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大返し18
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関白は一人書斎に座っている。
「戻って来たか?降りて来い。先ほどまで鬼女がいたぞ」
「まだ顔は合わせていません」
「朝廷の今後を占ってもらっていたのだ。秀吉殿ならいいがそうでないと一条兼良がすでに根回しをしているからな」
「それにも大きく係わりますが関白様にお聞きしたいことがあってきました。森蘭丸が訪ねてきた時信長殿の書状はありましたか?」
これは以前の話では飛ばしてしまっていたのだ。さすが小姓の森蘭丸と言えども慎重な関白が貴賓室を開けて通用門の札を渡すとは思えないのだ。
「これは後日に私を守るものだから保管をしている。だが見せられぬがな。気になる言葉があった。家臣に対する罠を仕掛けるとな」
やはり光秀、秀吉、家康に掛けた罠だったのだ。
「本能寺の変後、誰か訪ねてきませんでしたか?」
「細川藤孝が来たな。ある寺の僧を連れてきた。だがこれ以上話すことはできない朱雀でもな」
これが漏れることを恐れている。細川藤孝が身の保証をのために関白を使ったのだ。寺の僧は信じて信長を荼毘に付したのだ。関白も僧もこの遺体が信長だと知っていたことになる。
「細川藤孝は古い茶飲み仲間だ。信長殿の私のパイプでもあった」
それで光秀と組むか悩んで関白を訪ねたのも頷けた。
「将軍と離れて信長に付くことも相談しに来たな。今度は朱雀に質問だ。秀吉は覇者になれるかな?」
「次に開かれる清州会議にかかっています。秀吉様は口には出しませんが信長が生きているのではないかと心の隅で疑っています」
「それ程怖い存在なのだな?」
と言うと書状を書きだした。そして封をして渡す。
「秀吉の心を安んじるおまじないだ。中を開けるでないぞ」
関白もまた細川藤孝と同じように強い絆に使おうとしている。いや細川藤孝の意を汲んだのだと思われる。朱雀はただ謎を解きたいという気持ちが強い。
関白邸を出るとそのままあの寺に走る。
「戻って来たか?降りて来い。先ほどまで鬼女がいたぞ」
「まだ顔は合わせていません」
「朝廷の今後を占ってもらっていたのだ。秀吉殿ならいいがそうでないと一条兼良がすでに根回しをしているからな」
「それにも大きく係わりますが関白様にお聞きしたいことがあってきました。森蘭丸が訪ねてきた時信長殿の書状はありましたか?」
これは以前の話では飛ばしてしまっていたのだ。さすが小姓の森蘭丸と言えども慎重な関白が貴賓室を開けて通用門の札を渡すとは思えないのだ。
「これは後日に私を守るものだから保管をしている。だが見せられぬがな。気になる言葉があった。家臣に対する罠を仕掛けるとな」
やはり光秀、秀吉、家康に掛けた罠だったのだ。
「本能寺の変後、誰か訪ねてきませんでしたか?」
「細川藤孝が来たな。ある寺の僧を連れてきた。だがこれ以上話すことはできない朱雀でもな」
これが漏れることを恐れている。細川藤孝が身の保証をのために関白を使ったのだ。寺の僧は信じて信長を荼毘に付したのだ。関白も僧もこの遺体が信長だと知っていたことになる。
「細川藤孝は古い茶飲み仲間だ。信長殿の私のパイプでもあった」
それで光秀と組むか悩んで関白を訪ねたのも頷けた。
「将軍と離れて信長に付くことも相談しに来たな。今度は朱雀に質問だ。秀吉は覇者になれるかな?」
「次に開かれる清州会議にかかっています。秀吉様は口には出しませんが信長が生きているのではないかと心の隅で疑っています」
「それ程怖い存在なのだな?」
と言うと書状を書きだした。そして封をして渡す。
「秀吉の心を安んじるおまじないだ。中を開けるでないぞ」
関白もまた細川藤孝と同じように強い絆に使おうとしている。いや細川藤孝の意を汲んだのだと思われる。朱雀はただ謎を解きたいという気持ちが強い。
関白邸を出るとそのままあの寺に走る。
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