復讐の芽***藤林長門守***

変遷4

　南蛮船が堺の問屋の財産と宗久の銀をアユタヤに運ぶ。もう脱出は始まっている。材木を運ぶ廻船に乗り堺に戻ると、大阪の町は危うい緊張の時代になっていた。着々と家康が大阪を包囲している。堺も宗久を頭に家康に傾いている。服部が半蔵を中心に闇の世界を牛耳っている。
　この中で商売をするのは豊臣と徳川の勝ち負けに影響される。だが堺は元々豊臣との関係が強い。茉緒は宗久の影として廻船を動かし堺の武器や金を江戸に運び込んでいる。
　茉緒は3日前から大阪に忍んでいる。ここ1月でそろりの忍者は服部に討ち取られて服部が至る所に潜んでいる。3日のちに服部の忍者を5人も倒している。
「どうなのじゃ?」
　茶々が連日叫んでいる。なだめている三成だ。
「豊臣の中も難しいです」
　これでは豊臣も長くあるまい。だが茶々は無関係なように立ち去っていく。復讐しか頭にいなのだろう。茉緒もそう言う時代があった。だが復讐だけでは生きていけない。茉緒は源爺からそのことを学んだ。茉緒は抜け忍村の仲間を次の時代まで連れて行かなくてはならない。
　城を抜けると江戸に行く廻船に乗ることにした。この廻船は堺を出て紀州を回る頃には宗久の旗を上げる。茉緒は宗久の番頭にここで化けるのだ。これは宗久の了解も得ている。江戸をしっかり見てこよう。