式神

新生10

　朱雀が地獄谷に戻った時すでに朝鮮に１６万の兵が送られていた。これは宇喜多秀家を元帥として攻め込んだ。一緒に朝鮮から持って帰った朝鮮人参が地獄谷に着いたのはまさに１か月後だった。地獄谷は時間がゆっくり流れている。蝦蟇はもうすっかり猟師の親方だ。双子の女の子もすでに歩いて静香の周りを走り回っている。
「朝鮮人参を入れた薬を作るわ。これは富裕層を相手にしたものにするわ」
　かやとして珍しい意見だ。贈呈ものとして要望されているようだ。
「珍しいですね？」
「私も商人になったのかしら？」
「静香も座ってくれ」
　静香は女の子を抱いてかやの横に座る。
「これはすでに私の中では決めたことだが二人には意見を貰いたい。アユタヤに式神の半分は移そうと思っている」
「そういうと思っていたわ」
　静香もかやと話していたようだ。
「秀吉の世も長くは続かない。また戦が始まる。それに家康が天下を取ることがあってもますます窮屈な世になると思う。鬼女様の天文方頭の夢も式神には魅力はない」
「それでアユタヤで何をしようと？」
「あそこは自由だ。交易を中心に薬も販売を考えている」
「でも私はもう歳だからここで大婆の墓守をしているわ。それに新しい薬を作ってみたいしね」
「静香はどうする？」
「行きたい気もするけど鬼女様と子供のこともあるので相談しないと」
「どちらにしてもゆっくり準備しないとな」
　朱雀は静香の作った式神のリストを眺めている。算盤のできる式神だけではなく武力を使える式神のアユタヤでは必要だ。それに小猿のような南蛮船を操れる式神も作りたい。地獄谷に来てもう半年は経つ。