200 / 225
新生21
しおりを挟む
揚羽を担いで戦うことのできる相手ではない。朱雀もまた火薬玉の中に入っていた鉄の刃を足に受けていた。恐ろしい火薬玉を使う小頭だ。これは信長が南蛮で仕入れた火薬玉かも知れない。交互に柳生が切り込んでくる。朱雀は躱しながらそれでも揚羽の位置を回って守っている。
「お前は賀茂家の式神の棟梁朱雀だな?天海殿から話を聞いている。ちょうどいい知り過ぎた2人はここで死んでもらう。天海殿も喜ばれよう」
宗矩は自ら剣を抜いて構える。ようやく下から切り上げる1人の小手を切った。だが次の瞬間宗矩の剣が額をかすめる。朱雀の額から血が流れる。僅か無意識に身を引いたのが幸運だった。次に後ろから切り込まれて転がった。立ち上がるところにさらに一撃を入れられた。右に体を振るのを予想していたのか宗矩が鋭い突きを入れた。宗矩の剣が肩を抉って血が吹いた。ここは逃げるしかない場面だ。だが揚羽を抱いて飛ぶ力はもうない。だが置いていくこともできない。
これ以上柳生相手には持たない。この距離で手裏剣を投げようとしても腕を切り落とされるだろう。
「飛び上がれ。揚羽は連れて行こう」
この声は朱雀にしか聞こえない。果心だ。この黒陣羽織の中に果心がいる。聞こえていないのか宗矩が僅かに腰をかがめた。次は下から刷り上げてくる。果心を信じよう。
朱雀は一撃を入れるふりをして飛び上がった。僅かの宗矩の躊躇が飛び上がった朱雀の股をかすめた。その時宗矩も飛ばされる突風が吹いた。朱雀は目一杯上に伸びようとする。だが体中が痺れてうまく飛べない。その前を黒い大きな鳥が揚羽を抱いて抜いていく。
「なぜ助けてくれた?」
「友じゃないか。半刻は飛べるか?」
「揚羽は?」
「まだ温かい。半刻は持つだろう。柳生は服部を放って探すだろう。すでに家康が天下を握っている。だが・・・それはゆっくり話そう」
果心は地獄谷に向かっている。もし助からないないとしてもここで死ねたら2人は幸せだ。
「お前は賀茂家の式神の棟梁朱雀だな?天海殿から話を聞いている。ちょうどいい知り過ぎた2人はここで死んでもらう。天海殿も喜ばれよう」
宗矩は自ら剣を抜いて構える。ようやく下から切り上げる1人の小手を切った。だが次の瞬間宗矩の剣が額をかすめる。朱雀の額から血が流れる。僅か無意識に身を引いたのが幸運だった。次に後ろから切り込まれて転がった。立ち上がるところにさらに一撃を入れられた。右に体を振るのを予想していたのか宗矩が鋭い突きを入れた。宗矩の剣が肩を抉って血が吹いた。ここは逃げるしかない場面だ。だが揚羽を抱いて飛ぶ力はもうない。だが置いていくこともできない。
これ以上柳生相手には持たない。この距離で手裏剣を投げようとしても腕を切り落とされるだろう。
「飛び上がれ。揚羽は連れて行こう」
この声は朱雀にしか聞こえない。果心だ。この黒陣羽織の中に果心がいる。聞こえていないのか宗矩が僅かに腰をかがめた。次は下から刷り上げてくる。果心を信じよう。
朱雀は一撃を入れるふりをして飛び上がった。僅かの宗矩の躊躇が飛び上がった朱雀の股をかすめた。その時宗矩も飛ばされる突風が吹いた。朱雀は目一杯上に伸びようとする。だが体中が痺れてうまく飛べない。その前を黒い大きな鳥が揚羽を抱いて抜いていく。
「なぜ助けてくれた?」
「友じゃないか。半刻は飛べるか?」
「揚羽は?」
「まだ温かい。半刻は持つだろう。柳生は服部を放って探すだろう。すでに家康が天下を握っている。だが・・・それはゆっくり話そう」
果心は地獄谷に向かっている。もし助からないないとしてもここで死ねたら2人は幸せだ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ホワイトコード戦記1 シンカナウスより
星白 明
SF
「つまるところ、僕は、僕の存在を、ソウルコードを形作った張本人であろう、この知性体をこう呼ぶことにした。遥か昔に忘れ去られた概念――即ち〝神〟、と」
この宇宙が生まれてから『六十七億年』――ある朝、世界が滅ぶ夢を見た。
軍用に開発された戦闘型アンドロイド、μ(ミュウ)。彼女はその日いつも通り訓練をして過ごすはずが、統率個体のMOTHERから、自分たちを設計した天才科学者エメレオの護衛を突如として命じられる。渋々エメレオを襲いくる刺客ドローンや傭兵から守るμだが、すべては自身の世界が滅ぶ、そのほんの始まりにしか過ぎなかった――!
