式神

包囲網6

　揚羽とは木津川で別れた。秀吉の元に行くのだ。朱雀は本願寺の僧兵の後を追いかけてく。山道の所々に見張りの小屋があって何人かがいる。山道は最近切り開かれた部分も多く木が切り倒されて道幅が広くされている。朱雀はすぐに荷物を担いだ僧兵の列に追い付いて最後の一人と入れ替わった。
　見張り小屋をいくつも超えると本願寺の立派な石垣が見えた。朱雀はそれまでにできるだけ一条兼良の用人の側に来ていた。寺が続く中思わず怪我人が溢れていた。それ程激しい戦いが織田とおこなわれていたのだ。朱雀は担いでいた荷物を降ろし怪我人の中に混じる。
「北門に織田の鉄砲隊が３百に３千の兵が押し寄せている。こちらの鉄砲隊は今から応援に行くぞ」
　小隊長らしい男が叫んでいる。表から見る本願寺より遥かに現状は厳しそうだ。食料も底をついているようだ。木津川からの物資がなければ持たないようだ。先ほど運んできた荷には行列ができている。各部署から待ちかねたように取りに来ている。木津川の毛利水軍を阻止すれば事態は変わるだろう。
　朱雀は揚羽と来た時に通った裏路地から寺に入る。ここから蓮如の天井裏に入る。顕如は５名ほどに囲まれている。そこに先ほどの一条兼良の用人が座る。
「荷は無事に？」
「ええ、１５隻のうち１０隻だけがたどり着いたようですな」
　思ったより激しい戦いを織田の水軍としているのだ。
「それでは全然足りない」
　僧兵の隊長が言い切る。
「でも他の道はすべて塞がれております」
「毛利は進撃はしないのか？」
　あの時とは違って苦り切った蓮如だ。
「しかし信玄は家康の軍を破ったと聞いています」
　それで信長は散らばった武将を招集したんだ。
「信玄が頼りか。兼良殿に和解の準備をするように伝えておいて貰えないか？」
「和解？」
「それはなりません」
　これは顕如の息子だ。
「信長はそうたやすい男ではない」