式神

地獄谷20

　三好が京を支配するようになって朝廷の派閥の力に変動が起き始めている。
　先ほど一条兼良の式神の姿を見た。そしたら大婆から呼び出されて社に行く。
「光栄が正式に朝廷に復帰が決まった。それで光栄の付き人の依頼があったのだ。屋敷を出るとなると結界は及ばない。数を持つ晴明が遥かに有利だ。だが賀茂家が復帰する大きな一歩になる」
「今日かやがまだ力がないが2人式神を連れてくる。それでだ。朱雀が正式に付き人となる。蝦蟇も連れて行け。小猿は今まで通り繋ぎ役だ」
　その一声でさっそく蝦蟇を引き連れて地獄谷を降りる。京の街に降りると三好の兵が入口になる街道を検問している。どうも次は六角と争っているようだ。だが驚いたのはその検問の中にあの兜の男がいたのだ。今度は三好に雇われたのだ。これでは検問を抜けれないと思っていると草むらから小猿が顔を出した。
「こちらの尾根道から賀茂家に行ける。出仕は明日からよ。静香が衣を箱から出して日干しをしている」
「部屋は用意してくれたか？」
「それも静香が掃除した。蝦蟇は別の部屋だけど私は朱雀と寝るよ」
「駄目だ。静香のところも駄目だぞ」
　一度山に戻るように登って尾根道を走る。
「晴明は？」
「屋敷の周辺に式神を潜ませているけど攻撃はないよ」
　大婆も晴明も持久戦に疲れてきているのだ。山を降ると何と賀茂家の池に出る。池の前の庭で静香が衣を干している。その横に男女の年寄りが手伝っている。
「この2人も耳だよ。かやが手配してきた」
　どうもかやは式神ではないが耳を取り仕切っているようだ。
「朱雀、待っていたわ」
　静香が笑って迎える。