式神

夢人

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覇権10

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 鬼女から朱雀のお呼びがかかり久しぶりに賀茂家に戻った。その足で待っていた鬼女と関白邸に出かけた。鬼女は輿に乗り朱雀が付き添う。
「薬造りは順調か?」
「はい。すでに販売を始めています。評判はいいです」
「そうか」
 双子の女の子のことは聞かない。門を通されると茶室に案内される。
「おお悪いな。急に呼び出して」
 これは関白の呼び出しだ。
「最近、一条兼良が度々柳生宗矩と会っていてな」
「柳生?」
 朱雀が聞き直した。一条兼良と家康を結ぶ線が見つからない。
「それが1月前にその宗矩が禅僧と引き合わせたのじゃ。それが帝にその禅僧を会わせたのだ」
「その禅僧の名を聞かれましたか?」
「確か天海と」
 やはり天海が出て来た。だが今は天海が光秀の生まれ変わりなどと答えられない。
「家康の補佐僧です」
「やはり家康殿か」
「一条兼良は今まで柴田勝家を押していたので乗り替わったのでしょう」
「しばらくその天海を見張ってほしいのだ」
「京に来ているのですか?」
「一条邸にいる」
 天海は朝廷対策も担当しているのだ。ならば秀吉との戦いに備えているのだ。秀吉を破れば帝の詔を取る気だ。もちろん家康が天下を取れば一条兼良も関白になれる。式神の報告では織田信雄は密かに家康と結んで親秀吉派の家老を殺している。明らかに秀吉も兵を上げるだろう。これならまた揚羽は動くことになるだろう。
 その夜その足で一条邸に潜った。




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