腰元が現れた。驚いたのは朱雀だ。死んだはずの蠍だ。
「これは蠍の死後呼び出した双子の姉で黒田の忍者の棟梁です。すでに天海殿の使われている服部に入れ替わらせています。化け猫として密かに使ってきたのです」
「どう呼べば?」
「同じ蠍でいいですよ」
 初めて蠍が口をきいた。確かに声の質は別人だ。



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