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大返し14
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明智軍の激しい抵抗があったのは初日だけで天王山から降りたようだ。蝦蟇達から次々と明智軍の敗退の知らせが入る。細川藤孝も家康もこの予想をしていたのだ。信長がいて光秀の力があったのだ。光秀のみとなるとこうも弱いのだ。この恐れを光秀自身も感じていた部分がある。
追いかけてきた蠍の気配を感じた。手裏剣が飛んできて式神が倒れた。蝦蟇がその茂みに飛びかかり蠍の配下を切る。
「吹き針を注意するのだ」
「分かった。朱雀は先に走れ」
蝦蟇ならこの程度には負けないだろう。獣道を走り抜け式神から報告があった勝竜寺城に出た。ここまで光秀の本軍は下がっている。思いがけない崩れだ。日が暮れて朱雀は寺に潜った。
床几に兜を着けたままの光秀が重臣を前に座っている。
「秀吉の本陣に夜襲をしましょう」
「一先ず坂本に戻りましょう」
意見が分かれて光秀は重い口を開いた。
「取りあえず未明に京に向かう」
今さら朝廷に頼ってもても仕方ない。
「なら私が5百で同時に秀吉の本陣に奇襲を掛けます」
評議が終わり光秀は別室に入る。兜とを脱いだが鎧は付けたままだ。今時になって後悔したようだ。やはり信長を討った後に策がなかったのだ。その時床が上がって男が出て来た。男は文を差し出した。これは見覚えがある安倍の式神だ。何が書いてあるのか。
読み終わると覚悟したように部屋を出て重臣の名を呼んでいる。この紙を吊り上げると目を通す。
「案内しますからこのものの後を付いて手勢ときてください。抜け道から坂本に 兼良」
とある。4半刻で光秀は僅か50人ほどの兵を連れて裏木戸から寺を出た。先頭を走るのは安倍の式神3人だ。その後未明に襲撃を掛けるはずの隊が同時に秀吉の陣を攻めた。これが時を稼ぐのに光秀は失敗したのだ。
夜襲は半刻も持たず寺を襲われ、秀吉の軍が3方に分かれ追跡を始めた。朱雀は光秀の後を3刻追いかける。どこまで逃げるのだろう。もうすでに伏見に入ったようである。小栗栖の藪というところだ。この辺りは京から堺に走る時通る場所だ。すでに兵が脱落して光秀に付いているのは10人ほどだ。
追いかけてきた蠍の気配を感じた。手裏剣が飛んできて式神が倒れた。蝦蟇がその茂みに飛びかかり蠍の配下を切る。
「吹き針を注意するのだ」
「分かった。朱雀は先に走れ」
蝦蟇ならこの程度には負けないだろう。獣道を走り抜け式神から報告があった勝竜寺城に出た。ここまで光秀の本軍は下がっている。思いがけない崩れだ。日が暮れて朱雀は寺に潜った。
床几に兜を着けたままの光秀が重臣を前に座っている。
「秀吉の本陣に夜襲をしましょう」
「一先ず坂本に戻りましょう」
意見が分かれて光秀は重い口を開いた。
「取りあえず未明に京に向かう」
今さら朝廷に頼ってもても仕方ない。
「なら私が5百で同時に秀吉の本陣に奇襲を掛けます」
評議が終わり光秀は別室に入る。兜とを脱いだが鎧は付けたままだ。今時になって後悔したようだ。やはり信長を討った後に策がなかったのだ。その時床が上がって男が出て来た。男は文を差し出した。これは見覚えがある安倍の式神だ。何が書いてあるのか。
読み終わると覚悟したように部屋を出て重臣の名を呼んでいる。この紙を吊り上げると目を通す。
「案内しますからこのものの後を付いて手勢ときてください。抜け道から坂本に 兼良」
とある。4半刻で光秀は僅か50人ほどの兵を連れて裏木戸から寺を出た。先頭を走るのは安倍の式神3人だ。その後未明に襲撃を掛けるはずの隊が同時に秀吉の陣を攻めた。これが時を稼ぐのに光秀は失敗したのだ。
夜襲は半刻も持たず寺を襲われ、秀吉の軍が3方に分かれ追跡を始めた。朱雀は光秀の後を3刻追いかける。どこまで逃げるのだろう。もうすでに伏見に入ったようである。小栗栖の藪というところだ。この辺りは京から堺に走る時通る場所だ。すでに兵が脱落して光秀に付いているのは10人ほどだ。
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