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新生17
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門に火矢が打ち込まれていて晴明の意気込みが伝わるようだ。最後の勝負に出たようだ。すでに騎馬の一部が庭の中に入っていて式神の死体と騎馬隊の死体が入り混じっている。大屋根に朱雀と一部の式神が矢を放っている。礫は得意の棒手裏剣を投げ続けている。だが明らかに戦力的には竜達が勝る。
竜は騎馬から飛び上がり大屋根に乗った。朱雀は剣を抜いて飛ぶように騎馬に跨っている鎧武者の首を浅く切り撥ねていく。出来るだけ多くを早く戦意を失わせるしかない。彼らの鎧や兜では剣は歯が立たないのだ。これは長い戦いの中で作った作戦だ。早くも騎馬に乗っている武者は大半が地面に落ちている。大屋根には礫を始め3人の式神が登っている。
「もう少し耐えるのだ!」
「竜が上にいる」
礫が棒手裏剣が尽きたのか瓦を上げってきた武者に投げている。竜がすでに槍で2人の式神を突き刺し屋根から落とした。竜が礫の瓦を躱し槍を突き刺した。僅かに肩に触れたようで血しぶきが飛んだ。次の一突きで竜は仕留める気だ。次の瞬間礫は飛び上がった。懐から最後の棒手裏剣を握っている。これは礫の得意技だ。
竜も避けることなく予想外に槍を投げた。こういうことも初めてだ。朱雀も同時に飛んでいる。何ということだ。礫が脇腹に槍を受けて壁に串刺しになってしまった。礫の棒手裏剣もまた竜の兜を吹き飛ばした。片目の竜は剣を抜くともう礫を見ず朱雀の剣を躱した。だがどこか微妙なふらつきがある。ここで敵を取るぞ。
盛んに突きを繰り出して壁に追いつめる。その壁には礫がぶら下がっている。だが降ろしてやる式神は屋根の上にはいない。
「これは最後の仕事だ。仕留めるぞ」
壁を背に竜が構える。これで朱雀の飛び上がる作戦は使えない。竜は唯一首を狙われるのを構えている。敢えて首を狙って入ったら逆に首を撥ねられることになる。明らかに朱雀は上段に構え首を狙っている。ゆっくりと後ろに下がっている。次の瞬間剣が振り下ろされて竜がそれを受けようとして構えたが不思議な表情に変わった。剣が頭の上にないのだ。
朱雀は体を触れずに振り下ろしたのだ。それでわずかに後ろに下がったのだ。だが振り下ろした剣が飛び跳ねて無防備な股を割いた。即死だ。だが朱雀は壁につるされた礫を抱き下ろした。
「どうだ?」
「アユタヤに行けなくなったよ」
朱雀も礫ももう命がないことは分かっていた。
「いや連れて行く」
実際灰になった礫の骨を朱雀がお守りに入れた。その翌朝安倍晴明の死を知った。
竜は騎馬から飛び上がり大屋根に乗った。朱雀は剣を抜いて飛ぶように騎馬に跨っている鎧武者の首を浅く切り撥ねていく。出来るだけ多くを早く戦意を失わせるしかない。彼らの鎧や兜では剣は歯が立たないのだ。これは長い戦いの中で作った作戦だ。早くも騎馬に乗っている武者は大半が地面に落ちている。大屋根には礫を始め3人の式神が登っている。
「もう少し耐えるのだ!」
「竜が上にいる」
礫が棒手裏剣が尽きたのか瓦を上げってきた武者に投げている。竜がすでに槍で2人の式神を突き刺し屋根から落とした。竜が礫の瓦を躱し槍を突き刺した。僅かに肩に触れたようで血しぶきが飛んだ。次の一突きで竜は仕留める気だ。次の瞬間礫は飛び上がった。懐から最後の棒手裏剣を握っている。これは礫の得意技だ。
竜も避けることなく予想外に槍を投げた。こういうことも初めてだ。朱雀も同時に飛んでいる。何ということだ。礫が脇腹に槍を受けて壁に串刺しになってしまった。礫の棒手裏剣もまた竜の兜を吹き飛ばした。片目の竜は剣を抜くともう礫を見ず朱雀の剣を躱した。だがどこか微妙なふらつきがある。ここで敵を取るぞ。
盛んに突きを繰り出して壁に追いつめる。その壁には礫がぶら下がっている。だが降ろしてやる式神は屋根の上にはいない。
「これは最後の仕事だ。仕留めるぞ」
壁を背に竜が構える。これで朱雀の飛び上がる作戦は使えない。竜は唯一首を狙われるのを構えている。敢えて首を狙って入ったら逆に首を撥ねられることになる。明らかに朱雀は上段に構え首を狙っている。ゆっくりと後ろに下がっている。次の瞬間剣が振り下ろされて竜がそれを受けようとして構えたが不思議な表情に変わった。剣が頭の上にないのだ。
朱雀は体を触れずに振り下ろしたのだ。それでわずかに後ろに下がったのだ。だが振り下ろした剣が飛び跳ねて無防備な股を割いた。即死だ。だが朱雀は壁につるされた礫を抱き下ろした。
「どうだ?」
「アユタヤに行けなくなったよ」
朱雀も礫ももう命がないことは分かっていた。
「いや連れて行く」
実際灰になった礫の骨を朱雀がお守りに入れた。その翌朝安倍晴明の死を知った。
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