式神

夢人

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和解10

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 竹中半兵衛が死んだと言う文が揚羽から届いた。もう一人の軍師の黒田官兵衛はまだ死んだかどうかも分からない。今は秀吉には軍師がいない状態で戦況もよくない。当然信長の覚えも悪く本人はいらいらしているようだ。このままではライバルの光秀が毛利攻めに変わるかもしれない。それを見たのか毛利の忍者が秀吉の暗殺を試みたと言うのだ。
 朱雀は文を見せて鬼女に揚羽の要望を承認した。それで関白の付き人になっている蝦蟇の代わりに礫を送り、蝦蟇に3人の式神を付け姫路に送った。今や賀茂家の式神は手薄になっている。なのにやることは堆積している。
 本願寺の和解の段取りは進んでいるが、まだ帝の詔を貰える段階に来ていないし最近光秀の動きがおかしいのだ。彼は秀吉と共に和解推進派だ。だが本願寺の撤退を条件から外して動いている節がある。これは小猿からの報告だが一条兼良の用人が息子と盛んに打ち合わせをしていると言うのだ。
 朱雀は顕如から貰っている札を持って僧兵になって本願寺に入る。怪我人は増えているが食べ物は行きわたっているようだ。小猿の引き込みで天井裏に上がる。今その息子と顕如が向き合っている。
「明智殿と一条殿の提案を受けましょう?」
「それでは信長は飲むまい」
「それならもう3か月延ばしましょう。また食料も武器も運ばれてきます」
 長い会談だったのか実如が怒ったように部屋を出て行った。朱雀は合図を送り部屋に降りる。
「どういうことですか?」
「光秀殿から本願寺撤退を条件から外して交渉をしようと持ちかけられたのだ」
「信長様の了解が採れたんですか?」
「いや、大きな変化が起こると言うのだ」
「大きな変化!?」
 ただ光秀と兼良が手を結んだと言うのはうかがえる。現在知恵袋の半兵衛が亡くなったのは痛い。
「撤退の条件は守っていただきたい。ただ秀吉様にこのことを尋ねて置きます」
 それだけ言い残すと朱雀は天井裏に消えた。
「小猿、しばらく実如を見張れ。戦況はどうだ?」
 朱雀は本願寺に来るたびに干飯を運んでいる。
「裏側の佐久間とは相変わらず激しい戦闘をしていますが、表の明智側は戦いらしい戦いをしていません。本願寺もそれを見て本隊を佐久間に向けています」






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