式神

夢人

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新生21

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 揚羽を担いで戦うことのできる相手ではない。朱雀もまた火薬玉の中に入っていた鉄の刃を足に受けていた。恐ろしい火薬玉を使う小頭だ。これは信長が南蛮で仕入れた火薬玉かも知れない。交互に柳生が切り込んでくる。朱雀は躱しながらそれでも揚羽の位置を回って守っている。
「お前は賀茂家の式神の棟梁朱雀だな?天海殿から話を聞いている。ちょうどいい知り過ぎた2人はここで死んでもらう。天海殿も喜ばれよう」
 宗矩は自ら剣を抜いて構える。ようやく下から切り上げる1人の小手を切った。だが次の瞬間宗矩の剣が額をかすめる。朱雀の額から血が流れる。僅か無意識に身を引いたのが幸運だった。次に後ろから切り込まれて転がった。立ち上がるところにさらに一撃を入れられた。右に体を振るのを予想していたのか宗矩が鋭い突きを入れた。宗矩の剣が肩を抉って血が吹いた。ここは逃げるしかない場面だ。だが揚羽を抱いて飛ぶ力はもうない。だが置いていくこともできない。
 これ以上柳生相手には持たない。この距離で手裏剣を投げようとしても腕を切り落とされるだろう。
「飛び上がれ。揚羽は連れて行こう」
 この声は朱雀にしか聞こえない。果心だ。この黒陣羽織の中に果心がいる。聞こえていないのか宗矩が僅かに腰をかがめた。次は下から刷り上げてくる。果心を信じよう。
 朱雀は一撃を入れるふりをして飛び上がった。僅かの宗矩の躊躇が飛び上がった朱雀の股をかすめた。その時宗矩も飛ばされる突風が吹いた。朱雀は目一杯上に伸びようとする。だが体中が痺れてうまく飛べない。その前を黒い大きな鳥が揚羽を抱いて抜いていく。
「なぜ助けてくれた?」
「友じゃないか。半刻は飛べるか?」
「揚羽は?」
「まだ温かい。半刻は持つだろう。柳生は服部を放って探すだろう。すでに家康が天下を握っている。だが・・・それはゆっくり話そう」
 果心は地獄谷に向かっている。もし助からないないとしてもここで死ねたら2人は幸せだ。







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