式神

包囲網17

　京に鉄砲が着くと織田の本隊が出発した。まだ誰にも行く先は伝えられていない。ただ主力に鉄砲隊が加わった。家康の反撃が始まっていて勝頼は後退を続けている。信長はここで武田を全滅させようと何か策を練っているようだ。朱雀には分からないがそんな気がした。
　光栄の話だが今日朝廷で武田に対する入洛の詔で一条兼良と関白が激論したようだ。
「今夜密かに関白殿を関白邸に戻すのよ」
　鬼女に命じられて夜半屋敷を式神に守られ鬼女と共に輿で向かう。やはり安倍の式神が周りを取り囲んでいる。それだけでなく今夜は兼良が朝廷で抱えている甲賀を送り出してきたのだ。安倍ではと言う焦りが出ているのだ。どうも安倍との関係が危うくなってきたようだ。このことを恐れて朱雀は蝦蟇達を密かに呼びよせている。これを指揮しているのは火薬玉を扱う礫だ。朱雀は最近礫を買っている。
　礫が走り回って火薬玉を投げまわる。式神は要所要所に火薬を仕掛けている。朱雀と蝦蟇達は向かってくる甲賀と剣を結びあう。甲賀の手裏剣は伊賀と違って走り込んで仲間が同時に投げ込んでくる。式神が２人倒れ次の一撃が来る。朱雀はまだ治り切っていない蝦蟇を庇い空を飛ぶために常に持っている布を拡げて舞い上がった。全ての手裏剣が払い落とされた。それを見た蝦蟇が甲賀の一人を剣で突き抜いた。
　他の式神が輿を抱えて走り出す。甲賀は乱れると弱い。朱雀と蝦蟇に追い払われて消える。礫が戻って来ていて倒れている式神を起こしている。
「命は無事です」
「よし残りの式神は担いで走れ。蝦蟇は関白邸に向かえ。私はここで迎え撃つ」
　どれほどの甲賀が出てきているのか分からない。だが礫の火薬玉の辺りから気配がする。甲賀の気配が５つ。同時に飛び出してくる。朱雀も剣を抜いて同時に走り出し途中で飛び上がると空から手裏剣を２枚投げをする。２人が倒れ飛び降りた朱雀が１人を切り倒す。
　これを見ていた安倍の式神も引き上げる。
　２日後突然関白より光栄の天文方復帰が告げられた。どうも関白と一条兼良との密談が行われたようだ。その朝鬼女は静香に光栄の出仕の準備をさせていたようだ。朝廷の駆け引きは朱雀には分からない。