――まずはひとつ、宇宙が滅ぶ。
すべては最後の宇宙、六度目の果て、『地球』を目指して。
なぜ、ここまで世界は繰り返し滅び続けるのか?
超発展した科学文明の落とし子がゆく、神と悪魔、光と闇、五つの世界の滅亡と輪廻転生をめぐる旅路を描く、大長編SFファンタジーの〝プロローグ〟。
2024.06.24. 完。
8月の次回作公開に向けて執筆進めてます。
天下布武~必勝!桶狭間
斑鳩陽菜
歴史・時代
永禄三年五月――、駿河国および遠江国を領する今川義元との緊張が続く尾張国。ついに尾張まで攻め上ってきたという報せに、若き織田信長は出陣する。世にいう桶狭間の戦いである。その軍勢の中に、信長と乳兄弟である重臣・池田恒興もいた。必勝祈願のために、熱田神宮参詣する織田軍。これは、若き織田信長が池田恒興と歩む、桶狭間の戦いに至るストーリーである
地縛霊に憑りつかれた武士(もののふ))【備中高松城攻め奇譚】
野松 彦秋
歴史・時代
1575年、備中の国にて戦国大名の一族が滅亡しようとしていた。
一族郎党が覚悟を決め、最期の時を迎えようとしていた時に、鶴姫はひとり甲冑を着て槍を持ち、敵毛利軍へ独り突撃をかけようとする。老臣より、『女が戦に出れば成仏できない。』と諫められたが、彼女は聞かず、部屋を後にする。
生を終えた筈の彼女が、仏の情けか、はたまた、罰か、成仏できず、戦国の世を駆け巡る。
優しき男達との交流の末、彼女が新しい居場所をみつけるまでの日々を描く。
王になりたかった男【不老不死伝説と明智光秀】
野松 彦秋
歴史・時代
妻木煕子(ツマキヒロコ)は親が決めた許嫁明智十兵衛(後の光秀)と10年ぶりに会い、目を疑う。
子供の時、自分よりかなり年上であった筈の従兄(十兵衛)の容姿は、10年前と同じであった。
見た目は自分と同じぐらいの歳に見えるのである。
過去の思い出を思い出しながら会話をするが、何処か嚙み合わない。
ヒロコの中に一つの疑惑が生まれる。今自分の前にいる男は、自分が知っている十兵衛なのか?
十兵衛に知られない様に、彼の行動を監視し、調べる中で彼女は驚きの真実を知る。
真実を知った上で、彼女が取った行動、決断で二人の人生が動き出す。
若き日の明智光秀とその妻煕子との馴れ初めからはじまり、二人三脚で戦乱の世を駆け巡る。
天下の裏切り者明智光秀と徐福伝説、八百比丘尼の伝説を繋ぐ物語。
KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-
ジェド
歴史・時代
1894年、東洋の島国・琉球王国が沖縄県となった明治時代――
後の世で「空手」や「琉球古武術」と呼ばれることとなる武術は、琉球語で「ティー(手)」と呼ばれていた。
ティーの修業者たちにとって腕試しの場となるのは、自由組手形式の野試合「カキダミシ(掛け試し)」。
誇り高き武人たちは、時代に翻弄されながらも戦い続ける。
拳と思いが交錯する空手アクション歴史小説、ここに誕生!
・検索キーワード
空手道、琉球空手、沖縄空手、琉球古武道、剛柔流、上地流、小林流、少林寺流、少林流、松林流、和道流、松濤館流、糸東流、東恩流、劉衛流、極真会館、大山道場、芦原会館、正道会館、白蓮会館、国際FSA拳真館、大道塾空道
異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜
ペンちゃん
ファンタジー
魔術研究者であるルークには夢がある。
それは簡単なようで難しい夢だ。
家族と共に笑い共に食事をしそしてそんな日常を繰り返す事。
昔…ルークには家族がいた。
と言っても血の繋がりはない。
孤児院で出会った4人だ。
しかし…今はいない。
だが約束をした、必ずまた会おうと。
ルークはそんな夢を家族と再開すると言う目的の為に異界へと旅立つ。
【完結】陰陽師は神様のお気に入り
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
キャラ文芸
平安の夜を騒がせる幽霊騒ぎ。陰陽師である真桜は、騒ぎの元凶を見極めようと夜の見回りに出る。式神を連れての夜歩きの果て、彼の目の前に現れたのは―――美人過ぎる神様だった。
非常識で自分勝手な神様と繰り広げる騒動が、次第に都を巻き込んでいく。
※注意:キスシーン(触れる程度)あります。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※「エブリスタ10/11新作セレクション」掲載作品
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる