式神

夢人

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覇権15

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 朱雀と揚羽は秀吉に付いて4か月各地を転戦する。秀吉包囲網が出来ていて各地で戦いが起こっている。これはかつて信長の姿だ。黒田官兵衛が去って参謀不在なのだ。全体の流れを読み方向を定め手を打つものがいない。だが家康もまたまだ最後の抑えが出来ていない。
 秀吉は伊賀と伊勢半国の割譲を条件に信雄に講和を申し入れ信雄はこれを受諾してしまったのだ。家康はこれで戦いを続けるわけにはいかなくなって浜松城に戻らざるえなくなった。秀吉は返礼として次男・於義丸(結城秀康)を秀吉の養子として大坂に戻った。こうして、小牧の役は幕を閉じた。秀吉も家康もまた雌雄を付けない戦いとなった。
 朱雀は久しぶりに揚羽を連れ賀茂家に戻った。今回は恩賞役の三成から一銭の金も出なかった。これは武断派の武将達も同じだ。知らせを受け賀茂家に戻って来ていた。式神の部屋にいると商人らしくなった小猿が入ってくる。
「揚羽は元気だったのか?」
「あまり元気じゃない。私も薬売りに入れて貰おうかと思っている」
 嫌に弱気の発言だ。
「今は薬売りが賀茂家の大半の利益を上げている。賀茂家の本業だよ」
「そうね?いじけるわ」
「一つ商売の話に乗ってくれない?宗久様に大坂で会ったの。それで大坂に店を出さないかと言うことになったの。朱雀様はどうですか?」
「薬売りは手配できるのか?」
「はい。もう1か月前から散らばっている式神も加えて10人を入れました。売れ行きもいいのです。大坂城が出来て賑やかになりました」
「そうねいいかも。秀吉に隠れ家として金を出させるわ」
「同じことを宗久様も言っていたわ」
「なら大阪店は揚羽が女主人だ」
 そう決まると2人は大坂に出かけて行った。その夜朱雀は久しぶりに関白に報告に出かけた。報告を聞いた関白は複雑な表情だ。
「困ったことに一条兼良に押し切られてあの天海を朝廷に出入り自由の僧としてしまったのだ。それで秀吉殿の反感を買ってしまったのだ」
 これも安倍晴明が動いたのだろう。まさかこれを持って三成が関白を排除する流れになるとは。


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